第二頁目
「ひぇぇ…」
はっきり言って怖かった。
なんだこの話。
最後どうなったのかわからないのがなんともいえない。
気味悪い。
「…はぁ…」
こんな話読んだあとにお風呂なんて入れないよ。
でも暑いし汗かいてるし気持ち悪いし…。
しかも理由はそこだけではない。
あるのだ。
私のお風呂場にも鏡が。
ちらりとお風呂場の方を覗く。
鏡がきらっと反射してこっちを見てる人影が映った気がした。
…ひっ。
シャワーだけでも、と思ったがそのシャワーの目の前に鏡がある訳で。
どっちにしろ鏡を見なければいけなかった。
仕方ない、覚悟を決めよう。
深呼吸して着替えを待ってからお風呂場にそろりそろりと入る。
さながら泥棒みたいだ。
…自分家なのに泥棒とか。
手早く服を脱いで中に入る。
なるべく鏡を見ないようにしてシャワーを浴びる。
やっぱりお風呂は気持ちいい。
「…頭あーらお」
そうだ、あれは所詮創作なのだよ。
つまり現実には起こらないこと。
なーにが《この本は全て実在しうるお話です》だよ。
そんなもの起こらないじゃないか。
私の勝ちだな、ふふん。
そう思ってシャンプーを手に出して泡立ててから頭を洗おうとしたその時。
ぺた、ぺた、ぺた、ぺた…
なんとも聞き慣れた音がした。
ぴたりと行動全てを止める。
…なに、今の音。
裸足で歩いてるみたいな音だった。
そう、まるで。
まるでさっき読んだあの足音みたいな…。
嫌な予感がする。
ゆっくり頭を流して、身体をそそくさと洗う。
大丈夫、気のせいだよ。
そうそう、気のせい気のせい。
半分現実逃避をしながら全身を洗って流す。
…とても素早く。
「…きょ、今日はもう浸からなくていいかなぁ…?」
引き攣った笑顔で独り言を言ってお風呂場の扉を開けた。
タオルを手探りで取って慌てて外に出た時。
ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた
「うぎゃああああああああああああああああああ!?」
乙女にあるまじき悲鳴を上げて全力で扉を閉めた。
その場にへたり込む。
心臓がどくどくいっている。
「…ひぃい…」
視界の先で扉の向こう側にいる誰かの影がにたりと嗤った気がした。