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live  作者: 皐月 悠
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出会いと指輪『5』

帰宅してからベッドに倒れこみ、指輪を触りながら状況を整理してみる。

なんだか今日はいろいろあって疲れてしまった。

美空は、彼女の事が好きだろう。では、優香は美空の事が好きなのだろうか?

「んー…」

ごろごろ転がりながら考えてみても答えがでない。好きか嫌いかという極端な二択なら好きだと断言する事ができる。でも、私が知りたいのは友情や愛情ではなくて、つまり、触りたいと思うような恋愛感情を美空に対して抱いているのかどうか、だ。

テレビで専門家が、「友情は親が子供に対して抱く愛情に続く感情」と言っていたけれど、恋愛感情もそうなのだろうか。ある本で恋愛感情は、愛情を学ぶための試練で、恋という感情には賞味期限があるらしい。

「……」

分からない。

「質問してみなければ分からない事に、答えを出そうとしても無理」と冷静な自分が言う。それに対して、何も返す事ができない。

「うー…」

なぜ気になり始めると、思考の迷路の中に入り込み出口がないのにさまよわないといけなくなるのだろう。

漫画の登場人物でよく見る相関図を頭の中に描いてみる。

私と美空と彼女の三人の関係に矢印をひいてみて、今更な事に気が付いた。

「あれ、三角?」

誰がどう見ても三角関係だ。

「……」

ため息を吐き出す。

今まで私にとって三角関係なんて、漫画かドラマの中での話で、自分とは遠いところにあるものだと思っていた。遠いところにあると認識していたからこそ、話の展開が面白いと安心して楽しんでいたのに…もう今日はその事を考えないようにしよう。

気分を切り替えるために風呂場に向かった。


シャワーを浴びてもどってくると、スマートフォンにメールが届いた事を知らせるライトが点滅していた。

メール画面を開いてみると彼女からだ。

「今日はありがとう」というお礼と、「またお茶しよう」というお誘いのメールだった。

しばらくなんて返信しようか迷い、ありきたりな「こちらこそありがとうごあいます」というお礼と、来週の同じ曜日を提案して送信する。

数分待ってみたが返信がないようなので、LINEと同じように既読を確認しようとして、メールにその機能がなかった事を思い出す。

「何しているんだろう」

苦笑を浮かべて私は充電器にスマートフォンを差し込むと、わざと視界にはいりにくいコンセントに入れて充電した。


露店の店主、優香は自分の部屋で携帯に視線を向けた。

「あれ、メールがきている」

露店から帰宅して一通りの家事をすませ、自分の部屋にもどってきた私は、携帯電話がチカチカ点滅している事に気が付いた。

開いて確認すると、今日露店で指輪を買ってくれた子からだった。来週の同じ曜日はどうですか?というお誘いのメールだ。帰宅してすぐにメールしないと、今みたいな時刻になってしまうから、あれからすぐにメールした。受信時刻を見るとあれからすぐに返信してくれたみたいだ。

時計を見上げて、しばらく返信しようかどうか悩む。

現在時刻、22時。

私の感覚ではまだ深い時間ではないし、あと二時間は起きている事が多い。だが、一般常識的にはアウトだろうか。悩む間にも確実に時計の秒針は時間を刻み続けている。

明日メールを返信する事して、携帯をバックの中に放り込む。

あまり携帯を使用しないので、毎日充電しなくてもすんでしまっている。

休日は露店をだしているか、作品を創作しているかで、携帯電話を携帯している習慣がない。

アクセサリーケースに入っている自分の作品の指輪に視線を向ける。

創作したものはすべて売りに出しているのだが、この指輪だけは売りに出す気にどうしてもなれなかった。この指輪には、思い出がつまっている。もう一つ指輪が入りそうなスペースが隣にあいていて、どこか寂しそうに見えた。

「……ごめんね」

この指輪の相方は売りに出してしまった。

自分の気持ちに区切りをつけるためだ。

私は、自分で創作したものではないアクセサリーの指輪を隣に置いた。


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