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フリータイムでも何時に入ったかつい確認してしまう23

 ソファの上で三角座りをしながら、下から出てきた神獣に話しかける。


「ニャニ……アマンダさんって21歳なんだって。知ってた?」


 ニャニがゆっくり右手を上げた。


「めっちゃ大人びてるよね……言葉がわからない状況でも落ち着いてるし……歌も上手いし……」


 ゆっくり右手を下ろしたニャニが左手を上げる。


「あと彼氏いるっぽかった。そりゃ帰りたいよね。ニャニも無事帰れるように手伝ってね。なんか神獣パワー的なやつで」


 手を下ろしたニャニが2回ほどおすわりを繰り返す。


「よろしくね。守ってあげてね。有事の際はあのシャーッてやつ使ってね」


 ニャニが口を開けた。


「いや今はやらなくていいから。やらないで。やめて」

「リオ、そろそろ朝食の時間です」


 ルルさんが私に手を差し出し、ニャニが先に行くのを待ってからその手を取って立ち上がり、袖から顔を出したヌーちゃんを抱っこする。

 先にテーブルについていたアマンダさんを見て、ニャニがニタァ……と口を開いていた。アマンダさんも笑顔でそんなニャニを撫でている。需要と供給の釣り合った非常に理想的な光景である。


「あっジュシスカさん!!」

「どうもご迷惑をかけまして……」


 その斜め後ろに佇む姿を確認して、思わず駆け寄る。ニャニの尻尾を慎重に跨いで。

 ふぅ……と溜息を吐いたジュシスカさんは相変わらず星座占いランキング最下位みたいな顔をしているけれど、それは病気のせいではなさそうだった。もっと痩せていたり元気がなかったりしているかと思ったけど、前に見たジュシスカさんと全く変わらない。


「もう大丈夫なの?」

「ええ、すっかり……あのクソ不味い薬湯を飲んだ翌日にはほとんど治っていたようなものでした。医者に止められたので養生していましたが……」

「あれクソ不味いんだ……」

「死ぬかと思いました」


 どこか遠くを見ながらそう溜息を吐いたジュシスカさんは、どこかトラウマを抱えているようだ。苦味とかではなく、癖があってものすごく嫌いな味だったらしい。


「い、生きててよかったねえ」

「病に罹ったことは不徳の致すところですが、私を始め全ての神殿騎士や見習いが、リオ様とアマンダ様のおかげで生き延びることができました……小神殿を代表して感謝致します。薬草とフコをどうもありがとうございました」


 すっと姿勢を正したジュシスカさんは、まっすぐ私を見てから深々と頭を下げた。いきなりそんな対応をされると慌てる。顔を上げてと言いながら両手を動かしていると、ヌーちゃんが私の腕からジュシスカさんの下げた頭へと飛び移った。黒いふわふわをさらさらな金髪に乗せてジュシスカさんは体を起こす。


「いやそんな畏まらなくていいから。みんな元気になってよかったね」

「これからはさらなる忠誠を誓い、あらゆる事態に備えて武器を蒐集し、フィアルルーを超える程の剣を目指して精進いたします」

「それ前からじゃない? 改めて誓う必要あった?」


  頭にヌーちゃんを乗せながらシレッと今後も趣味に邁進します宣言である。

 まあ、元気だということがわかってよかった。

 アマンダさんにも深々と頭を下げたので通訳すると、元気でよかったと言っていた。


「それでは本日より、アマンダ様の護衛に復帰いたします……」

「うん、いきなり大変かもしれないけどよろしくね」


 サカサヒカゲソウの日干しのために歌を休む今日一日を挟んで、明日からとうとう帰還のための魔術陣の記述が始まる。シュイさんたち三姉妹がアマンダさんのそばから離れることになるので、ジュシスカさんが主にアマンダさんにつく予定だ。フィデジアさんは部下を率いて中央神殿の警備を強化し、ルイドー君はピスクさんと共に私たちがいるエリアの警備にまわる。


 この五日間、無事に過ごせるのかどうかわからない。心配しているせいか、変に胸騒ぎがするようなそわそわした感じがする。

 けれどここまで来たのだから、絶対に成功させたい。

 沢山の人が手を貸してくれているから、きっと失敗することはないだろう。私も力になれるように、というか少なくとも足は引っ張らないように頑張ろう。


 隣を見上げる。ルルさんがすぐに気が付いて、私に微笑んで頷いた。






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