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真夏の夜の夢8

「リオ様、ご機嫌麗しゅう……」

「ジュシスカさんもご機嫌……麗しい状態で合ってる? 元気?」


 ヌーちゃんを心配しつつ何曲か歌って時間を潰してから戻ると、今年1年分のアンラッキーが3分の間に凝縮して降りかかった、みたいな憂鬱顔をしたジュシスカさんがいた。金髪のストレートヘアをサラリと流しながら私の質問にはいと答えた。いつもの通り、見た目よりは気分は悪くないようだ。


「今日は天気が良かったので、朝から自慢の剣を全て磨き上げました……」

「なんか楽しそうでよかった」

「リオ、何かあったときのためにジュシスカも同行します」

「あ、そうなの?」


 ジュシスカさんは頷いた。


「何やら楽しそうなのでぜひ……」

「剣は5本もいらないんじゃないかなあ」


 影を背負ったジュシスカさんは、口元に笑みを浮かべながら大事そうに剣に触れている。ルルさんは何しに行くと説明したんだろうか。なんか目的が違う気がする。


「ジュシスカを連れて行くのは念のためです。バクがリオをあまりよくない場所に導くということは、厄介なことが起こっているかもしれませんから。人手が必要になったときに呼びに戻るのは手間ですし」

「そっか。床板剥がしたりするかもしれないもんね」

「こう見えても力はありますから……」


 元実力ナンバーワン神殿騎士のルルさん、現ナンバーワンのジュシスカさん、そして期待の実力派ホープルイドーくんの剣つよトリオがいたら、もはや怖いものなんかない。ニャニもいるので足元だって隙なしだ。

 このメンバーがいたら大抵のことはなんとかなるだろう。むしろここまで万全の人材で行って特に何もなかったりしたら申し訳ないくらいだ。


 私が夢で見た路地までは、馬で行くことになった。街のはずれにあるので、徒歩だとちょっと遠いようだ。

 私とルルさんは淡いピンク色の毛並みのパステルに乗る。パステルの子供で紫色の毛並みのメルヘンも乗ってほしそうだったけれど、ルルさんは警備の観点からも一緒に乗るという意見を覆さなかった。置いていかれると気付いたメルヘンは文句を言っていたけれど、私が撫でまくるとウヒヒンと嬉しそうに鳴いた。


「ルイドーくんの馬めっちゃ白い!」

「うるせーな」


 ルイドーくんが乗っているのはまさしく白馬だった。パステルカラーをしている馬の中でも、毛並みがひときわ明るい。肌が見える鼻先はピンク色で、目は黄色。パステルやメルヘンよりも少しスラッとした体格で、角と羽根が生えていてもおかしくないような幻想的な馬だ。


「これルイドーくんの馬?」

「ああ。しばらく前に頂いて調教してた。まだ戦いに使えるほどじゃないが」

「自分で調教したんだ。すごいねールイドーくんまんま白馬の王子様じゃんかっこいい!」

「んだそれアホか」


 つれない態度だけど、ルイドーくんは金髪碧眼なので白馬に乗ると王子様感がマシマシだった。すごいすごいと褒めていると、大きな手にいきなり口が塞がれる。


「……」

「リオ、行きますよ」


 一緒にパステルに乗っているルルさんが、私の口を塞いだままにっこりと言った。私は無言で頷いた。ルイドーくんは無言で先に出発した。

 ちなみにジュシスカさんの馬はパステルグリーンだったけれど、機嫌が悪そうに前足で地面を掻いたり首を振ったりしていた。乗っている本人はご機嫌そうにニャニを抱えている。相変わらずジュシスカさんは一方通行な動物好きなようだ。ニャニが嫌がっていないのが幸いかもしれない。青い前脚がずっとジタバタしながらこっちに伸びてるけど。


 ぽっくりぽっくり街を南下しながらルルさんは私にお説教をして、ルイドーくんは聞こえないふりをしながら進み、ジュシスカさんは不機嫌な馬を宥めつつニャニを撫でた。






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