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フリータイムでも何時に入ったかつい確認してしまう9

 今日もいつも通り起き、いつも通り食べ、いつも通り歌って。

 戻ってくると、シュイさんミムさんリーリールイさんが、心配そうに私を待っていた。


「アマンダさんが風邪?」

「ええ、おそらくは……疲れが溜まったところに、昨日も無理をされて……」

「あらら」

「申し訳ありません、我々もお止めしたのですが」

「いやいや、ミムさんたちのせいじゃないって」


 もともとちょっと頑張り過ぎな感じで奥神殿カラオケへ通いつめていたアマンダさんである。シュイさんたちは言葉が通じるわけではないので、止めようと思ってもジェスチャーか実力行使くらいしかない。


「まあ、ゆっくり休んでもらえる良い機会……かもだけど、でも今日ってあれだよね」

「はい、お出掛けになる予定でした」

「完全に街中というわけではありませんが、神殿の外へ」

「アマンダ様も楽しみにしていらしたのに……」


 そう、前から予定していた、街中を散歩してみようの日である。セキュリティ的な問題があるので神殿近くで貸切として使えるお店しかダメだったけれど、私たちにとっては忘れ得ぬ思い出になる、ハズだった。


「アマンダさーん、アーユーオーケー?」

「Rio」


 一応他の病気だと困るので様子を見に来ると、アマンダさんが壁に備え付けられたベッドで寝込んでいた。ゲホゴホズビズビと辛そうな音が聞こえる。

 これはどう見ても風邪。素人ながら間違いなく風邪。アマンダさんも自覚はあるようで、感染るからちかよらないほうがいいよ的なことを枯れた声で言った。

 いわく。


「つい油断した的なことと、気にしないで出掛けてお土産買ってきてってのと、蜂蜜レモンが飲みたいって。蜂蜜と絞ったレモンにお湯入れたやつ」

「なるほど、わかりました。すぐに我々でお運びしておきます」


 三つ子姉妹は、頷いて早速準備にかかった。残された私とルルさんはお互いに顔を見合わせる。


「どうしようルルさん、せっかくアマンダさんも楽しみにしてたんだし、延期してもらう?」

「しかし、アマンダ様はリオだけでも出掛けてほしいと願ったのでは? 土産を所望されたのであれば神殿に取り寄せることもできますが、あとでリオが気兼ねして出掛けなかったと知ると、アマンダ様としても気をお使いになるかと」

「うーん、確かに」


 私が逆の立場だと、お出掛けがなくなってしまったら気まずくておちおち寝ていられない。風邪で落ち込んだのに、ますますテンションが下がってしまうことだろう。


「リオ、まず今回は下見も兼ねての外出だと思われては? アマンダ様が回復されたのちに、再びお出掛けになられたら良いのではないかと」

「なるほど」


 出掛ける先は、私たちが来るということで貸切にしたりしてもらっている。そういう意味でも、ドタキャンするのは良くないかもしれない。

 見上げると、ルルさんが微笑んでいる。


「じゃあ、出掛けようか、ルルさん」

「はい、リオ」


 こうして唐突に、ルルさんとふたりで出掛ける機会が巡ってきたのである。


 今まで神殿の外に出かけたのは、お祭りの何日間かだけである。たまにルルさんやフィデジアさんたちが街で売っている食べ物を食卓に出してくれたりしたけれど、なんやかんやで出掛けることはなかった。アマンダさんの息抜きと思い出作りをメインに立てた予定だけれども、私もそこそこ楽しみだった。


 なんかデートみたいだな。

 そうちらっと思ったら照れたので、ニャニの背筋に生えたトゲトゲを数えた。






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