第三頁目
次の日。
私はとてもぐったりしていた。
お陰で友達のえりとひかりにすごく揶揄われた。
許さん…。
「なに、なんかあったの?」
「今日めちゃくちゃぐったりしてんじゃんワロタ」
「こっちは笑えない体験したっつーの!」
「そういやイベやった?やばいよね、あれ」
「聞いて?
お願いだから話ふったんなら最後まで聞いて?」
「そうそう、全然ガチャ当たんなくてさぁ」
「おーいお二人さーん」
友達二人がゲームの話に乗り移ったのでため息をつく。
そっと机の中に手を入れると手に大きい本が当たった。
例の本だ。
面白そうだから暇な授業中に読むために持ってきた…のではなく。
検証するために持ってきた。
日付が変わった今日なら開くかな、と思ったからだ。
あの後。
へたり込んで数十分動けなかった。
ちょっと休んでから慌てて本を開いてみたのだが。
開かなかった。
いや。
開けなかった。
指一本で開いたり揺らしながら開いたりと色々方法を調べてやってみたが物の見事に注意書きのところしか読めない。
だから今日なら開くと思って持ってきたのだ。
ふぁあ、とあくびがでる。
昨日の騒動のせいであまり眠れなかった。
まだゲームの話をしている友達二人を横目に文庫本を開く。
チャイムが鳴った。
…まじか。
めちゃくちゃ今読むとこだったのに。
間が悪いというかなんというか。
ため息をつく。
「…どうせこの本開かないしな…」
次はとても退屈な礼儀の授業だ。
どうやって暇を潰そう。
友達が自分の席に帰ったのを見届けて机の中から例の本を出す。
なんとも真っ黒な。
ぼんやりとしながら頁に手を這わせた。
ぱらぱらぱらぱら。
頁が開いた。
ぽかんとする。
目の前で頁と頁の間にするんと指が通った。
「え」
さっきまでは開かなかったのに。
他の頁も読めるようになっている。
《日常の中の非日常に浸りたい時や
いつも違う気分を味わいたい時。
どうぞお好きな時にお開きください。
この本がそんな気持ちに応えてくれるでしょう。》
注意書きに書いてあった文を思い出す。
…もしかして。
今のこの憂鬱な気分になった時しか開かないのか?
とりあえず開いた頁を見る。
…読めるようになっている。
ちらりと時計を見るとまだ授業は始まったばかりだ。
あと五十分もある。
「…読むか」
暇潰しだ。
題名を見る。
【第二読目】補習室の怪