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フリータイムでも何時に入ったかつい確認してしまう10

 いつもの白っぽいシンプル服から、薄ピンクに染めた服へと着替える。

 小さな小花の刺繍が付いているワンピースは、色は可愛いけれど布はいつもの服よりもちょっとごわついている。町娘風って感じだろうか。

 その上からマントを着せ、フードをしっかりと被せたのはもちろんルルさんだった。


 「力」の強いルルさんやエルフの人たちは、同じく力の強い人がオーラっぽく見えてわかるらしい。異世界人である私は力がものすごい強いらしく、フードを被ってもすぐにバレるけれど、人間だとわからない人もいる。

 フードはあんまり効果はないけど、それでもできるだけ目立たないようにという気遣いだ。


「ジュシスカやルイドーも一緒ですから、不届き者に手出しはさせません」

「頼もしいねえ」


 ルルさんたちが数日前から考えて選び出したルートとお店なので、そうそう何かが起こるとは思えないけれど、守ってくれるのはありがたいことだ。

 ルルさんはもちろん、ジュシスカさんもルイドー君もしっかりと剣を身に付け、マントの下には鎧も着ている。


 ルルさんもジュシスカさんもすごく強いし、ルイドー君だって期待のホープである。例え誰かが襲ってきても負けることはないだろう。

 物陰からすっと出てきたニャニも、意気込みは十分そうだ。


「……いや、ニャニは留守番してて。アマンダさんのそばにいてあげて」


 神獣だし、青いワニは街中でめっちゃ目立つ。

 あとニャニがシャーッとやってると私が怖い。

 お土産買ってくるからと約束すると、ニャニは渋々といった感じでゆっくりと歩いていった。

 アマンダさんはあのビジュアルを撫でていたので、きっとアニマルセラピー的にいい感じに癒される、かもしれない。多分。きっと。


 そんな感じで、私たちは神殿から出発した。

 中央神殿の正面の出入り口ではなく、側面にある小さめの通用口を使って出る。道も祭りの時に通った大通りではなく、その隣に伸びる細い道だった。人通りがないわけではないけれど、通る人とは十分に距離がある。


「すぐそこですが、疲れたら遠慮なく言ってください」

「言ったらどうなるの? 帰る?」

「私が背負います」

「それめっちゃ目立つと思う」


 そしてルルさんがすぐそこと言った通り、本当にすぐそこだった。

 徒歩5分。

 疲れるわけない距離だった。


 神殿で悠々自適な暮らしだけど、奥神殿ではカラオケしながら結構動いているので流石にそこまでなまってはいない。ルルさんには私がどう見えているというのか。

 若干の疑念を抱きつつ、私たちは木製の小さな扉を潜った。


「ようこそいらっしゃいました、救世主様」


 丁寧に出迎えてくれたのは小柄で、金髪に白髪混じりなおじさんである。私たちが入ったのは裏口で、正面は大通りに面しているお店らしい。

 箱が積み上がった通路を歩いて二階へと案内される。小さな部屋の中で目に入ったのは、様々なアクセサリーだった。


 色とりどりの宝石が散りばめられたもの、ごく細い針金の花、掘られた生き物。刺繍や編んだものもあった。大きさは手のひら大のものから、親指の爪ほどの小さなものまで。

 壁沿いと中央にテーブルが置かれ、そこに沢山の商品が並べられている。


「どうぞごゆっくりご覧ください。何かございましたら、お気軽にお申し付けくださいませ」


 おじさんは礼をすると、私たちを残して部屋から出ていってしまった。四人入った時点ですでに部屋がぎゅうぎゅうだったというのもあるし、私たちが気を遣わないでいいようにというのもあるかもしれない。


 なんかあれっぽい。

 高級ジュエリー店で別室に通されるセレブ的な。


 高級ジュエリーというよりは素朴な雑貨屋さんという感じだったけれど、それでも十分特別扱いだとわかった。この部屋は本来接客用ではなさそうなので、私とアマンダさんのためにわざわざ用意してくれたのだろう。


「この店の細工は、街でも一番人気があります。もしお気に召したものがありましたら包んでもらいましょう」

「一番人気なら高いんじゃない?」

「私はそれほど甲斐性なしではありませんよ」


 にっこりとルルさんが笑った。

 いやそれは高いという意味では。


「冗談です」

「冗談かー」

「リオやアマンダ様の働きに応じていくらか神殿から報酬が出ていますし、手頃なものも多いですよ」


 ルルさんによると、高級なものもあるお店だけれど、ここに並んでいるのはそれほどでもないものが多いようだ。


「その方がリオも選びやすいかと思いまして」

「確かに。じゃあアマンダさんにお土産買って帰ろう」


 流石の気遣いだった。

 高いものだと触るのもなんか怖いけれど、これで安心だ。

 並んだものの中には、小さな動物と花があしらわれたシリーズや、花で作られた家などいろんなモチーフがあって楽しい。

 神殿では見ないようなものばかりだし、日本で働いていた時もこういうアクセサリーを見ることがあまりなかったので新鮮だった。


「ぜひ手にとってお選びください」

「うん」


 店員さんっぽいセリフを言ったルルさんに頷いて、私はいろんな商品をじっくり見て回った。






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