穏やかな日常
さてと戸部が転校してきた翌日だ。
”ジリリリリリリリリリリ……”
いつものごとく目覚ましの音で俺は目覚めた。
「ふわー、さておきるか……」
俺は俺はベッドから降りてブレザーに着替え下に降りていった。
台所からは包丁の音が聞こえ、味噌汁のいい香りが漂ってきた。
そして、エプロンを付けた姫乃が俺に気がつくと微笑んで行った。
「あ、鉄矢ちゃん、おはよう。
ごめんね起こしに行けなくて」
「んあ、大丈夫大丈夫。
子供じゃないんだから俺一人でも起きれるぜ」
まあ、たまに遅くまで起きてて寝坊することはあるのは事実なんだがな。
「じゃあ、はやく顔洗ってきてね。
朝ごはんはもうすぐできるよ」
洗面所で歯を磨き顔を洗ってダイニングに向かうとテーブルの上にはぶりの照り焼き、味のりと納豆と生卵、小松菜のおひたしになめこと刻みネギの味噌汁、そして炊きたての白米からホカホカと湯気が立っている。
「おおー、今日もうまそうだな!」
「もちろんだよ」
姫野がエヘヘとはにかんでテーブルに座り、俺もテーブルに座ると彼女と、目を合わせて両手を合わせる。
「頂きます。」
「頂きます。」
そして俺はお味噌汁が入ったおわんを手に取るとズズッと味噌汁に口をつけた。
いい出汁が出てるぜ。
「いつもながら、ちゃんと作った天然だしの味噌汁はうまいよなぁ。
ホント尊敬するぜ」
「えへへ、そうかな、そうかな?。
あ、それとね今日から鉄矢ちゃんの分のお弁当も作ることにしたから」
「おお、それはありがたい。
学食も悪くないけどやっぱ姫乃の作った飯にゃかなわないからな
それに使える小遣いが増えるのも助かるしな」
「それに、もともと私はお弁当だから、そんなに手間は変わらないしね」
「ほんとありがとうだよ、こんな幼馴染を持った俺は幸せものだ
いつも世話になってばかりなのも申し訳ないし、なんか今度手伝えることがあったら
手伝うぜ」
「うーんと、じゃあ、今週の週末の休みの日曜日にお買い物に付き合ってもらってもいいかな?」
「おう、いいぜ。荷物持ちなら任せろ」
「うん、じゃあ、約束だよ」
そんなやり取りをしながら朝食を食べ終わると今日も食器を軽く洗って食器洗浄機に皿などをセットして、洗浄機の蓋を閉めると洗浄機をスタートさせた。
「ほら、そろそろ出ないと、のんびりしてたらまた遅刻するよぉ」
「おっと、じゃあいくか。」
俺たちは一緒に家を出て学校に向けてあるき出した。
今日は昨日より余裕を取ってるから走らなくても大丈夫だろう。
そして昨日戸部とぶつかった所まで来たらちょうど戸部も歩いてきた。
「あ、須王くん、稲田さん、おはようございます」
そういって戸部が頭を下げた、なかなか礼儀正しいやつだ。
「あ、戸部か、偶然だなおはよう」
「戸部さんおはようございます」
そして戸部が小動物のように小首をかしげながら
「須王くんと稲田さんっていつも一緒に登校してるのですか?」
と聞いてきた。
「ああ、俺と姫野はずっとちっちゃいときから隣通しに住んでる幼馴染だからな
学校も一緒だったし、だいたい一緒だぜ」
「そ、そうなんですか。
あのクラスまで一緒に行ってもいいですか?」
なんか一瞬引かれたみたいだが、この島ではそこまでめずらしくないぞ。
「ああ、いいぜ。
どうせ目的地は一緒だしな」
なんか姫乃がむっとしてるんだが、珍しいな、大体のやつには愛想が良いのに。
さて今日も朝のホームルームが終わって勉強の時間だ。
戸部がノートを開き筆箱を開けて中を見たあと困ったようにつぶやいた
「あ……消しゴム……家に忘れてきちゃった……どうしよぅ……」
「あ、消しゴム忘れたのか?
じゃあ今の時間は必要なときは貸すから、休み時間になったら購買に行って
買って来ればいいんじゃないか」
「あ、うん、ありがとう、ごめんね」
「別にいいって、しかし結構そそっかしいところもあるんだな」
「う、うん、治したいとは思ってるんですけどね」
なんか姫乃が「あざとい」とか呟いた気がしたが、気のせいだと思っておこう。
そして午前中の授業が終わって昼休み。
「よーし、飯だ飯だ」
朝に姫乃から渡された弁当をカバンから出して机に置きて蓋を開いた。
飯に梅干し、ミートボールにバターコーンと千切りキャベツだな。
「朝飯は和食なのに弁当は洋食って手間かけてるなぁ」
俺は姫乃をありがたやありがたやと拝んでから箸を箸箱から取り出してくおうとした。
横を見ると、戸部も今日は弁当みたいだな。
「へえ、戸部の弁当持も手作りなんだ、そっちもうまそうだな」
アスパラのベーコン巻きに卵とグリーンピースかな
「え、そ……それほどでもないですよ」
はにかんで答える戸部だが謙遜だろうなぁ。
「さてと、じゃあいただくかな」
俺は早速ミートボールを箸で摘んで口に運んだ。
うん、やっぱ美味しいわ。
戸部と姫乃が何かチラチラ見て来たんだが、なんだ?
戸部はともかく姫乃は同じおかずだと思うんだが。
そして今日も無事授業が終了して放課後だ。
「さて、帰るとするか。
姫乃一緒に行こうぜ」
「うん、今日も多分大変だよね」
戸部が俺に何か話しかけようとしていたみたいなんだが、昨日サボった分今日は大変なんで流石に今日はサボれない、戸部には悪いが俺達は研究所に直行した。
さて、今日もシミュレータで訓練だが…
「畜生、もう、こいつとはやりたくねぇ!」
なんだってオロチの野郎と何度もシミュレータで何度も戦わなきゃならんのだ。
とは言え仮想敵になる相手が少ないから仕方ないんだが。
・・・
訓練も終わって家に帰って部屋のベットに寝転んだとき、ガラケーにメールが来てたのに気がついた。
”須王くんこんばんは。
もし須王くんの都合がつくようでしたら、今週の週末に
お買い物に付き合ってくれませんか。
買い物ができる場所を教えてもらえると助かりますので”
おおう、戸部も買い物かよ……。
”返事が遅くなって悪い。
日曜日は無理だが土曜なら大丈夫だ”
俺がメールを送り返すとすぐに返信が来た
”ありがとう。
それでしたら土曜日の11時に福良バスターミナルで待ち合わせはどうですか?”
福良のバス停か、まあいいかな。
”了解。
じゃあ土曜日の11時に福良バス停だな。
当日はよろしく。”
俺がもう一度メールを送り返すとすぐに返信が来た。
”ありがとうございます
こちらこそよろしくお願いします”
・・・
さて、戸部と約束した土曜日がやってきた。
流石に休みに制服を着て歩くのはどうかということで、ユニクロで買ったマネキン衣装を羽織って俺は家を出た。
バスターミナル前には15分前に到着…と思ったら戸部のほうが早く来てるぞ。
俺は慌てて戸部のいる方へ走っていった。
「す、すまん、またせかたな?」
「あ、私も今さっきついたばかりですから大丈夫ですよ」
気を悪くした風な素振りはなくて助かったぜ。
戸部の服装は若草色のふわっとしたワンピースだな。
「戸部の私服を見たのは始めてたけど、かわいいなそれ、似合ってると思うぜ」
「え、あ、うん、ありがとう」
ま、服装を褒めておいて損はないはずだ。
実際にあってると思うけどな。
「んじゃまあ、行こうか」
「はい、行きましょう」
俺達はバスに乗り込んでしばらくバスに揺られたあとシーパ前というバス停で降りた。
ショッピングセンターSEAPA[シーパ]は
総合スーパーのマルヨシセンター
ホームセンターのコーナン
この2つを中心としてユニクロやしまむらみたいな衣料品や雑貨、メガネや宝飾品などの日用品、100円ショップさらには丸亀製麺みたいなうどんのほか、喫茶店、お好み焼き屋、回転寿司などのフードコートがある小さなショッピングセンターだ。
「ん、さてどうする?
まず軽く何か食べるか?それとも買い物を済ませちまうか?」
「そうですね、ちょっとお腹もすきましたし
何か、軽いものが食べられるところがあるのといいのですが。」
軽いものか…なら丸亀でうどんか、喫茶店ってとこだろうけどどうすっかな。
どっちもフードコートだから距離的には大して変わらないんだが……。
とは言え丸亀うどんってのもあれか。
「んじゃ、喫茶店にでも入って軽くランチでも頼むか」
「あ、はい」
俺たちは喫茶店のドアを押して開けると中にはいった、まあ昼時なのでそこそこ混んでるがそんなに待つほどでもないようだ。
ウエイトレスさんがやってきて俺たちに聞いてきた。
「何名様ですか?」
「二人だ」
「ではこちらへどうぞ」
席に案内されて対面に座るとお冷とお絞りとメニューが差し出されると俺達はお絞りで手を吹いてからそれぞれメニューを開いた。
「注文が決まりましたらお呼び下さい」
そう言ってウエイトレスさんはテーブルから離れていった。
メニュー表の中身は
温かい飲みもの
ホットコーヒー
アメリカンコーヒー
カフェオレ
ミルクティー
レモンティー
ホットココア
ホットミルク
冷たい飲みもの
アイスコーヒー
アイスティー
コーラ
メロンソーダ
オレンジジュース
アップル・グレープフルーツ
・マンゴー・トマト・コーラ
レモンスカッシュ
コーヒーフロート
ソーダフロート
コーラフロート
ウーロン茶
ビール
軽食
トースト
ハムサンド
卵サンド
野菜サンド
クラブハウス
ピザトースト
ホットケーキ
スパゲッティーナポリタン
スパゲティミートソース
エビピラフ
ドライカレー
オムライス
ハンバーグライス、
ポークジンジャー
カレーライス
デザート
いちごのショートケーキ
モンブラン
チーズケーキ
チョコケーキ
アップルパイ
バニラアイス
+ドリンクセット
+ドリンクサラダセット
ま、よくある喫茶店メニューだな、なんとかかんとかフラペチーノみたいなシャレオツなメニューはないのだ。
さて、何にしようかな。
しばらく考えてから俺は何を決めるか決めた。
「戸部は注文決まったか?」
「あ、はい、大丈夫です」
「了解」
俺は手を上げて注文を伝えるためにウエイトレスさんを呼んだ。
「すいません」
「お決まりですか」
「俺はポークジンジャーとメロンソーダ」
「あ、私はホットケーキとアイスコーヒーでお願いします」
「ポークジンジャー一つ、メロンソーダ一つ、ホットケーキ一つとアイスコーヒー一つで
ございますね」
俺達が頷くとウエイトレスさんが厨房にオーダーを通す声が聞こえてきた。
おれはお冷に口をつけたあとで戸部に聞いてみた。
「んで、今日は主に何を買う予定なんだ?」
「えっと、主に雑貨を見てみたいと思ってます。
マグカップとか洗面用品とか」
「なるほど、了解だぜ」
注文したものが出てきたら適当に雑談しながらそれを食っていく。
「そういう雑貨は引っ越しのとき持ってこなかったのか?」
「ん、一応持ってきてるんですけど、
もともと私田舎の何もないところに住んでいたので
せっかくなら新しいものがほしいなぁと思ってるんです」
「ああ、もとの家が古い感じだったんだな」
「はい、家の水は井戸水でしたし、シャワーもなかったですし」
「ああ、それだとたしかに色々新しく必要そうだな」
「ええ、それにきたばっかりだとどこに何があるかわかりませんしね」
戸部が困ったように笑った。
「おっしゃ、じゃ、買い物にいくか」
そしてランチを食い終わって俺達は喫茶店を出て、ショッピングセンター内を並んで歩いた。
「じゃ、まずはここに入ろうか」
棚にいろいろな商品が並べられている、帆布でおられたショルダーバッグやトートバッグ、リュックなどのかばんと、コインケースやキーケース、カードケース、ペンケースなどのステーショナリーグッズ。ベルト、シュシュ、カチューシャ、ピアスやペンダントなどのアクセサリーなどの装飾アイテム、マグカップやグラス、プレートなどのキッチングッズ、石鹸入れ、ブラシスタンドなど洗面用品などなど、
更にはアロマグッズや手芸用品藻並んでるな、店内はオレンジのあたたかみのある照明に照らされ、木什器に商品が並べられている。
「ま、適当に見て回ろうぜ、予算もあるだろうしな」
「うん」
見た目とか考えないで機能性だけ考えるならホームセンターで買った方が安いんだろうけど、まあ、女の子の部屋に置く小物なんだから機能性だけじゃなくて雰囲気とかも重要なんだろう。
まあ、部屋の雰囲気とかがわからんからなんとも言えんけど。
戸部は「あ、コレかわいい」「あ、あれもいいな」「これもかわいいなあ」「このカップすっごく素敵」などとあれこれ見ては棚に戻すを繰り返してる。
そしてやっと絞り込めたのか2つのマグカップを手にして俺に聞いてきた
「ねぇ、こっちの色違い、白と黒、どっちがいいかなぁ」
「ん?戸部はどっちがいいと思うんだ?」
「えーとね、どっちも捨てがたいと思うんだけど、私は白いほうがいいかなって思う」
「ああ、オレもそっちの方が良いと思うよ」
「じゃあ、こっちにするね」
嬉しそうにカップをかごに入れる戸部だが、俺に聞いてきたのは意見がほしいんじゃなくて同意がほしいだけなはずだから、下手に俺の意見など言わないほうがいいのだ。
「この花瓶もいいなぁ」「あ、このボールペンもいいかも」「あ、でもお金が……」
ま、そんなことを繰り返していたらある程度はものは揃ったみたいだ。
「じゃ、そろそろ出るか?」
「あ、うん……」
戸部の視線の先には淡い桜色のシュシュが
「なんだ、それほしいのか?」
「あ、うん、でもお金が……ね」
「それいくらだ?」
「2000円」
意外と高いな……ま、出せない値段じゃないか。
「じゃあ、俺がそのシュシュの代金を出すぜ」
「え、いいんですか」
「こういうのって、またきたときにはなくなったりするからな」
どうもハンドメイドっぽいからその可能性は高そうだ。
「うん、ありがとう」
俺はシュシュを手に取るとレジに持っていって、代金を支払って戸部にそれを渡した。
「ありがとうございます、大事にしますね」
「ま、気に入ってくれたら俺も嬉しいぜ」
雑貨屋を出るともう日がだいぶ傾いていた。
「結構時間がかかったな」
「あ、ごめんなさい」
「あ、いいっていいって、なれてるから」
「慣れてるんですか?」
「まあ、な」
俺が落ち込んでたときに姫乃たちが買い物に連れ回したのは俺を気遣ってのことだと思いたい。
「須王くん、今日はありがとうね、その御礼なんだけど」
「ん、別にいいぜ、困ったときはお互い様ってな」
「あ、うん、でも助かったから。
よければコレ使って」
「スマホ?」
「うん、私が前使ってたものなんだけど、お姉ちゃんが機種変更して
私に機種変更する前のスマホををくれたんだ。
だから結構古いやつだけど十分使えると思うよ」
「スマホかあ……落としたら壊れたりしないか?」
「カバーを付けて使えば案外大丈夫ですよ」
「そっか、ありがとな、せっかくだから受け取っておくよ」
個人的にはガラケーのほうが使いやすいんだが、ないといろいろ支障があるのも事実だし、ちょうどいいかもな。
俺達はバスに乗って家の方まで帰った。
「じゃ、また月曜日」
「はいまたです」
バス停で戸部と別れて俺は家路についた。
あー、なんだかんだで疲れたし家に帰って風呂に入って寝るか……。
明日も買い物に付き合わないといけないしな。