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live  作者: 皐月 悠
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想い人と首飾り『5』


「よし、これでいいかな?」

数日後の休日の昼間、白いテーブルの上にシャープペンでデッサンしたデザイン画の上にのっている消しゴムのカスをぱんぱんと払った。

これ以上はイジってはダメ、と頭の中に聞こえた経験からくる警告に従う事にする。

あれから、何回かメールのやり取りをしながら、ルカの好みについてあらためて質問する。今回の依頼は、実際に知り合いだからイメージするのもしやすいが、それでも聞いておいて損はない。

視線をアクセサリーケースの中にしまいっぱなしのネックレスに向ける。

作りかけのネックレスは、ペンダンドヘッドの部分がどうにもしっくりくるデザインが浮かばずに時間だけが過ぎてしまったものだ。

いろいろ参考になるかもしれないと、サイトのネックレス関連の画像を見れば見るほどに、思考の迷路の中に迷いこんでしまっていた。

ネックレスを作ろうと思ったきっかけは、手作りの作品を発表する場で、いいなと思う作家さんたちがいて、自分でも作ってみようと思ったのがきっかけだった。美空ではなく、前に付き合っていた人にあげようと思っていたのだが、結果はこんな感じになってしまっている。

贈る相手の事を知っているからこそ、最後までデザインを固める事ができたのかもしれない。

ルカの好みは、服、アクセサリー、バック、髪型、すべてにおいて統一感があり、見ている相手にカッコイイと思わせる。

ガーリーな服装は本人の意思でする事はないと断言する事ができる。可愛いと言われる事に心のどこかで違和感があり、言われてもあまり嬉しそうな表情を見せた事がない。

アクセサリーはいつもシルバーだ。金のようにゴージャスで温もりのある色よりも、銀のように冷たくも冷静な優しさを感じる方が身に着けたいと感じているらしい。細めの指輪よりも太めの指輪で、動物がデザインされているものが好みらしい。

髪型は自分らしいとしっくりくるのを探し求めているらしいが、ロングになる事はあまりなさそうだ。なったとしても肩につくあたりで、ざっくりと切ってしまう事だろう。

携帯電話の写真に撮って、夏美さんに送信する。

テーブルの上に散らかった消しゴムカスを手の平にのせてゴミ箱に捨てる。

飲み物をいれるために移動して、紅茶の茶葉を取り出して紅茶を淹れ、飲みながらテーブルに戻ってくる。温かい飲み物は、春の気配を感じる今でも、ほっと安心感を与えてくれた。

床に数冊ブックエンドでたてて置いてある本の中から、一冊を取り出してパラパラとページをめくる。

アクセサリーには、使用されている素材、デザイン、パワーストーン、色、それらが意味するところもいろいろある。作り手として私は、そういうところも含めてどういう物にしようかといろいろ迷ってしまう。

しかし、いろいろあるから、その意味を含めて考えて贈るのも、いいのだけれど、結局のところ、贈る人が直感で選ぶ事も大切だと感じてしまう。

直感というのもあなどれないものがあって、こんな意味があるからこれが必要と選んでいるわけではないのに、必要なものを選べてしまっている事がある。

メールの返信を告げるバイブがして、携帯を開いてみるとこのデザインのままで、大丈夫だという事だった。ざっくりとした材料費と大体の制作日数をメールに打ち込み、携帯を閉じた。

棚を開けて道具を確認する。

今の注文分は作れそうだが、今日は天気もいい事だし、久しぶりに散歩してみる気になって、私は家を出た。


昼間の公園では、小学校低学年くらいまでの小さい子供たちが砂場や、遊具で元気に遊んでいる。

自販機で飲み物を買って、日向のあいているベンチに座る。

買った飲み物を飲みながら、晴れた空を見上げた。

どこまでも続いていきそうな青空に、絵を描くような雲がところどころに浮かんでいる。

あの時、美空に対して「距離を置こう」と言ったのは、いろいろ思うところがあったからで、嫌いになったわけでもなく、一緒にいたくなかったわけでもなかった。

そう、たとえば、将来の家族のお手伝いをする事や、子供が欲しいと感じてしまったら、とか、自分のバランスを考えるとそこまで稼ぎのいい仕事はどうやら向かないと気づいてしまった事や、いろいろ、いろいろ、迷惑をかける気しか出てこなくなって、あ、美空にとって親しい人間から見たらやめときなさいと止められるのだろうなという気がして、その言葉が口をついて出てしまっていた。

普段はあまり飲まないブラックの缶コーヒーを飲む。

いっその事、こういうのを全部考えずに、自由に恋愛を楽しむ事ができたら、いいなと思いはしても、今は、行動にはおこせそうにはなかった。


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