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30.「再生する肉体」

 頭を失ったデッドリー・ドラゴン(屍竜)は硬直していた。


「やっつけましたね! さすがルークさんですっ!」


 俺の隣でパペのアホ毛がぴょこぴょこと跳ねる。


 喜ぶ彼女には申し訳ないが、まだだ。


「まだ終わってない」

「え、どうしてですか?」


 無言でデッドリー・ドラゴン(屍竜)を指さす。

 その腐敗した竜の魔物は、直立不動に見えてかすかに動いていた。特に吹き飛んだ頭のあたりが、ボコボコと沸騰するような変化を見せている。


 デッドリー・ドラゴン(屍竜)には再生能力がある。頭部を破壊すれば毒のブレスは封じることができるが、それでは倒したことにならない。


「え。う、動いてます……!」

デッドリー・ドラゴン(屍竜)は核を破壊しなきゃ死なない。しかも核は個体ごとに位置が変わる」

「そ、そんなのどうやって見分けたら……」


 核には魔力が宿(やど)っている。魔力感知に優れた魔法職がいれば弱点のありかを探れるが……。


「おい、あんたら!」


 前線で戦っている冒険者に呼びかける。

 彼らはゆっくりと動き始めたデッドリー・ドラゴン(屍竜)に怯えて、じりじりと後退を始めていた。おそらくデッドリー・ドラゴン(屍竜)の討伐は未経験なんだろう。

 俺だってそうだ。

 魔物辞典に載っていた情報を覚えてなければ、不死なんじゃないかと錯覚したかもしれない。


「あんたらのなかに、魔力の確認ができるスキルとか魔法を持ってる奴はいないか?」

「い、いや、いない!」


 くそ。じゃあ地道に核を探るしかないか。


「パペ、もう一度『タマゴ爆弾』を!」

「は、はい。――スキル『タマゴ爆弾』! どうぞっ!」


 デッドリー・ドラゴン(屍竜)の頭部はすでに半分ほど再生している。それにともなってか、尻尾での薙ぎ払いや前脚の振り下ろしといった直接的な動きが激しくなっていた。


 ブレスが封じられた分、近接攻撃が増えたんだ。

 その分、前線の冒険者の負担は大きくなる。


「そいつの身体のどこかに核がある! それを破壊するまでなんとか耐えてくれ!」


 そう叫ぶと、前線の冒険者たちがまばらな頷きを返した。


「まずは身体の中心――出力1%『シールドバッシュ』!」


 盾で弾いた『タマゴ爆弾』は一直線にデッドリー・ドラゴン(屍竜)の腹に埋まり、周囲の肉を巻き込んで爆発した。


 が、すぐに再生する。


 頭の再生は遅いが、それ以外の部分の再生は異常に早い。それもデッドリー・ドラゴン(屍竜)の特徴だ。

 厄介極まりない。


「もう一度!」

「はい、スキル『タマゴ爆弾』……ふたつ!」

「右足……出力1%『シールドバッシュ』! 駄目か。次は左足。出力1%『シールドバッシュ』!」


 右足と左足を連続で破壊したが、すぐに再生した。

 この調子でやるほかない。


 そろそろ頭部が再生しそうだ。

 そうなると少しまずい。

 再生したての頭は頑丈という情報がある。『タマゴ爆弾』でも破壊できないかもしれない。


「パペ!」

「はい! 『タマゴ爆弾』!」

「次は――」


 迷っている暇はないのに思考が揺れてしまう。


 左右の前脚?

 いや、それよりも身体の中心に近い肩や、足の付け根か?


「左の翼の先端を狙いなさいな」


 すぐ後ろで声がして、俺は考えるより先に盾を引いていた。


「出力1%『シールドバッシュ』!!」


 放たれた『タマゴ爆弾』は一直線に左の翼に突き刺さり、腐肉を吹き飛ばした。


 再生――しない。


 デッドリー・ドラゴン(屍竜)の肉体は溶けるように消滅していき、赤黒い骨だけがそこに残った。


 俺はパペを自分のそばに引き寄せて振り返った。

 先ほどアドバイスをしたのが誰かは分かっていたからだ。


「倒せてよかったですね、ルークさん」

「……システィーナ」


 ニヤリと笑みを浮かべる教祖が、そこにいた。

お読みいただきありがとうございます!

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