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戸部の処遇

 戦いが終わり戸部は研究所の医療室に運び込まれた。

大きな外傷はないが、脳に大きな負荷がかかったらしく彼女は昏睡状態からなかなか目覚めなかった。

親父たちは戸部の髪の毛などから細胞の構造や組成を徹底的に調査した結果、彼女はオロチの破片とは異なり組織を構成するものは人間と全く同じであったらしい。

CTやMRI、エコーなどで内蔵なども調べたがやはり俺達と同じ構造だったそうだ。

親父は言った。


「残念だが、彼女に関してはこれ以上調べても、

 新たな結果は出てこないだろうな」


 俺は親父の言い草に眉をしかめた。


「残念だがって言うのはなんなんだよ」


 俺の表情の意味はわかってるんだろうがそのあたりは無視して親父は言葉を続ける。


「彼女がアラハバキであればもっと詳しく調べれば

 どのようにしてあのような体を得たか調べることができたろうがな」


 全くもってそうじゃなくてよかったぜ。

せっかく助かったのに人体実験の材料にされちゃたまらねえ。


「でもよ、俺の”電気製品を治すには45度チョップ”で

 戸部が正気を取り戻したから、

 あいつの乗っていたメカは残ってるんだろう」


 親父は頷いた。


「ああ、驚いたことにあのメカの製法や技術は

 おそらくサンキシンにかなり近いものだ」


 俺は首をひねった。


「それってつまりどういうことだ?」


 親父は得意気に言う。


「要するに超古代の日本ではあのような巨大メカが

 戦争に使われていたということだろう。

 彼女も古代には神もしくは神の御子として

 扱われていたものの転生者なのだろうな」


 そういうことか……どうやら転生者同士は惹かれ合うようになっているらしいな。

オロチのような歪んだ情熱を向けられるのはゴメンだが。


「で、戸部が目覚めたらどうなるんだ?」


 親父はふむと少し考えたあと


「我々の監視下で生活をしてもらうことになるな。

 まあ、暫くの間は移動や通話に制限はあるが

 閉じ込めておくようなことはしないつもりだ」


 その言葉を聞いて俺はほっと胸をなでおろした。


「せっかく助かって正気に戻ったんだから

 これからは平穏に生きていけるといいな」


 親父は頷いた。


「ああ、そうだな」


 そしてそのと姫乃と朧姉さんに正座で交互に3時間ほど説教を食らった。

その間俺は頭を下げることしかできなかった、今回は本当にやばかったからな。

まあ、なんとか許してもらえたけどな。

その代わり戸部からスマホをもらったことを話したらスマホは跡形もなく粉砕された。


「いい、鉄也ちゃん、他人から勝手にスマホなんてもらったら駄目だよ。

 スマホを使って盗撮とか盗聴なんて簡単にできるんだからね」


 と姫乃は言っていたがそこまで粉々にする必要があったのだろうか。

まあ、よくわからない技術が使われてるかもしれないから念のためというやつか。


「そういえばもらってからほとんど机の中にしまいっぱなしだったな」


 姫乃はため息を付いた。


「本当に鉄也ちゃんはだめだなぁ」


「すまん」


 俺の言葉に姫乃は大きくため息を付いたのだった。

・・・

 暫くの間、登校途中で戸部と会うこともなく、俺の隣の席も空席のままだった。

戸部は病気で入院していることになっていた。


「このまま目が覚めないわけじゃないよな……」


 俺がそんなことをつぶやいたとき、俺に声がかけられた。


「おはよう須王くん、私のことを考えていてくれたの?」


 そう声をかけてきたのは間違いなく戸部だった。


「お、おう、無事退院できたのか。

 良かったな」


 戸部は笑顔で言った。


「はい、それでね、今度から須王くんの

 家の隣に引っ越すことになったんだよ。

 私を見ているのにちょうどいい人がいるからって」


 そういって戸部は姫乃に視線を向けた。


「……そういうことね」


「これからご近所さんになるからふたりともよろしくお願いします」


 俺は笑っていった。


「ああ、よろしくな」


 一方姫乃は渋い顔だった。


「一番監視に向いてる人物ってそいういこと?」


 まあ、戸部には敵意やアラハバキへの接触手段はないらしい。

なら普通に生きていけるんだからいいんじゃないか。

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