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時間余るかも〜とか言ってても最終的に歌い足りなくなる4

 クマと、さらに大きなクマと、灰色の狼と、トラが二本足で立って話し合いを進めている。

 メルヘン。獰猛メルヘン。


 ハチさんは私を村の中に連れて帰り、長老に会わせるといって大きな家へと連れてきた。クマが座っても大丈夫そうな、大きくてでも少し脚の短い椅子に座るよう促され、ハチさんとその他の人というか生き物たちが集まってヒソヒソ話を始めたのを見守っていた。


 ちなみにニャニは私の隣で大人しくしている。見下ろすと、ゆっくりと片手を上げた。帰る気配がないので、どうやら付き添ってくれているようだ。

 迫力満点な獣の民がいるこの空間では、青いワニであっても知り合いがいてくれるのは心強い。


 私はこれからどうなるのだろうか。

 ハチさん助けてくれるっぽいことを言っていたけれど、話し合いでやっぱダメだったとかならないことを願うしかない。ていうか肉食獣系多くない?


 ハチさんだけじゃなく、ハチさんよりふた回りは大きいクマや狼、トラも上半身にキラキラした飾りを巻きつけていた。大きなクマはハチさんと同じように腰に布を巻いていて、トラと狼はズボンのようなものを身に付けている。アラビアンな印象のあるゆったりしたサルエルパンツのような形は、獣の脚の形に合わせているからなのかもしれない。


 獰猛メルヘンな光景を眺めていると、トットッと変わった足音が聞こえてきた。見ると、ネコが二本脚で立ってお盆を運んでいる。ネコといっても、普通のネコよりも大きい。立った姿は1メートルほどの高さがあった。茶色と黒と灰色が混ざったような毛並みで、大きな目は南の島から見える海のような青緑色だ。

 上半身にはスカーフを巻いて、ベストのようなものを着ている。それぞれ明るくて濃いオレンジと青色の服だったので、さらにその上から巻いたキラキラも相まってかなり派手だった。


 ネコは尻尾でバランスをとりながら、ポットとカップ、お茶菓子らしきものを乗せたお盆をゆっくりこっちに運んでいる。私のすぐそばまで来ると、一生懸命背を伸ばしてお盆をテーブルの上に乗せようとした。


 ちょっとヨタヨタしたので慌ててお盆の縁に手を添えると、縦長の瞳孔がこちらを見て私をジーッと見つめた。それから仕事に戻り、ガチャガチャとお盆をなんとかテーブルの上にのせる。ちょっとポットのお茶が溢れてお盆の上がびちゃびちゃになっていたりしたけれど、まあ許容範囲だろう。


 無事仕事を終えたネコは、フウ、と小さい息を吐いてから私をじっと見た。じっと私を見つめつつ、ふんふんとピンクの鼻が動いている。私もその顔をじっと見た。


「お茶くれるの? ありがとう」


 声をかけると、ネコの毛がボワッと逆立ち、そのままピャーッと四つ足で走っていってしまった。去っていく尻尾がものすごく膨らんでいる。

 ふわふわしてて可愛かったので、逃げられてちょっと寂しい気持ちになった。


 部屋から出て廊下に隠れたネコは、しばらくするとそっと顔を半分覗かせた。その下にものぞく顔があり、さらにその下にも。同じ顔のネコが縦に並んでこっちをそっと覗いていた。

 手を振ると、ピャッと隠れてまたそーっとこっちを窺っている。

 私がお茶を注いで飲むと、それぞれが耳をピクピク動かしながらこっちを観察していた。


 なにあれかわいい。三兄弟かな。

 フワフワした毛を撫で回したい。

 そう思っていると、ニャニがズルッと動いた。こちらを見上げて片手を高く上げている。何アピールだ。


「ニャニもフワフワだったら可愛……いや、今のままの方がいいか」


 フワッフワの毛が生えたワニを想像してみたけれど、それはそれでなんか怖い。

 そのままでいてねと声をかけると、ニャニはニタァと口を開けた。






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