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フリータイムでも何時に入ったかつい確認してしまう5

「あら、また上がり」

「?!」

わたくしも」

「私もよ」

「……再戦を要求します……」


 団体戦要素もちょっとあるすごろく的な遊びは、シュイさんミムさんリーリールイさん三姉妹の驚異的なサイコロ運を目の当たりにする場と化した。負けず嫌い王であるジュシスカさんもかなり善戦しているのに、圧倒的な幸運を前に敗北を続けている。


「おい何度やる気だよ! もうこれで最後って言っただろうが!」

「一勝もせず諦めるなど騎士の名折れ……」

「折れとけ!!」


 結局付き合いで参加し続けてくれているルイドー君がとうとう切れてしまった。どしっとジュシスカさんの背中に足跡がついてしまったけれど、ジュシスカさんは全く気にせずに次の勝負へ向けて集中している。


「あああルイドー君、落ち着いて……あのほらジュシスカさん、オセロで勝負したらどうかな。ねっ、あれだとほら、運より実力要素が強いし、やってない人は休めるし」

「まあリオさま、それはどのような遊びですか?」

「とっても楽しそう」

「ぜひやりたいわ」


 ジュシスカさんはいつもの憂い顔にプラスして若干口をへの字にしたものの、三姉妹が乗り気になったので渋々了承してくれた。ルイドー君ほどではないものの、私も飽きてきていたのでホッとする。ルールを説明して、最初はジュシスカさん対三姉妹でやるようだ。


「アマンダさん、ティーのむ?」

「Yeah, thanks」


 ソファへと移動し、同じくジュシスカさんの頑固っぷりに欧米的な表情の豊かさで呆れていたアマンダさんとルイドー君の三人でほっと息をつく。ニャニは3メートルの距離でそっと口を開け、アマンダさんからマドレーヌに似た焼き菓子を貰っていた。ヌーちゃんもお菓子チェックに現れ、私の膝の上で物言いたげに見上げてくる。そんな可愛い目線をしてもポテチはない。


「あいつほんっと変わってねーな。あの頑固さでどれだけ子供を遊びに付き合わせてきたか」

「あぁ……うん」「俺は強いフィアルルー様と遊びたかったのに、誘ってるとどこからかジュシスカが現れてさ……」


 はぁーと深い溜息を吐いたルイドー君は、幼い頃にあの頑固さに嫌という程付き合わされたそうだ。彼の育った西の小神殿では一時期、子供たちが遊ぶのを嫌がって率先して掃除やお遣いをやるほどだったとか。どちらが子供かわからないではないか。ルイドー君に思わず同情してしまった。


 ルルさんがフィデジアさんと共にどこか用事に出掛けてから、だいたい三時間くらいが経った。まだ夕食には早いけれど、同じ遊びを続けるには長い時間である。

 アマンダさんは果敢にもニャニとのコミュニケーションを図り、オヤツをあげながらお手やお座りを鑑賞している。その意気でもっと仲良くなって頂きたい。


「ルルさん遅いねえ」

「もうしばらくしたら帰ってくるだろ。日暮れまでには戻ると思うぞ」

「どっか出掛けてるの?」


 ナッツをポイっと口に入れたルイドー君はルルさんたちの用事を知っているようだ。聞き出したかったけれど、サッと手で制される。


「フィアルルー様がお話しするまで待てと言っただろうが」

「ちょっとくらいいいじゃん。何系? 買い物? シーリース関係?」

「言わないからな」

「ルルさんにチクったりしないから」

「お前顔に出るから一瞬でフィアルルー様にバレるだろうが」


 私に余計なことを言うと護衛の合間に課せられている鍛錬がより厳しくなるそうだ。手合わせならまだ楽しいけれど、床拭きや雑草引きなどなのでやりたいものではないらしい。

 私もそこまで知りたいわけではないので、諦めてオヤツを食べる。

 クルミに似た殻のあるナッツは炒られていてまだ温かく、食べるとホクホクした食感で美味しい。結構好きな味なので、夕食に響くほど食べてしまいそうな誘惑に打ち勝つのが大変だ。ルルさんが帰ってくる気配がまだないから、あと一個だけ。を、すでに3回繰り返している。


 勝つ気満々のジュシスカさんと飽きずに相手をしてくれている三姉妹、疲れてソファに背を預けているルイドー君、ヌーちゃんとオヤツを分けている私。


 みんなの動きが止まったのは、美しい歌声が部屋の中に響き渡ったからだった。






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