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曲の合間に漏れ聞こえる歌を何と無く聴いちゃう3

 無事に最後のパレードが終わり、中央神殿へと戻ってきた。パステルとメルヘンを労ってから部屋へと戻り、着替えを済ませる。


「シュイさん、ミムさん、リーリールイさん、今までありがとうございました」

「こちらこそ、リオさまのお手伝いができて光栄でしたわ」

「ぜひまたお声掛けくださいませね」

「ぜひフコをお分けくださいましね」

「うん、また今度一緒にごはんでも食べようね」


 にこにこした三姉妹は、最後にハンカチをくれた。3日間着た衣装と同じデザインのハンカチである。こっそり用意しておいてくれたらしい。とてもはっきりした濃い青色は、細かい刺繍が周囲に沿って施されているのもあってハンカチサイズだととてもオシャレに見える。

 ちょっと感動したと同時に、私は何も用意してなくてちょっと焦った。しかし三姉妹は「これからもフコの実を頂けたら嬉しいです」と揃ってにこにこした。それが目当てだったのかもしれない。いやいいんだけども。


「ルルさん見て見て、超かわいいハンカチもらっちゃった」

「祭りの衣装と似ていますね」

「うん。嬉しい」


 着替えをしていた部屋から出て三姉妹と別れると、私はさっそくルルさんに自慢してしまった。


 思えば、ここに来てから私が交流している相手はほとんどが男性だ。というか9割がルルさんなので自動的にそうなっていたわけだけれども、女の子とこうやってやりとりできるというのがとても新鮮だ。

 三姉妹はお返しはフコでと言っていたけれど、私も何か彼女らに贈ってみたいな。


 浮かれながらハンカチを大事にしまって、ルルさんと一緒に食事のための部屋へと移動する。


「そういえば、今日男の人から投げられたアレは何だったの?」

「覚えておられたのですか」

「流石にそんなにすぐ忘れたりはしないよ……」


 私をニワトリか何かだと思っているのかルルさん。


「その件について先程ジュシスカより連絡がありまして、申し訳ありませんが少し時間を頂こうかと」

「今日はもう予定ないしどうぞどうぞ。私は奥神殿にでも行っておいたほうがいいかな」

「いえ、さほど長くは離れません。どうぞゆっくり昼食を召し上がっていてください。今日は暇潰しもいますから」

「ヒマツブシ?」


 ひつまぶしではなく、ひまつぶし。

 神獣バクの集団でも遊びに来ているのだろうかと思いながらルルさんの開けた扉を通って部屋に入ると、すぐ目の前に誰かがいた。

 土下座状態で。


「……ええぇ……」


 それはもう、ピシーッとした土下座である。折り目正しく正座したその人物は、床に手と額を付けてひたすらじっとしていた。

 しばらくそれを眺めてから、ルルさんの腕を引っ張って一旦部屋の外に出る。


「ルルさんルルさん、あれって土下座だよね。この世界にもドゲザスタイルが浸透しているんだね」

「いえ、あれはリオが教えてくれた、リオの世界流の1番の謝罪の形です」

「えっ私そんなこと教えたっけ」

「ええ、ここで暮らし始めた頃くらいの話です」


 そういえば最初の頃、「失礼があってはけませんので」とか何とかで挨拶やマナーについてもルルさんに尋ねられてたことがあったような。まさか教えた日本のマナーを使われる場面があるとは。というか土下座って。日本でも稀な気がする。

 なるほどと頷きながら、もう一度部屋へと入り直す。そこには先程と同じく綺麗な土下座があった。


「リオには申し訳なく思いますが、しばらくこれの謝罪でも聞いてやってください」


 挨拶を、と言われて土下座の人が顔を上げる。

 うん、薄々予想はしていた。


「えーっと、ルイドー君、先日ぶりだね……」






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