雨に唄えば9
「どっ……こいしょーい!」
「おお、救世主リオ様が気炎を上げておられる!!」
「神獣ニャニも激しく動いて我々を鼓舞してくださっているぞー!」
盛り上がってくれているのはありがたいけれど、私は盛り下がっていた。
主に体力的な面で。
土嚢を作るための砂利、貯めてるなら使えばいいじゃん。こまめに積んどけば浸水しなくていいじゃん。とか勝手に思ってごめんなさい。
キピルトーの人たちが積まない理由がわかった。
「フンッ……」
「リオ、一度に多く掬おうとしてはいけません。軽く掬って、回数を繰り返した方が楽です」
「いやどっちもラクじゃないと思う」
私は土嚢を積む係、ではなくその土嚢に砂利を詰める係、でもなくその砂利を運ぶ係、でもなく砂利を倉庫から出す係、でもなく、砂利を運び出しやすくするように、倉庫の砂利の山を切り崩す係である。砂利の山に大きなシャベルをザクっと刺し、入り口の方に崩していくだけだ。
たぶん、だいぶラクな方の仕事。ルルさんが私に任せたくらいなのだから。
なのに、私は息切れしかけている。
「リオ、上に立っているともう崩れますから、もう降りて切り崩した方がいいかと」
「ハイ……」
「そこだと落ちてくる砂利に足が埋まりますよ。この辺りに立って、こういう場所を狙って掘るとほら、簡単に崩せますから」
ルルさんがザクッと突っ込んだシャベルによって、砂利の山がどざーっと手前に動いた。私が頷くと、ルルさんが蔵の外に土を運ぶ作業に戻る。
私も真似をして砂利山を刺してみるけれど、なんか刺さりが甘い。そして崩れるのはシャベルの上に乗った部分だけで、全体的に崩れてこない。どこも簡単じゃない。
仕方ないのでチマチマチマチマと手前に移動させるけれど、それ以上の速さでルルさんがモリモリモリモリ土を掬って運び出すので少しも休まる暇がないのだった。
砂利って重い。
それでも、提案に乗ってくれたキピルトーの人たちも頑張ってるから私だけサボるわけにはいかない。
深呼吸を1回してから、またシャベルを構える。突き刺そうとした砂利の斜面に、ズサッと青いものが躍り出てきた。
「ウワッ!!」
ずべっと砂利の斜面に張り付いたニャニは、短い手足を小刻みに動かす。すると砂利を伴ってニャニの体がズルズルと落ちた。地面と水平に戻ったニャニが、ニタァと口を開ける。
「ニャニーッ!!」
こうやってニャニが手伝いなのか邪魔なのかわからないことをしてくるのも、私の作業が進まない理由だと思う。
誤って刺したら神殿の人たちめちゃくちゃ悲しみそうだからやめてほしい。




