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フリータイムでも何時に入ったかつい確認してしまう11

「うーん……」


 右手には、ピンクのタンポポっぽい花に囲まれたバクのブローチ

 左手には、片手にコップ持ってる謎の小人っぽいおっさんのブローチ。

 どっちも七宝焼きみたいなツルッとした焼物だ。


「こっ……いや、こっち……やーでもなー……」


 いや、わかっている。

 お土産にするならどう考えても可愛いバクの方だろう。バクの黒い体の部分が若干ラメっぽい光沢があってキラキラしてるし、よく見たらタンポポの茎を食べているところのヌーちゃんっぽさもなんかイイ。色合いも素朴すぎなくて好き。


 でもこのおっさんブローチ、なんか訴えてくるものがある。

 着ているのが辛子色っぽい色の服だし、なんか左の袖が微妙に色が違うのが酔っ払ってなんかこぼしたおっさんみたいに見えるし、靴が左右で違うのも意味がわからないのに。

 でもなんか表情といい、ポーズといい、訴えてくるものがある。


 私の直感が「絶対アマンダさんこれ気に入るって」と大穴狙いの囁きをしてくる。

 私の理性が「いや、ないでしょ。これお土産って嫌がらせかよ。アマンダさん風邪引いてるんだよ」とまともなことを言ってくる。


 アマンダさんとデザインや色の好みを話し合ったことはない。というか、何が好きとかよくわからない。料理なら好きなメニューをいくつか知ってるけど、あとは動物好きということくらいしかしらない。

 だからおっさんブローチはかなりのリスクが伴う。伴うというのに。


「これ……アマンダさん気に入ってくれないかなあ……」


 私は何を冒険しようと思っているのか。


 もう十五分くらい悩んでいるので、ルイドー君の視線がどんどん冷たくなっている。そして「なんでそれなんだよ」と目で言っている。わかる。私もそう思う。

 なんでだろう。私自身がおっさんブローチを気に入ってしまったからそう思えるだけなんだろうか。でも気に入りそうな気がしてしょうがないのだ。


「リオ」

「いやそうだよね……こっ……ちにする……」


 バクも可愛いんだけど、すごい可愛いんだけども。これだってきっと喜んでくれると思うんだけども。

 こっちを選ぶと言った私が断腸の思いだとルルさんには伝わったらしい。


「これは小さいですしさほど高くはないですから、両方買ってはいかがでしょうか?」

「えっ」

「アマンダ様も両方お気に召すかもしれませんよ。この大きさであれば、一緒に付けてもそう目立ちはしませんし」


 酔いどれおっさんとヌーちゃんを両方飾るアマンダさん。

 かなりすごい構図だけど、私以外にそのビジュアルを思い描いてくれる人がいたとは。やっぱりルルさんはすごい。


「そうだよね……アマンダさん、きっと喜んでくれるよね」

「リオがこれほど心を込めて選んだものですから」

「本当にそのおっさん買う気かよ! せめて他のやついくつかも混ぜて選んでもらったほうがいいんじゃ」


 ルイドー君が、ルルさんに睨まれつつも助言してきた。黙っているけれど、ジュシスカさんも若干頷いたのを私は見てしまう。

 やっぱりおっさんはチョイスとして疑問が残るものらしい。


「他か……でもそんないっぱい買うのもねえ」

「リオ、ルイドーの言葉に従うことはありませんが、同じようなものであれば大体三つほどでフコ二十個分ほどの値段ですよ。さらにご自身の分を買っても金銭的には気にするほどではないかと」

「安っ……いのかどうかは分からないけど、気軽な値段だ!」


 奥神殿カラオケでいくらでも量産できるせいか、フコ換算にされると安く感じる。買い過ぎてもまた育てればいいか的な気にさせてくる。


 結局もうちょっと時間をかけて、自分のも含め他にもいくつか可愛いものを選び私は満足顔、ルルさんはにこにこ顔、ルイドー君はうんざり顔、ジュシスカさんは憂い顔でお店を出ることになった。


「やーやっぱり買い物楽しいねえ」

「それは何よりです。次の店にも土産物はありますから、ぜひ選んでみては」


 ルルさんがそう言って案内してくれたのは、ちょっとオシャレな感じのカフェだった。

 買い物のあとのお茶。完璧な布陣である。






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