鳳凰編 第12話 三つ巴の乱戦――とオマケ番組
召喚されし二体の聖獣機……。間も無く、そのうちの一体が地面へと落下した。
「あぁあああっ、レッドベリルーーーーー!」
アリスの悲痛な叫びが辺りに響く。無理もない。エネルギーを使い果たした状態では、いかに機獣神とはいえ動けるはずがないからだ。
「……。え〜っと、アリスはどこか安全なところに避難していてね……」
そう言い残し、ダイは高速で迫ってくる聖獣機の額に飛び乗った。ダイの身体は光に包まれ、そのまま聖獣機の中へと吸い込まれてゆく。
聖獣機は上空へと舞い上がり、命の炎が灯ったように翼を大きく広げた。
「うぅ〜……、せっかくかっこ良く決めようと思ってたのに〜〜〜」
上空に浮かぶ鳳凰を見上げながら、アリスは可愛く頬を膨らませる。そこに、戦闘状態を解いたミントベリルが現われた。
「アリスちゃん。たしか、あのひとから剣を預かったって言ってたわよね〜」
「えっ、聖剣クリソベリルのこと? でも、今のあたしでは力不足だから、まだクリソベリルを扱うことはできないよ〜」
「そうね、剣としては使えないでしょうけど……、上手くすればレッドベリルを復活させられるかもしれないわ」
「ほ、ほんと!?」
聖剣クリソベリルは、光竜の精霊力を数千年単位で結晶化させた刃である。
剣そのものが精霊力の塊りであり、時空力には及ばないものの機獣神のエネルギーに変換できるかもしれない。ミントはそう考えたようだ。
これはある意味賭けである。グランゾルとアルフォーニだけでは目の前の四凶神を倒せない。融合合体してグランフォーニになったところで結果は同じであろう。勝つためには、さらに決め手になる何かが必要となる。ミントはそれをアリスとレッドベリルだと考えた。
「機獣神っていうのは、周りの時空力を取り込んでエネルギーとしている。心臓部が完全に破壊されてしまわない限り、微弱なエネルギーは残っているはず……。そこに、聖剣クリソベリルの精霊力を流し込めばあるいは――」
「え〜っと……。よくわかんないや〜」
せっかくの説明もアリスには難しかったようだ。
「とにかく、墜落したレッドベリルまで辿り着かないと話しにならない。アリス……、あなたがラルドさまの弟子というのなら、遅れずについて来なさい!」
唖然とするアリスだけを残し、ミントは崖から飛び降りる。巨大鳳凰と対峙する四凶神渾沌の動きを警戒しながら落下したレッドベリルの下へと向かった。
慌てて崖の側面を駆け下りるアリス。当然ではあるが、ミントとの距離はどんどん広がるばかりであった。
プレートの上でダイは意識を集中する。目の前に浮かぶ光の球体へ手を乗せると全方向に外の景色が映し出される。程無くして、鳳凰の姿を模ったかわいいぬいぐるみが現われた。グランゾルのメインコアである。
『ダイよ。戦うのは良いが勝算はあるのか? 下手をするとアルフォーニとも戦うことになるのだぞ』
「ねぇグランゾル……。これまでの戦いで、作戦なんか考えたこと――あった?」
『ふむ、なにが言いたいのだ……?』
「勝算とかそんなこと考えても無駄なことだよ。戦いなんて、なるようにしかならない。それに、戦うことが目的じゃないでしょ〜。まずは、あの巨大竜の注意を、ミントさんからこっちに引き付ける!」
『ちょっ、ダイ!!』
「いっけ〜グランゾル! とっかーーーーーーーん!!」
ダイは光の球体を前に突き出す。その瞬間、巨大鳳凰は四凶神渾沌めがけて超速で突っ込んでいった。
『がぁあああああーーーーー!』
口も無いのにどこから声が出ているのだろう。オリビンは犬が遠吠えするような動作をする。そして、迫ってくる鳳凰を見据え、衝突する寸前に大きく飛び上がった。
『なっ、交わされた!』
鳳凰からダイの驚愕した声が聞こえてくる。易々と交わせるスピードではなかったからだ。
体当たりを喰らわせて、相手の体勢が崩れたところでバトルモードチェンジ。超獣神に変形してキメポーズ――というのがダイの王道パターンである。それが最初の体当たりで崩れてしまうとは……、これではかっこ良く登場できないではないか! ダイがそんなバカなことを考えていると、飛び上がったオリビンが鳳凰の背に飛び乗ってきた。
『わっわぁあああああ!!』
その凄まじい衝撃を受け、鳳凰は地面へと押し付けられてしまう。巨大な怪物の前足に押さえ付けられて、鳳凰は身動きが取れなくなってしまった。
『し、しまったーーーーー!』
聖獣機モードでは、バトルモードと比べて約半分の力しか出すことができない。戦うためにはバトルモードになることが最低限の条件である。しかし、こうなってしまえば、もはやそれも適わない。鳳凰の機体は、ミシミシといった音を立てながら、オリビンの前足によって地面へとめり込んでいった。
そのとき、一筋の紅蓮がオリビンに向けて放たれる。瞬時に危険を察知したオリビンは、咄嗟に飛び上がってそれを交わす。紅蓮の炎はさきほどまでオリビンのいた場所を通過し、遥か後方の地面へと着弾して大爆発を起こした。
ずどぉおおおーーーーーん!
地響きと共に岩石を含んだ爆風が吹き荒れる。凄まじい威力……。何者かによる長距離攻撃である。鳳凰から少し離れたところに着地したオリビンは、紅蓮の炎が放たれた方向を確認する。そこには、バトルモードに変形して弓を構えている超麟神アルフォーニ炎駒の姿があった。
「ライムベリルよ……、我らを裏切るつもりか」
戦いを見守っていた仮面の男が、憎々しそうな表情でアルフォーニ炎駒を睨みつける。
『この聖界にある竜の宝珠は、必ずわたしが見つけ出します! だから、今はオリビンくんを引かせてください!』
「ふっ、何を言う……。見つけ出すもなにも、光竜を殺せば宝珠は手に入る。キサマも“契約者”というのなら理解しているはずだ!」
『わかっている……。でも!』
仮面の男とライムがなにやら言い争っている。そんな好機を、ダイが見逃すはずはない。巨大な翼を地面に叩きつけ、空中へ飛び上がった。
『いまだ! グランゾル――バトルモード・チェンジ!!』
複雑な変形を経て、聖獣機は人型の超獣神となる。もちろん、四聖獣鳳凰の化身――超鳳神グランゾルであった。
『超鳳神グランゾル……ここに見参!!』
大地に降り立ったグランゾルは、翼を広げてかっこよくポーズを決める。すると、どこからかグランゾルのテーマ曲が聞こえてきた。
ちなみに、立派な翼が付いていても、超獣神モードのグランゾルは飛ぶことができなかったりする。まったくの見掛け倒しであった。
戦いの場から少し離れたところに墜落した一体の聖獣機があった。朱雀の機獣神レッドベリルである。上空から落下したため、周りの木々を薙ぎ倒しながら地面へとめり込んでいる。だが、さすがは機獣神。かなりの衝撃を受けたというのに、目立った故障箇所は見られなかった。
一足先に辿り着いたミントはそんなレッドベリルの様子を確認しようとする。そして、あるモノの存在に気づいて愕然としてしまった。
埋まっているレッドベリルの手前に、なぜか違和感ありまくりの折りたたみ机とパイプ椅子が用意されていたからだ。しかも、机の上にアーチ状の看板が掛けられていて、そこには可愛い丸文字でこう書かれていた。
「え〜っと、『みんな〜、サンストーンに集まれ♪ 四聖界出張版』?」
意味不明……。まったくもって意味不明である。
そのとき、息も絶え絶えのアリスがようやく現われる。そして、ミントと同じようにその違和感ありまくりのセットを眼にして唖然としてしまった。
「あははっ。何だろうね〜、これ……」
困ったように呟くミントだったが、意外にもアリスは平然と机へと駆け寄り、置かれていた台本 (?)へ目を通す。一通り流し読みして、納得したようにコクリと頷いた。その瞬間、どこからか楽しげな音楽が聞こえてくる。どうやらその“番組”は本番を迎えたようだ。
「ちゃ〜んちゃ〜んちゃんちゃちゃ〜ちゃ〜ん♪ 文字だけ4コマ劇場0.5企画『みんな〜、サンストーンに集まれ♪』、司会進行役はSPINELのアリス (ちびっ子バージョン)と〜……」
そして、アリスはミントへと手にしたマイク (!)を向ける。固まっているミントを見て、アリスはもう一度元気良く叫んだ。
「SPINELのアリスと〜!」 ← 見た目は6歳で中身は16歳アリスです(笑)
「……み、ミントベリル……です」
「本日の『みんな〜、サンストーンに集まれ♪ 四聖界出張版』は、この二人でお送りいたします♪ しばらくの間、お付き合いくださいね〜〜〜♪」
その途端、ガヤが聞こえてきて場を盛り上げる。状況を把握できていないミントは、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
ちなみに、この『みんな〜、サンストーンに集まれ♪』は、ぶっちゃけ『超獣神グランゾル 鳳凰編』本編とまったく関係ありません。飛ばしていただいても全然問題はありませんので、読み疲れた方は無視しちゃってください(笑)。あと、文字だけ4コマ劇場とは、同一作者作品の『ラズベリル☆ショート劇場』みたいな感じのやつです。
「さて、ミントさん。唐突に始まりましたが、ちゃんとついて来ていますか〜?」
「いや、全然ついて行けていません……。っていうより、これっていったい何なのよ!」
「ただのラジオ番組です (ぼそっ)」
「ら、ラジ……」
「いや〜、本当なら『グロッシュラーのお便りコーナー(仮)』ってのが始まるはずだったんだけど、ちょ〜っとマンネリ化しちゃってるみたいだから今回は特別企画ってことみたい〜♪」
「え〜っと、お便りコーナーだけならもう終っている頃(文字数)じゃないかな?」
「気にしな〜い、気にしな〜い♪ さて、今回のサンストーンに集まれ〜は、小説『超獣神グランゾル』について、いろんな謎に迫ってみたいと思います♪」
「謎って言っても……。Crystal(作者)さんがこの小説を書き始めたのが2004年の3月頃のこと……。うわぁ、もう五年も経ってるんだ〜〜〜」
「鳳凰編が始まって一年以上も経ってるけど、全然進んでいないよね〜」
『わはははっ♪』(効果音)
「………。連載3話分が通常の1話になるわけだから、この第12話で第一期グランゾルの4話分しか進んでないことになるのか〜。ほんと、進んでないわね……」
「Crystal(作者)、ネタが無いんでしょ〜♪」
『どどっ♪』(効果音)
「いやいや、いまCrystal(作者)さんは、新作の『クラリオンアース』って小説を書いているらしいから、なかなかこちらに取りかかれないだけじゃ……」
「そのまま未完になるのがオチ……(ぼそっ)」
「わぁあああっ、わわわぁあああーーー!!」 ← 慌ててアリスの口を押さえる
「むぐもご……」
「アリスちゃん、しぃ〜〜〜っ!」
「はぁ〜い♪ さてさて、このグランゾルって作品なんですが〜、ミントさんはどんな感じで書かれたか知っていますか〜?」
「どんな感じって……。普通に登場するキャラクター考えて、世界観創ってストーリーを考えて〜」
「ぶっぶ〜〜〜♪ Crystal(作者)が書き始めるときに決まっていたことは、『主人公の名前はダイ』と『巨大ロボットの名前はグランゾル』のたった二つだけ。あとは、書いている途中で決まったり、キャラクターが動いて勝手にそうなったそうです♪」
「あ、相変わらずね〜〜〜……(汗)」
「あははっ、なんちゃらプラネットも『学生がクラブ活動で星(惑星)を創る』。Crystal Legend 7_4 〜もしかして怪談?〜 は『旅行先で優子が幽霊に取り憑かれる』ってだけで書き始めたぐらいだから、この作者ダメなんじゃないかな〜〜〜(笑)」
「こらこら〜(苦笑)」 ← 否定はしません
「この鳳凰編も、この先どうなるか全く決まっていないそうです」 ← 真顔で呟く
「………(どきどきどき)」
「え〜、暗い話はこの辺にしておいて〜」
「く、暗いの!!」
「まずは、超獣神の説明から……。え〜、時空族トラピッチェ・クリスタルが機獣神を参考にして創造した4体の超獣神。主なデータはこんな感じです♪」
○ 超鳳神(鳳凰)グランゾル――マスター/ダイ、キーアイテム/鳳翼剣 (牙龍鳳翼剣)
○ 超麟神(麒麟)アルフォーニ――マスター/レイチェル、キーアイテム/名称未定 (ペンダント)
○ 超龍神(応龍)リーンウィック――マスター/ブルース、キーアイテム/氷槍 八寒地獄
○ 超亀神(霊亀)カークン――マスター/樹神美咲、キーアイテム/召喚の腕輪
「あれ? 超亀神カークンって、まだ登場していないはずなのに、マスターまで決まっているの?」
「樹神の退魔巫女(退魔師)樹神美咲。彼女の活躍は、同一作者小説『Crystal Legend 7_4 〜もしかして怪談?〜』をご覧ください♪」
「宣伝!?(どびっくり)」
「違う違う(笑)。で〜、超亀神カークンは各作品の関係上、このグランゾルに登場する予定は一切ありません♪」
「えっ? 超獣神が集まって、究極!四体合体ってのはやらないの!?」
「はい、やりません♪ 強さ的には、グランゾルが1、アルフォーニが3、リーンウィックが5、カークンが10と、上位の超獣神には他の超獣神と協力したとしても勝てません。その代わり、グランゾルには融合合体システム、アルフォーニにはフォームチェンジシステムなんかが搭載されているようです」
「この様子なら、リーンウィックにも何か秘密が隠されているかもしれないわね〜」
「でも、何も考えていないみたいですよ〜。Crystal(作者)……」
「………(大汗)」
『どわはははっ♪』(効果音)
「気を取り直して、機獣神のデータを見てみましょう。時空族トラピッチェ・エメラルドによって創られた機獣神は、一定以上の素質を持っていると誰でも乗れちゃうもんだから、封印されてしまっていた機体のようです。強さは、超獣神を遥かに凌駕しています」
「機獣神って超獣神と比べて機械機械しているよね〜。まさしく機械の獣って感じ?」
「そうだね〜。雰囲気からすると〜、金属生命体ゾイ……」
『ピィーーーーー!!』(警告音)
「ちょーーーっ、アリスちゃん。それ以上はダメーーーーー!!」
「あっはっはっ♪ さぁ〜て、現在登場している機獣神はこんな感じです♪」
○ 白虎(白竜)の機獣神コーネルピン――マスター/カナリー、キーアイテム/名称未定(短剣)
○ 青龍(青竜)の機獣神アウイナイト――マスター/ダイ、キーアイテム/牙龍剣(牙龍鳳翼剣)
○ 朱雀(赤竜)の機獣神レッドベリル――マスター/アリス、キーアイテム/名称未定(指輪)
○ 玄武(黒竜)の機獣神サフィリン――マスター/ジェバイト、キーアイテム/名称未定(戦斧)
○ 黄龍(黄竜)の機獣神――未定(登場しない可能性あり)
「ところでアリスちゃん。Crystal Legend シリーズのメインヒロインであるあなたが、どうして朱雀の機獣神レッドベリルのマスターになったの?」
「いや、なんか――Crystal(作者)が動かしやすいキャラを考えていて、あたしに白羽の矢が立ったみたい……」
「つ、つまりは〜……」
「うん、適当……」
『ちゃんちゃ〜ん、ちゃんちゃ〜ちゃ〜ちゃ〜〜〜ん♪』
「あっと、もう時間が無くなっちゃったみたいですね〜。『みんな、サンストーンに集まれ♪ 四聖界出張版』、今回はこの辺でお別れのようです♪」
「あれ? いつもなら、これからゲストコーナーがあって、おはがき紹介に質問コーナーがあるんじゃなかったの?」 ← やっと慣れてきた?
「う〜ん、そうなんだけど〜。下手をするといまの三倍は続いちゃって、なかなか終りそうに無いし〜〜〜。それに……」
「それに?」
「すでに第12話本編より、このオマケ番組の方が文字数も多くなっちゃっているから、さすがに終らないとマズイでしょ〜。読んでくれている人、怒っちゃうよ……」
「あぁ〜〜〜……(大汗)」
『ずががーーーーーーーん!!』(効果音)
「で〜、次回の『みんな〜、サンストーンに集まれ♪ 四聖界出張版』は、第15話を予定しています」
「えっ、続くの!?」
「う〜ん、ネタが無かったら……続くんじゃないかな?」
「って、口から適当ですかーーーーー!!」
辺りにミントの絶叫が響き渡る。そこに、息も絶え絶えのアリスがようやく追いついてきた。
「ふぅ〜、やっと追いついた〜〜〜。ミントさん走るの速すぎ……って、どうしたんですか?」
「えっ? あれっ……?」
アリスは、呆然と立ち尽くしているミントを見て小首を傾げている。驚いたことに、折りたたみ机やパイプ椅子はもちろん、アーチ状の看板もきれいさっぱり消えていた。
「ミントさん。もしかしてレッドベリル、壊れちゃっていましたか?」
ミントの様子にアリスはそんな勘違いをしてしまう。
「いや、そうじゃなくって……。ラジオ番組――」
「ラジオ……番組?」
「ううん! な、なんでもないの!!」
今までのは夢だったのだろうか……。ミントは、わけのわからない白昼夢におもわず笑ってしまう。あんなこと、実際にあるはずがない。だいいち、ラジオ番組を収録(?)して、いったい誰が聞くというのだろうか――
気持ちを切り替えたミントは、何事も無かったかのようにレッドベリルのチェックを始めた。
ちなみに、さきほどのラジオ番組収録にラルドが関わっていたことは言うまでもなかったりする。