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我考える故に我あり【不問2】

作者: まなお

A:人はみんないつか死ぬ。生き物全般的にいつか死ぬ。いや、生きてなくても物は朽ち、滅び、消えていく。何事も永遠に存在することはできない。永存することはできない。


B:時が進めば、死に近づく。じゃあ時を止めれば?


A:それはできない。


B:時は遡ることも、止めることもできない。進むことしかできない。


A:勝手に。


B:僕らの意思なんて関係なく


A:進んでいく。








B:ただいま。


A:おかえり。


B:今日のご飯なに?


A:ビュッフェ。


B:え?


A:好きな物を好きなだけ取れる。


B:は?


A:作るのめんどくさかった。


B:だからって、白米、チョコ、生ハムのセレクションはなくない?


A:好きな物。


B:いや、種類少なすぎるでしょ。というか、この米いつの?


A:一昨日かな?まだ炊飯器の中に入ってた。


B:固くなってるでしょ。絶対まずいよこれ。冷凍しておけばよかった…


A:まあ食べれなくはないよ。


B:食べれるけどさ。


A:そう。食べれるなら飢え死にしないし。


B:いいけどさ。


A:さ、食べよう。


B:栄養バランス偏ってる。


A:そもそもどこに栄養があるかわからない。


B:米?


A:でも玄米じゃないし。


B:生ハムの塩分とか考えたくないわ。


A:あ、でもチョコは健康にいいよ!


B:チョコ?


A:これはカカオ90%だからほぼカカオ豆


B:うわ、苦そう


A:苦いよ


B:だよね。苦いのとかあまり好きじゃないんだよね


A:でも健康にいいらしい


B:どの辺が?


A:知らん。


B:知らんのかい。


A:そんなカカオ豆博士じゃないんだから知るわけないし。


B:だったら知ったかぶるなって


A:ごめんなさい


B:許す。


A:悪いことしたら謝ればいい


B:謝って済むなら警察はいらねえ


A:違いねえ。





A:チョコとお米って合うね


B:まじ?


A:まじ。


B:(食う)あ、本当だ。チョコ大福みたい


A:それはよくわからない


B:え。


A:普通に美味しい


B:だから、チョコも餅に入れるじゃん。チョコ大福


A:いや、知らない。食べたことない。


B:あっそ。


A:でも美味しい。


B:うん、美味しい。


A:チョコ大福みたい。


B:食べたことないでしょ。


A:ないけど。


B:だから知ったかぶるなって。


A:はーい。


B:謝れや。


A:なんで?


B:知ったかぶりは悪いこと。悪いことしたら謝るの。


A:謝って済むなら警察はいらねえ。


B:ふっ、違いねえ。








B:まだ寝ないの?


A:寝ない。


B:夜更かしは美容の大敵だよ。


A:大丈夫、肌荒れしたことないし。


B:死ね。


A:そんな軽率に殺されてもね。


B:殺してないよ。


A:「死ね」って言うのは「殺す」と同じじゃない?


B:同じじゃないです。


A:お前の言葉をきっかけに僕が死んだら、お前が僕を殺したってことでしょ?


B:あ、確かに。


A:だから人殺し。


B:じゃあ前言撤回。


A:ありがとう。


B:許してくれる?


A:許してあげる。


B:ありがとう。


A:うん。


B:うん。


A:「ありがとう」っていいね


B:なんで?


A:なんとなく。


B:自分の存在を認めてくれてる感じがするとか


A:そうなのかな


B:感謝されるのは嬉しいことだよ


A:お前は感謝されたい?


B:まあ感謝されたい。


A:なんで?


B:うーん、なんとなく?


A:自分の存在を認めてくれる感じがするからだ。


B:そうだね。


A:そうだ。

B:そうだよ。


A:感謝か。


B:そう。生きててくれて、ありがとう。


A:お前も生きててくれて、ありがとう。


B:そう言ってくれてありがとう。


A:こちらこそ、ありがとう。


B:またまたありがとう。


A:うん、ありがとう。


B:ありがとうの連鎖だ。


A:もはやゲシュタルト崩壊してきてしまうよ。


B:蟻が、10(とう)?


A:蟻は十匹もいりません。


B:蟻の世界だったら十匹とかだいぶ戦力不足だよね。


A:誰と戦ってるの?


B:社会。


A:蟻の?


B:多分?


A:蟻の社会か。


B:女王蟻がいて、その元で働く働きアリ


A:女王の命令にただ従ってるだけ


B:それで蟻は幸せなのかな


A:まあ十匹しかいなかったら、1日の終わりには疲れ果ててると思う。


B:蟻は何匹で一つの部隊?


A:それは蟻に聞いてみないとわからない。


B:蟻語話せるの?


A:話せない。


B:詰みじゃん。


A:詰んだわ。


B:(ため息)もう夜だし頭回らないよ、寝よう。


A:だから寝ないって。


B:なにしてるの?


A:息してる。


B:僕も息してるけど。


A:じゃあ寝てない。


B:別に寝ると息しなくなるわけじゃないよ。


A:寝るのって怖いと思う。


B:なんで?


A:寝て、起きたら天国だったらどうしよう。


B:天国に行けると思ってるの?


A:いい子にしてたら天国に行けるでしょ。


B:サンタさんじゃないんだから。いい子にプレゼントってわけじゃないと思うけど。


A:じゃあお前はなに信じてるの?


B:いい子は生まれ変われるんだと思う。


A:輪廻転生?


B:そう。だって天国に行っちゃったらもうやり直すことができないんだよ?


A:生まれ変わったって別に人生をやり直してるわけじゃないと思うけど。


B:今は前世の自分の後悔をはらしてる。


A:そう信じてるの?


B:信じてる。


A:信じるものがあることはいいことだ。


B:で、お前は寝ると息をしないと信じてるの?


A:信じてる。


B:バカなの?


A:バカかもしれない。


B:息しなくなったら死んじゃうよ。


A:それが怖い。


B:寝てる間に死ぬのが?


A:自分のコントロールが効かないのが。


B:自分のコントロールが効かないものなんて山ほどある。


A:それがありすぎることが、


B:怖いんだ。


A:そう。


B:よし、寝るよ。


A:だから、


B:一緒に、寝るよ。


A:…


B:一緒だったら、怖くないよ。


A:そんなもの?


B:きっと、そんなもの。


A:わかった。







A:…お、はよう。


B:おはよう。ほら、起きれた。天国じゃない。


A:天国じゃない。


B:息してる?


A:息してる。


B:じゃあ生きてる。


A:生きてる。


B:朝ごはん、できてるよ。


A:なに?


B:ビュッフェ。


A:また?


B:今度はもっと種類豊富。お前のとは格が違う。


A:言ったな?


B:スペシャルビュッフェ。


A:シュークリーム、ロールケーキ、バームクーヘン、ショートケーキ、ミルクレープ、モンブラン、チーズケーキ…これ全部コンビニデザート?


B:そう。僕の好きなもの。


A:過度な糖分摂取で糖尿病になりそう


B:でも、好きなもの。


A:スイーツパラダイスだ。


B:そうだよ。


A:朝からこれはきついな。


B:でも食べれなくはないでしょ。


A:食べれなくはない。


B:じゃあいいじゃん。


A:いいけどさ。あ、これ。


B:チョコ大福。


A:売ってるんだ。


B:知らなかったの?


A:知らない。


B:じゃあ今日知った。コンビニで売ってるチョコ大福。


A:美味しい?


B:美味しい。


A:じゃあ食べてみる。


B:召し上がれ。


A:(食う)甘いね。


B:カカオ90%ではないと思う。


A:絶対に違う。

B:じゃあ健康には悪いわ。


A:最悪だ。


B:凶悪だ。


A:…ありがとう。


B:ありがとうをありがとう。


A:どういたしましてでいいのに。


B:こっちからも感謝したいの。


A:わかった。


B:わかってくれて、ありがとう。


A:昨日、よく寝れた。


B:息しながら?


A:息しながら。


B:すごいじゃん。寝ながら息するとかマルチタスキング。


A:誰でもできるよ。


B:僕にはできないよ。息しながら寝るの。


A:寝てても自然と息はしてるよ。


B:そういうもの?


A:そういうもの。


B:コントロールできた?


A:できた。


B:できるものもあるんだよ。


A:数少ないけど、できるものもある。


B:自分のことだけはコントロールしたいよね。


A:自分のことさえも、できないことが多いけどね。


B:でも、できることもある。


A:ある。例えば瞬きできる。


B:できる。あと口も「あへあえう(開けられる)」


A:指も動かせる。


B:足も動かせる。


A:歩けるね。


B:踊れるね。


A:なんていうんだっけ?


B:あ、足!


A:(笑う)人魚姫になっちゃった


B:なっちゃったね


A:人間だけどね


B:人間だったわ。


A:本当に?


B:きっと?


A:多分。


B:人間なんなんだよ。


A:難しいね、人間。


B:生き物全般難しい。


A:違いねぇ。



A:僕らは生きてる。


B:生きてるよ。


A:生きるってどういうこと?


B:息してるってこと。


A:息してたら生きてるの?


B:死んでないってこと。


A:よくわからないや。


B:僕もわからない。


A:僕は今確かにここにいる。


B:僕と一緒にここにいるね。


A:意識がある。


B:そして考えてる。


A:だったら僕は生きてる?


B:デカルトだね。


A:我考える故に我あり。


B:そう。僕らは自分で考えてる。自分でコントロールして思考を回してる。だったら、


A:僕らはいる。


B:それでいいんじゃない?


A:いいのかな?


B:いいんだよ、きっと。


A:きっと、ね。



B:「僕らはいる。」


A:そう言ったね。


B:どこにいるんだろう。


A:どういうこと?


B:コントロールできてるようで、できてない世界だったらどうしよう。


A:コントロールできないんだから、どうしようもできない。


B:現実ってなに?


A:僕らがいるところ。


B:ここ?


A:そう。ここ。


B:夢だったりして。


A:夢?


B:僕らは僕らの思考をコントロールしてるの?


A:してるってさっき言った。


B:言った。言った?


A:勝手に今見えてる世界を作り出してるってこと?


B:ありえなくはない。


A:じゃあなにが現実?


B:わからない。


A:生きてるのが現実だよ。


B:生きてるってなに?


A:考えること。


B:コントロールできない考えでも?


A:コントロールできなかったらだめ。


B:じゃあ生きてるってなに?


A:息してること?


B:息してたら生きてるの?


A:死んでないってこと。


B:いつ死ぬの?


A:いつか。


B:「いつか」は必ずくる。


A:時を止めることはできないから。


B:後ろに行くことも、先に飛ばすこともできない。


A:ただただ、勝手に、進んでく。


B:全ての時を通過して


A:止まらず通過するだけの、時。


B:不公平だよね。


A:なにが?


B:誰も生まれたいと思って生まれてきたわけじゃない。


A:そりゃそうだ。自分たちでコントロールしたわけじゃない。


B:僕たちの思考と関係なく生まれた僕たちは、勝手にベルトコンベイヤーに乗せられた。


A:止まることも、後ろに行くこともできないベルトコンベイヤー。


B:いつ強制終了がくるかはわからないけど。


A:だから夜も眠れない。


B:息をしないといられない。だって生きてるんだもん。


A:生きてるってなに?


B:息してること。


A:息をしてたら、生きてるってこと?


B:それも少し違う。


A:そうだね、少し違う。


B:生きてるってどういうこと?


A:死んでいないってこと。


B:でもみんないつか終わる。無常だから。


A:じゃあどうやって生きればいい?


B:考えればいい。


A:コントロールできる範囲で、


B:考えればいい。

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