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曲の合間に漏れ聞こえる歌を何と無く聴いちゃう19

「おい、何ボケッとしてんだよ」


 夕方、ルルさんがご飯を運んでくれるのを待っていると、ルイドー君が入ってきた。片手には大きなお盆を危なげなく持っている。


「ルイドー君、今日は晩御飯も一緒に食べるの?」

「おお、ジュシスカがいなくなっただろ。代わりにオレが護衛をやることになったんだよ」

「え?! すごいじゃん。もう一人前なの?」


 へっと威張ったルイドー君の後頭部を、続いてパン類を抱えて入ってきたフィデジアさんがこんと叩いた。


「お前はまだまだ見習いだ。驕らずに精進しなさい」

「……はーい」

「リオ様、騎士ジュシスカ不在の間、私とルイドーが代わりに護衛を勤めさせていただきます」

「あっそうなんだ。よろしくね」

「はい。全身全霊をもって任務にあたります」

「ほどほど、ほどほどにね。赤ちゃん優先でね」


 ピッチャーとコップを持ってきたルルさんが、改めて二人を私に紹介する。ジュシスカさんが戻るまで、空いた穴を二人で埋めてくれるらしい。今日は挨拶がわりに一緒に夕食を食べることになったそうだ。

 ピスクさんも一緒にテーブルを囲んで、シチューをメインとした料理を食べる。最近は随分暑くなってきたけれど、今日は昼から雨が降ってかなり涼しくなった。アッツアツのビーフっぽいシチューを硬いパンで掬って食べると体が温まる。


「ジュシスカの不在が長引いてフィデジアのお産が近付けば、また新たに護衛のための神殿騎士を選びます。信頼に足る相手かどうかも慎重に見極める必要がありますし」


 ルルさんとしては、私の身の回りを守る相手はホイホイと新しい人を入れたくないらしい。神殿騎士が今人手不足なこともあるし、万が一シーリースと繋がりのある人であれば危険だからだそうだ。


「フィデジアは女性ですから、入浴や着替えの際も絶えず側で護衛することができますし」


 ルルさんは男性なので、今までお風呂や着替えは大体ひとりか誰か女性に手伝ってもらうくらいだった。ちなみにお風呂は出会ってすぐくらいの頃に一度、衝立越しに浴場にいてもいいかと言われて断ったこともある。仕事熱心はいいけれど、流石にそれは拒否するしかない。


 その頃はまあ私のお世話メインだったので緩かったけれど、今は色々と物騒になってきたのでフィデジアさんに任せようと思ったのだろう。ルルさんはまだ私がシーリースに行きたがるのではないかと心配しているらしいので、見張りの意味もあるかもしれない。


 とはいえフィデジアさんは無理のできない体だし、ジュシスカさんの実力を補う意味でももうひとり、ルイドー君が選ばれたようだ。

 ルイドー君はルルさんの近くで仕事ができるのがよっぽど嬉しいらしく、にこにこしながらご飯を食べていた。ニャニにジロジロ見られていても気にならないほどテンションが上がっていて、あれこれと鍛錬の話などで食卓を賑わせてくれた。


「へえ、祈りの時間なんてあるんだね」

「神殿騎士はそもそも『力』が強くないとなれないからな。かなり強ければ巫女や神官になることが多いが、神殿騎士はその上で肉体を鍛える必要もある。フィアルルー様のように神官も兼ねていらっしゃる方も稀にいるし」

「大変そうだねえ」


 ルイドー君たちが光っぽく感じられる力というのは、鍛えることによって剣の腕を上げたり、相手の力量を測ったりすることにもつながるそうだ。私は全然見えないのでわからないけれど。

 ルイドー君はどっちかというと剣の方が得意で力はあまり使えないので、そっちの鍛錬もみっちりやっているらしい。


「その力が強いと、離れた場所に移動できたり、術を使ったりできるってことだよね?」

「ああ。っつっても、それはものすごい力の持ち主しかできないぞ。神官でも上位の方とか、長老とかな」

「へえ」

「お前もっと食えよ。パン切ってやるから」

「ルイドー、そちらの柔らかい方を。リオは硬いパンだとすぐに満腹になるので」

「わかりました、フィアルルー様!」


 白っぽい方のパンを指したルルさんが、私にシチューのお代わりを渡す。器に半分くらい入ったシチューは、上手いこと私の腹九分目を狙ってくる分量だ。

 フィデジアさんは、蒸し鶏のサラダをもりもりお代わりしている。ヌーちゃんがおこぼれを貰おうとじっと見つめていた。その視線に負けたフィデジアさんが葉っぱを一枚ヌーちゃんにあげながら口を開いた。


「それにしても、人間は我々エルフよりも力が弱い。あのような禁術を作るには、膨大な人手が必要だったはずです」

「そうなんだ」

「我々エルフの神官でさえ力を使い果たすほどの術陣を、この短期間でどうやって再び作り上げたというのか」

「やばそうな匂いがするねえ」

「フィデジア、食卓に相応しくない話題はその辺で。リオ、今日は新しい果物がありますよきっとお気に召すかと」


 ルルさんが見せてくれたカゴの中を見て、ヌーちゃんが目を光らせていた。どうやら美味しい果物のようだ。






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