絆
俺は研究所から家に戻ってきた。
なんだかんだ言いながらも姫乃は夕食を作ってくれて、俺はそれを食べている。
「姫乃いつも料理を作ってくれてありがとうな」
「あはは、いいよ別に。
一人分も二人分も作る手間はあんまり変わらないから」
今日はカレーだ。
そしてカレーは俺の大好物だ、子供っぽいと思うかもしれないがカレーが嫌いなやつ位はあんまりいないと思うが、カレーが大好物なやつは結構いると思うぞ。
切ったじゃがいもや人参、玉ねぎ、アスパラ、トマト、牛肉の筋肉なんかに市販のルーを姫乃の秘伝の配合であわせコトコトと圧力鍋で煮込む、普通の鍋だとかなり時間が掛かるが圧力鍋なら煮えるのも早い。
更にご飯を盛ってカレーポットに出来上がったカレーを売れてテーブルへ運ぶ。
付け合せはサラダとラッシーだ。
俺は椅子を引いてテーブルに座ると彼女と、目を合わせて両手を合わせる。
「頂きます。」
「頂きます。」
スプーンでカレーポットからよそって、御飯の上にかけ、福神漬を適当にふりかけると、俺はルーの掛かったご飯をスプーンでよそい、口に運んだ。
「んお?!」
辛かった、それも結構な辛さだ。
「ひ、姫乃、これちょっと辛すぎじゃないか?」
俺は涙目で水を口に入れて辛さを抑えた?
「え、鉄也ちゃん、高校生にもなって辛口まだだめなの?」
姫乃はそう言うが俺は基本カレーは甘口かせいぜい中辛しか食えないほど、辛いのは苦手なんだが。
それは知ってるはずなんだが、なんで辛口なんだ?
「はあ、鉄也ちゃんはいつまでも子供だよね。
でも、あの戸部さんには気をつけたほうがいいよ?」
姫乃がそう言ってくるがカレーが辛いのと戸部に気をつけないといけないのが何か関係あるのか?
「ん、別に戸部は悪いやつじゃないと思うぜ?
なんでそう思うんだ?」
俺がそうきくと姫乃は眉をしかめた。
「だって、なんか鉄也ちゃんにベタベタしてるし絶対何か裏があると思うよ。」
「裏、ねえ、転校してきたばっかりで知り合いが少ないから
たまたま座席が隣だった俺に声が
かけやすいだけなんじゃないか?」
「ううん、そうじゃないと思う、これは乙女の勘だよ」
結構マジな顔で姫乃はいってくる。
「んーまあ、とりあえず気をつけるようにするよ」
「わかればよろしい」
姫乃はにこにこ顔になって、カレーを食べ初めて、辛口に悪戦苦闘してる俺にはちみつのボトルを差し出してきた。
「本当に鉄也ちゃんはしょうがないなぁ」
「そこまで言われるほどか?」
まあ、渡されたはちみつをルーに混ぜて、甘くなったカレーはうまかった。
「うん、やっぱこのくらいに甘いほうがいいわ」
・・・
翌日の放課後俺達は研究所での訓欄をしていた。
「なんか喉が渇いたな、ちょっと自販機コーナーまでいってくるぜ。
ついでに買ってきてほしいなら買っていくるぜ」
まずは美貴姉さんが手を上げた。
「はいはい、私はポカリのデブ缶がいいな」
その次は姫乃だ。
「私はカルピスウォーターがいいな」
ポカリとカルピスか。
「ふむ、私は一緒に行くとしようか。
自販機の種類を見て決めたい」
朧姉さんはそういって俺と一緒にあるき出した。
「了解、んじゃ行きますか」
よく考えると自販機の飲み物をオレ一人で運ぶのは大変だったかもな。
俺達は自販機のおいてある休憩スペースにやってきた。
「んーとりあえずカップの炭酸飲料でも飲みたいかな」
俺は自販機にIDカードを当てて、メロンソーダのボタンを押した。
コップが落ちてきて砕かれた氷とともに、毒々しい緑色の液体がコップに注がれる。
「ん、いや、この人工的な味がたまらんよな」
どう考えても体に良くはなさそうだが俺はすきだ。
アイスクリームを載せてクリームソーダにするとさらにうまい。
「ふむ、君は本当に子供だな」
そう言いながら朧姉さんはカップのブラックのアイスコーヒーを飲んでいる。
「別に苦いものや辛いものが口にできないと子供ってわけじゃないだろ」
俺は苦いものも苦手だ、ブラックコーヒーなんてなんで飲みたがるのかわからん。
「ふむ、鉄也くん、君が鈍感なのは昔からだが、もう少し姫乃くんに
気を使ってあげたほうがいい。
君の父上がなくなったときからかなり無理をしているはずだ。
無論そんなことは君には言わないがな」
「うう、そんなに俺ってだめかな」
「そうは言っていない。
スサノオの生まれ変わりである君の性格が
今のような感じであるのも前世の影響もあるだろう。
だがそれに甘えすぎてはいけないということだ」
「はぁ……すみません」
「それと、最近転校してきたという女の子だが
一応警戒しておいたほうがいい」
「朧姉さんまでそういうのかい?」
「私は当事者ではないので、冷静にいっているつもりだよ」
「うー、分かりました」
そんなやり取りをしてから俺たちは頼まれたものを買って、訓練室へ戻った。
「随分遅かったね?朧さんとイチャイチャしてたの?」
姫乃がちょっと不機嫌になってる。
「いやいや、そんなことはないぞ。
大体朧姉さんと俺はいとこだぜ?」
姫乃はボソリと言った。
「だって従姉妹だって結婚できるもん」
俺を手を左右に振ってないないと否定した。
「朧姉さんは財閥の令嬢、俺はただの一般市民。
ありえねえって」
その様子を美貴姉さんと朧姉さんがくすくす笑ってみていた。
「まあ、喧嘩するほど仲がいいとは言え
人前でいちゃつくのは程々にしておきたまえ」
「い、イチャついてません」
姫乃が顔を真赤にして反論していた。
「俺ははそう言われて嬉しいけどな」
俺の言葉に姫乃は更に顔を赤くした。
「よし訓練を再開するぞ」
「おう」
今日の訓練はそこそこうまくいったぜ。
やっぱり何か煩悩が有ったのかもな。




