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1-9. 単なる力試しだと思ったら誓約付きの神前試合(ガチ)だった(2/4)

約2,500字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 ムツキの突然の半裸に、さすがのユウもナジュミネも驚きを隠せずにいた。


「んふっ♪ いい身体♪」


「い、いきなり、異性の前で半裸になるとは! どういう了見だ!」


 ユウは嬉しそうにムツキの身体を舐め回すかのように凝視し、ナジュミネは赤面になりながらも目を逸らすことはなかった。


「いやはや、ナジュミネ好みのいい身体をしとるじゃないか」


「そういう問題ではない! そなたも早く着るがいい!」


 ムツキもさすがにまずいと思ったのだろう。いそいそと着始める。


「さて、最後の説明になるけど、勝利条件は、相手の降参、もしくは、相手の身代わり人形が消滅したら終了だよ」


 目の前にはお互いの姿を模したぬいぐるみが座っていた。


「この身代わり人形を直接攻撃できるのか?」


 ムツキの質問に、ユウは首を横に振った。


「ううん、できないよ。私が身代わり人形と観客たちにムツキでもすぐには壊せないバリアを張るから。身代わり人形を消滅させるには、相手が一度死ぬくらいのダメージを与えればいいよ」


「それ以上のダメージを与えたらどうなるんだ?」


 ムツキは何かに気付いたように口を開いた。


「……身代わりは死ぬ1回分だけだよ?」


 ユウはニコッと笑いながら、ムツキにそう告げた。つまり、2回以上死ぬような攻撃は控えなければいけない。彼は少し悩んだ後に口を開く。


「……分かった」


「妾も委細承知した」


 その後、ムツキとナジュミネは少し離れた状態でお互いに向かい合わせに立った。


「それでは、神前試合、始めっ!」


「さぁ、オイラたちも始めるニャ!」


「ニャ、ニャ、ニャ! ニャ、ニャ、ニャ! ニャ、ニャ、ニャ、ニャ、ニャ、ニャ、ニャ!」


「ワン、ワン! ワ、ワ、ワン! ワ、ワ、ワン、ワン!」


「プゥ、プゥ! プゥ、プゥ! プゥ、プゥ! プゥ、プゥ! プゥ、プゥ!」


 ユウの掛け声とともに誰よりも早くケットと愉快なモフモフ応援団たちが楽しそうな鳴き声を上げる。今回、ねこさんチーム、いぬさんチーム、うさぎさんチームに分かれて、それぞれが三者三様の応援をするようだ。


「かわいいな」


「む」


 ムツキの唐突な呟きに、ナジュミネはドキリとする。


「見てみろ。あのモフモフたちの応援、かわいいと思わないか? 一生眺めていられるぞ」


 ムツキが試合そっちのけというよりも自分そっちのけで応援を眺めていることに、ナジュミネは怒りが込み上げてくる。怒りのあまり、彼女の髪の毛が逆さに揺らめきそうな勢いだ。


「……そうか。ずいぶんと余裕だな! 【トラッキング】、【ラージ】、【ファイアアロー】」


「【レヴィテーション】。心にモフモフと余裕は必要だぞ!」


 ナジュミネが1つの大きな炎の矢を放ち、ムツキはモフモフの重要さを説きつつそれを躱しながら空へと飛んだ。


 しかし、【トラッキング】がついた炎の矢は当たるまで標的である彼を追尾する。


「飛べるのか。まるで鳥のようだな」


 ムツキはしばらく飛び回ってみるが、炎の矢が勢いを弱らせることなく追尾し続ける。


「さすがだな。速いし強いし持続力もあるのか。【ウォーターアロー】」


 ムツキはなおも追尾してくる炎の矢に水の矢をぶつけ、徐々に薄れていく水蒸気の中から宙に浮いた彼がナジュミネを見下ろしている。


「む。水で打ち消したか。では、これならどうだ! 【ラピッドファイア】、【スプレッド】、【ファイアアロー】」


 ナジュミネは次に炎の矢を連射し、さらに範囲を広げている。それによって、雨を逆さに降らせたように、地上から無数の炎の矢がムツキに迫ってくる。


「量が多いな。また水じゃ芸がない。【ウィンドウォール】」


 ムツキは風の壁を張り、炎の矢を自分の手前で燃え上がらせた。


「むむ。次は風か。しかし、どうした! なぜ攻撃をしてこない! 【ファイアバレット】。【ファイアシェル】。【ファイアミサイル】」


 ナジュミネは、初速の速い魔法から遅いが威力のある魔法までを順に練り上げて詠唱していく。【ファイアミサイル】については、並の人間なら数十人が消える範囲だ。


「じゃあ、そうさせてもらうさ。【テレポーテーション】」


 しかし、ムツキは【テレポーテーション】でそれらの魔法を回避しつつ、ナジュミネの前に突如現れた。


「なっ!」


「遅い。【パラライズ】」


「うぐっ!」


 ムツキはナジュミネに魔力を込めた手刀を一太刀浴びせた後に距離を取った。


「……これは、ま、麻痺か?」


「正解だ。耐性無効なら状態異常にするのが常套手段だろ? 俺のは特別で、レベルの高い魔法や攻撃ほど出しにくくなるぞ」


「くっ! 麻痺だけにする魔法など聞いたことがない。【ファイアナパーム】」


 ナジュミネはとっさに攻撃魔法を口にするが、麻痺してうまく自身の魔力を変換できておらず不発に終わる。


「ぐっ……偏屈魔王め。妾をバカにしておるのか。攻撃をする価値もない、と」


「そんなことは……仕方ない。一撃だけ与える。これで降参してほしい。【ファイアアロー】」


 ムツキの【ファイアアロー】がナジュミネに、今まで彼女の放っていた【ファイアアロー】以上の速さで迫る。


「っ。【ファイアアロー】」


 ナジュミネも同じ【ファイアアロー】で対抗するも、彼のそれは威力が格段に上のようで太刀打ちできずに飲み込まれる。


「【マジックウォール】。ぐっ! 消しきれぬ! あああっ!」


 それでも少し弱まった【ファイアアロー】がナジュミネの肌を焦がす。


「大丈夫か。【ウォーター】。【ヒーリング】」


 ムツキはとっさに【ウォーター】と【ヒーリング】をナジュミネに施す。


「無理するな」


「……はぁ、はぁ、はぁ……。礼は言わんぞ。くっ、間違いなく妾より強いな。しかし、まだまだ負けぬ限り続けるぞ!」


 ナジュミネはムツキをそう評価し、強敵への絶望で表情を変えず、強敵と戦えていることへの喜びからか小さな笑みを浮かべた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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