第五頁目
ごくりと唾を飲み込む。
私、一世一代のピンチです。
「嘘でしょ…」
がらんとした補習室の中にはものの見事に誰もいなかった。
嘘やーん(二回目)。
これあれだよ。
あのパターンだよ。
「ま、まぁ、どうせ先生が遅くなってるだけだと思うし?」
絶対そうだようんうん。
自分を独りでに納得させてから席に座る。
さて暇だ。
何をしようか。
「こんな時の本だよねー。じゃじゃーん」
あの本を読むには少し勇気がいるので別の文庫本を取り出す。
ちょうどいいところで終わってたから続きが気になるんだよね。
私は本に集中することにした。
(※ただいま語り手が真剣に本を読んでおります。
しばらくお待ち下さい)
△▼▲▽
どれくらい本を読んだのだろうか。
ふと時計を見るとあれからもう二時間ちょっと経っていた。
随分と読み込んでいたらしい。
ほぅ、と息をついて本を直す。
笑いながら呟いた。
「なあんだ何もないじゃん」
がたん。
ぴたっと動きを止める。
…なんか嫌な予感がする。
そうそう、昨日のお風呂に入った時のような。
じわじわと冷や汗が吹き出るのを感じながら後ろを振り返る。
視線は自然とその先のロッカーを見つめる。
がたっ、がたがたっ。
ロッカーが動いていた。
そろっとカバンを胸に抱える。
ゆっくりゆっくり椅子を引いて出口を背にして後退る。
これはやばい。
本能的にそう思った。
教室の扉を開けようと後ろに手を伸ばす。
声が聞こえた。
「おや」
「もう来ていましたか」
「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!??(泣)」
それがあの本のセリフだと気付いた瞬間。
私は泣きながら補習室を飛び出た。