フリータイムでも何時に入ったかつい確認してしまう4
アマンダさんは、こちら式の祈りを気に入ったようだった。言葉がわからないながらも褒めていて、巫女さんたちにもそれが伝わったようで嬉しそうにしている。
小さい女の子の巫女さん2人が両側からしがみついて一緒に祈ろうと誘っているけれど、アマンダさんは首を傾げている。通訳が必要そうだなと思ったところで硬い声が聞こえてきた。
「フィアルルー」
やってきたのはフィデジアさん、ルイドー君、ジュシスカさん、ピスクさんの4人だった。フィデジアさんは私に礼をしてから、ルルさんに何か耳打ちする。小さく頷いたルルさんが、私に微笑んだ。フィデジアさんは、まとめ役の巫女さんにも何か話をし始めた。
「リオ、申し訳ありませんが少し席を外すことになりました。アマンダ様と共に部屋へお戻り頂けますか?」
「いいよー」
これはなんかあったな。
責任感と心配性のハイブリッドであるルルさんである。「少し」な理由で護衛を他の人に任せることはない。他の神殿騎士の人たちが勢揃いしているのも、なんだか物々しい感じがした。
「アマンダさん、ウィー、ハフトゥー、ゴー、アワールーム」
「Already?」
アマンダさんは手を握ってくる巫女ちゃんたちともうちょっと遊びたかったようだけれど、勢揃いの様子を見て頷いてくれた。女の子たちのほっぺをくりくりっと指でくすぐってからやってくる。
「ごめんなさい、帰らなきゃいけないみたいなので、また今度改めて来ますね」
「リオさま、どうぞお気になさらないでくださいませ」
「つぎはみんなでお祈りしてくださいー!!」
「いつでもいらしてくださいませね」
挨拶をすると、巫女さんたちが見送ってくれた。小さな巫女ちゃんたちが「みんな」の中に私も入れている気がしたけれど、気付かなかったことにして部屋を出る。ルルさんたちに加えて、シュイさんたち三姉妹も一緒についてきていた。
「リオ、フィデジアと私はしばらく離れます。私が戻るまでは奥神殿へ行かず部屋でお過ごしください」
「はーい」
「アマンダ様にもそうして頂きたいのですが、もし叶わぬ場合は三つ子に送迎を任せてリオは部屋でお待ちください」
「了解ー。2人ともいってらっしゃーい」
ルルさんもフィデジアさんも微笑んでいたけれど、反対へと歩き出した瞬間に顔が騎士の顔になっていた。
ピスクさんも険しい顔、なのはいつもだし、ジュシスカさんも通常営業の憂い顔である。まあある意味仕事モードといってもいいのかもしれない。一番柔軟な表情筋をしているルイドー君も、キリッとした顔で気を張っているようだった。三姉妹はいつも通り柔らかな笑顔で、アマンダさんに組紐を褒められて言語を超えてキャッキャしていた。
「ねえねえルイドー君」
「詳しいことは後でフィアルルー様が説明するから待ってろ」
「洞察力がすごい」
私の左側に立っているルイドー君が、フンと鼻を鳴らした。その右手は自然に降ろされているけれど、反対の手は剣の鞘を握っているようだ。
「お前が顔に出しすぎなんだよ。別に身構えるほどのことでもないから安心しろ」
「えーほんとに? この状況で?」
「危険が迫ってたら、フィアルルー様はリオたちを祈りの間に放り込んでから行くはずだろ」
「確かに」
つまり、避難させるほどの事態ではないけれど、ルルさんが対応するレベルの状態ということらしい。またシーリースの人たちが襲ってきたとかなのかな。
どちらにしろ、私にできることは大人しく部屋に引きこもるくらいである。
「じゃあ8人で待機か……ちょっと難しいかもだけどトランプがいいかな。オセロは2人でしか遊べないからなあ」
「オイ、お前俺らのことを暇つぶしの相手だと思ってないか?」
小突かれ、背後からシャッと音が聞こえてきたので2人して佇まいを正す。
部屋につくとピスクさんはドアの外で見張りをすると言ったので、結局遊べるメンバーはアマンダさんとルイドー君とジュシスカさん、そして三姉妹の7人になった。ジュシスカさんがどこからかすごろくみたいなものを持ってきたため怒ったルイドー君が蹴りを入れ、スッと避けられてしばらく攻防していた。
アマンダさんが肩を竦め、三姉妹がにこにこし、ニャニが離れた場所で手を上げる。
割と通常営業で平和だった。




