フリータイムでも何時に入ったかつい確認してしまう18
「プレゼントフォーユー」
「For me?」
上着を着ていたとはいえ雨に当たったアマンダさんと交互にお風呂に入った。
アマンダさんはもうすっかり風邪が治ったらしく、フコのおかげだと言ってくれてちょっと照れる。アマンダさんの病気が例の疫病じゃなくてよかった。
そんな感じで夕食の時間までちょっと暇になった私は、買っておいたお土産をアマンダさんに渡すことができたのである。
ドキドキしながらアマンダさんの反応を見守る。
普段プレゼントなんてしたことなかったから、今更自分のチョイスが正しいのか心配になってきた。やっぱりお菓子が届くのを待って無難な感じにした方がよかった気がする。でも疫病の件があってお菓子が届くのも遅くなるって言われたしなあ。
テーブルにいくつか並べたアクセサリーを見ていたアマンダさんが、手を伸ばした。
「I like this one」
「キター!!!!」
おっさん!!
信じてたよおっさん!
信じてたよアマンダさん!!!
「やったー!! 絶対アマンダさん気に入ってくれると思ったんだよー!! でもこれおっさんでしょ? いやおっさん気に入るってどうなのかとかさーおっさん嫌いだったらどうしようとかさー!」
思わずテンションが爆上がりしてしまい、おっさんブローチを持つアマンダさんの手を握りながらまくし立てる。アマンダさんはぽかんと見ていたけれど、テンションだけは伝わったらしくアマンダさんもテンション上げて反応してくれた。
アマンダさんが「風邪で寝てる時ちょうどこういうおっさんが出てきた」みたいなことを言っていたような気がしたけれど、早口だったんで多分私の聞き間違いだと思う。でもなんか面白い。
「おっさん!」
「Awesome!」
「おっさん!!」
「Awesome!!」
ルルさんが「そろそろ」と私たちを夕食に促すまで、私とアマンダさんがおっさんコールをする周りをニャニがダバダバと回り、三姉妹が微笑ましくそれを見守り、ルイドー君が気持ちの悪いものを見る目で眺めていた。
アマンダさんはちょうど私が寝てる間に起きて、私が変な時間に寝ているので風邪が感染ったのではないかと思っていたらしい。ジュシスカさんが疫病だとわかったときに軽く説明のメモを三姉妹経由で渡してもらっていたのだけれど、私のことを全然書いてなかったので心配したと怒られた。なんか嬉しい。
三姉妹が私のことを説明しようとあれこれ頑張ったものの通じず、奥神殿へ行こうとするアマンダさんにサカサヒカゲソウを見せて「疫病が流行っているので量産してほしい」という説明をするも通じず。
でもアマンダさんは日頃薬草を育てていること自体は知っていたので、薬草片手にあれこれ言っている三人をみて「よくわからないけれど薬草がいっぱい必要なのかな」となかなかいい具合に解釈してくれたらしかった。
奥神殿だと運搬が面倒だし量も限られるのでまず部屋で増やしてみたら大変なことになり、もっと広い場所を探して中庭に降りたらいい感じにできて、そして私が目撃したあのシーンにつながったようだ。
改めてジュシスカさんがサカサヒカゲソウを必要とする疫病にかかったこと、それで頑張って量産していたこと、だからアマンダさんが大量に育ててくれて感謝していることを伝えると、よかったと言うようにアマンダさんが頷いて笑顔でお肉を頬張った。
「それにしてもすごいお力でしたわ」
「ええ、圧倒されて動くことすらできませんでした」
「前にお聞かせ頂けたときもそう感じましたけれど、さらに強いお力を出せるとは」
シュイさん、ミムさん、リーリールイさんの三姉妹は、料理の準備などはテキパキやっていたけれどまだ夢見るような顔をしている。
「みんな聴き入ってたもんね」
「そんなものではありませんわ。あの場にいたものはすべて、神の御力が身体に満ちるのを感じたことでしょう」
「私たちもより大きな力が満ちているのがわかります」
「へえ、なんかすごいね」
三姉妹とは裏腹に、ルルさんとルイドー君はそれほど嬉しそうな顔をしていない。訊ねるとルルさんは「警備の面で難があるかと」と困った顔になり、ルイドー君も頷いていた。神殿騎士的には嬉しいだけではないようだ。
「シュイさんやルルさんたちは元々力が強いんだよね。弱い人でも同じようになると思う?」
「あれほどの御力でしたら、恐らくは」
「普段力が見えない者ほど圧倒されるかもしれませんわ」
「そっか。ルルさんみんな動けないようになるんだったら、ある意味安全じゃない?」
私が言うとルルさんは「そういう問題ではありません」とお説教モードに入ってしまい、ルイドー君にこっそり睨まれた。確実にそうなるとは限らないし、脅威は人だけとは限らないらしい。はいすみません。
「ともかく、サカサヒカゲソウを沢山作っていただけて本当に助かりましたわ」
「明日一日は天日に当てたいのでお祈りはお休みいただきたいのですが、アマンダさまもお許しいただけるでしょうか?」
「お願いしてみるね」
私たちの会話を聞きながらデザートを食べていたアマンダさんに説明すると、快く頷いてくれた。地球に帰りたいのは確かだけど、病気の人たちのためならいくらでも遅らせて大丈夫という言葉は、シュイさんたちに伝えるとものすごく喜んでくれたし、私もすごい感動してしまった。
「アイラブアマンダさん……」
「Oh, I love you too, Rio」
「えへ……えへへ……」
アマンダさんの歌の凄さには圧倒されるし、時には複雑な気持ちになるけれど、アマンダさん本人がすごくいい人なので全然憎めない。というか、好き。優しい。なんかいい匂いする。
ハグしあってデレデレした私を、ルルさんが冷たい顔でアマンダさんから剥がした。




