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グリーンベッドジャンパーズ  作者: 裏側の飛鳥
第一章 緑の大地へ
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2話 この世界。

あらすじに書いたことを細かく書いた、いわゆる説明回です。

 ルヴンヴァルト王国。


 はるか天空までそびえる大樹の根元に興された国家である。初代統治者、エルゴ・ルヴンヴァルトからその名を受け継ぎ、現在にいたるという。かつての隆盛を思わせる王宮が今も国家の主要施設として利用されており、王都周辺の街並みは石と木を組み合わせた建築物でおおよそ統一されている。


 国の象徴ともいえる大樹は国教の信仰の対象で、国土は大樹を中心にほぼ円形に広がっており、そして寸断されている。これを『断崖』と呼んでおり、今現在も少しずつ崩れ続けているため、許可のないものの立ち入りを禁じられている。断崖の先にははるかかなたまで続く『グリーンベッド』と呼ばれる緑の大地が広がっている。


 要約すると、この国は大樹の根の脚に大地の天板がついたテーブルのような形をしている。


 なぜこの形になったのかは文献も何も残っておらず、少なくとも現在のような知的財産を残せるようになった約二百年前より以前に起きた、何かが原因であるだろうというところで王宮の研究は止まっている。この国土の狭さが人口増加に圧迫され、国家が民の生活の困窮に対応できなくなり『大開拓令』を出すきっかけとなった。これは貴族や平民にかかわらず、断崖の先に広がる下界を開拓した者には報奨金を出すというものだった。


 十年ほど前まで研究者の間では大樹の成長が大地ごと持ち上げたのでは、という仮説が主流であり、大地は下界までつながっているものとされていた。しかし、初期落下傘降下組の前後で断崖を伝って下界の様子を探りに行った探検家、グリッチ・ストラストのスケッチによりこの仮説は覆される。断崖を降りていくと断崖もまた途中で寸断されており、ロープで垂れ下りつつ断崖の裏を覗くと、そこには太くはなっているが大樹の幹ではなく根が張り巡らされていたという。そして、その根の隙間から、複数の石造りの遺跡のようなものが覗いていたという。


 先発した落下傘降下組が着地した先からは焚火の煙が上がっており、落下傘の成功に国民は沸き、それに続く者たちが続出した。しばらくの間、一攫千金を目指した者たちで落下傘降下は流行したが、次第に焚火の煙は上がらなくなっていく。残された家族は焚火の煙だけが安否のよりどころであり、断崖周辺の物見台は祈る家族たちでひしめいていた。


 しかし、祈りもむなしくやがて煙は一つも上がらなくなった。


 それからほどなくして、探検家グリッチにより発見された遺跡と同種のものと思われる入口が国内の数か所にあることが判明し、下火となった落下傘降下に代わるように遺跡の発掘調査が行われるようになった。一部の物好きしか入りこむことがなく研究対象とされてこなかった遺跡だったが、大がかりな探検隊が組まれるとその内部があまりに複雑で奥の深いものであることがわかり、下界の遺跡に通じている可能性が高いことから、これら遺跡の発掘調査を進捗に応じて『大開拓令』の報奨金の対象とする旨のお触れが出る。落下傘をあきらめた者たちがこぞって遺跡探検に名乗りをあげるようになった。


 遺跡の発掘が始まって間もなく、各遺跡にそれぞれ同様の開かずの扉が発見された。その仕組みはあまりにも強固であり、ここで初めて王国が介入することとなる。直属の魔法使いたちによる数日に及ぶ調査の甲斐もあって、その一つが解錠される。しかし、解錠した扉の向こうには動物というには異形すぎる怪物たちが待ち構えていた。いわゆる魔物たちとの戦闘経験のない探検隊は次々に命を落としていくなか、数名を残して魔法使いが辛くも扉を再封印することで事態は一時的な収束を見る。この一件から、探検調査は全面的な一時中止を余儀なくされたが、ほどなくして探検隊は傭兵を雇い再び扉の向こうを目指し始めた。


 そして十年。探検家は冒険家とその名称を変え、冒険家たちは『ギルド』を結成し、明日失うかもしれぬ命に保険をかけ今もなお遺跡の探索を続けている。人々は皮肉と愛着をこめて、はるか断崖の先、グリーンベッドへ続く出口を目指す命知らずの冒険家たちを、初期の落下傘組になぞらえて『グリーンベッドジャンパーズ』と呼ぶようになっていた。

前置きはここまで、次回から本番です。

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