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 鳳凰編 第5話 現れたのは仮面の少女とアルフォーニ炎駒

 木々がなぎ倒され、大地は深く抉れている…。まるで隕石でも落ちたかのような惨状である。そう、上空でバトルモードに変形したグランゾルが、何もできないまま墜落してきたのだ。

「え〜っと、ごめんね〜ドロンジョさま〜♪」

 地上に降りたダイは、グランゾル墜落の余波により破壊されたアレックスを呆然と見つめているパイロープに声をかけた。アレックスは、どこから手を付ければ良いのかわからないほど壊れており、修理は不可能だと思われる。メカ兵器全般を担当するグロッシュラーなど、あまりの状態の酷さに頭を抱え込んでいた。

 このような惨状の中、寄生していたトカゲの巨大竜が生きていたことは幸いといえるだろう。

「まぁ、命があっただけマシってもんさ…。あんたが来てくれなければ、いまごろはあの世へ旅立っていただろうか・ら・ねぇ〜〜〜!」

「あうあぅあぅ〜!!」

 パイロープは、両拳をダイのこめかみにあて、力を込めてグリグリと動かす。もちろん、“ドロンジョさま”と呼ばれたことへの抗議だろう。

「それより大変なんだよ! 何者かにレイチェルがさらわれちまって!」

 その言葉に、ダイはコクリと頷く。

「うん、レイチェルが大変なことに巻き込まれたって聞いたから、助けに来たんだけど…」

 ダイは、同じく爆風で弾き飛ばされて、瀕死の状態となった巨大竜へ視線を向ける。グランゾル落下によって奇跡的に勝利を収めたが、普通に戦っていればまず勝てなかったはずだ。

「こんな巨大竜がいるんだもん。びっくりしたよ〜」

 動けない巨大竜から感じられる圧力は、これまで戦ってきたどの敵よりも強力であった。ダイは、不気味な形状をした巨大竜にゆっくりと近づく。巨大竜は、ピクリとも動かないものの、その鋭い視線はダイを確実に捉えていた。

「早く元の生物に戻してあげたいんだけど、グランゾルを回復させないと“クラッシュ・アンド・リバース”使えないからな〜」

 台所用の中性洗剤を片手に、キョロキョロと辺りを見回すダイ…。おそらく、ぬいぐるみ形態のグランゾルを洗濯する(回復させる)ために、水場を探しているのだろう。

 巨大竜を元の生体に戻す方法は、破壊と再生を司るグランゾルの必殺技“クラッシュ・アンド・リバース”と、恐竜型メカアレックスの超進化光線(反転)がある。その二つとも、今は使用不可能であった。

「これだけの傷を負っているんだ。元に戻れたとしても助かりやしない…。それなら、いっそひと思いに…」

 安楽死を考えた方が良いのかもしれない…。パイロープはそう言いたいのだろう。そんな意見を聞き、ダイは慌てて反論しようとした。

 そのとき、大きな影が地面を走る。ダイたちが上空に視線を向けると、そこには巨大な麒麟のような物体が浮かんでいた。

「なっ! あ、アルフォーニ!?」

 ダイが驚くのも無理はない。上空に浮遊しているのは、レイチェルと共に姿を消していた超麟神アルフォーニであったからだ。しかも、いつものアルフォーニとは様子が違っている。鮮やかな黄だった鱗の色は、まるで炎を纏ったかのように紅く染まっていた。


「あぅ〜。クロムくんをいじめないでください!」

 アルフォーニの頭の上に、一人の少女が乗っている。白い仮面を付けてはいるが、間違いなくレイチェルである。

「レイチェル、無事だったんだね♪」

 ダイは、パッと表情を輝かせる。しかし、ダイの姿を確認したにもかかわらず、レイチェルの反応はいつもと違っていた。ダイの問いかけにも反応せず、まるで敵でも睨みつけるような視線を向けた。

「あなたがへっぽこ勇者さんですね…」

 仮面の奥からダイをジッと見つめるレイチェル…。不意に頬を赤く染めたようだが、慌てて平静をよそおった。

「えっ、レイチェル?」

 そんなレイチェルの反応にダイは愕然とする。まるで、ダイのことを知らないような口振りだ。

「うぅ〜…、レイチェルってなんのことですか〜? わたしには“ライムベリル”という立派な名前があるんですよぉ〜」

 ライムベリルと名乗ったレイチェルは、可愛く頬を膨らませる。やはり、どう見てもレイチェル本人であるとしか思えなかった。

「ちょっと、どういうことなんだい?」

 パイロープも、レイチェルの態度には混乱気味である。助けようとしていたレイチェルが目の前に現れた。それなのに、パイロープのことはおろか、ダイのことも忘れているようだ。

 何かの理由で正体を隠す必要があるのか。あるいは、連れ去られた後にライムベリルという人格を植え付けられたのか…。とにかく、一番妖しいのは、レイチェルが付けているブルースの仮面であった。

「さぁ、おとなしくクロムくんを返してください…」

 紅いアルフォーニで威嚇するように、レイチェル…いや、ライムはそんなことを呟いた。

 そのとき、ドシッドシッという振動と共に、白虎のコーネルピンが現れる。時空間の歪みを感知し、急いで駆けつけたカナリーであった。


『なんやなんや! いったい何事やーーー!』

 巨大なクレーターに紅いアルフォーニ、さらにはブルースの仮面を付けたレイチェル…。この状況をいきなり理解しろというのは、いかにカナリーでも不可能なことである。

「そう、ですか…。やはり、戦わなければならないのですね…」

 ライムは、哀しそうな表情で顔を伏せる。

『あの子と…ダイと敵対することになりますがよろしいのですか?』

 その言葉に、ライムはハッとする。なぜだかわからないが、ライムの胸は締め付けられるように痛んだ。

 苦しそうに胸を押さえるライムベリル。だが、それもほんの僅かな間だけのこと…。

「わたしたちの邪魔をするのであれば…、誰であろうと容赦はしません!」

 覚悟を決めたように叫んだライムは、そのままアルフォーニの中へと吸い込まれていく。次の瞬間、魂が宿ったかのように、アルフォーニの瞳が光を放った。

『あう〜! いくよ、炎駒えんく!』

 そのかけ声を合図に、空を駆けるアルフォーニがコーネルピンめがけて突進してくる。

『なんや知らんが面白い…。たかが超獣神の分際で、この機獣神、白虎のコーネルピンの相手になるとでも思っとるんかぁーーー!』

「ちょっ! カナリーさん!」

 戦闘モードバリバリなカナリーに、ダイは唖然としてしまう。しかし、グランゾルが動かない状況では、ダイに二人を止める術はない。

 凄まじい衝撃と共に、二体の聖獣が激突する。その衝撃は、呆然と立ち尽くすダイたちを後方へと吹き飛ばした。

 そんなことはお構いなしに、二体の聖獣同士の激しいぶつかり合いは続く。

『ちっ、かなりパワー上げてきたみたいやな…。よっしゃ、それなら…』

 コーネルピンの身体がカクンと沈み、勢いあまったアルフォーニが体勢を崩す。その好機を逃さずコーネルピンがアルフォーニの首筋に喰らいつき、身体が捻ってクレーターの崖に投げ飛ばす。

『あぅっ!』

 かなりの衝撃だったのだろう。ライムの悲鳴が聞こえてくる。

『くくっ…。コーネルピン、バトルモード・チェンジ』

 カナリーの不気味な声が聞こえ、コーネルピンの変形が始まる。そして、コーネルピンは、獣人のような姿の巨大ロボットとなった。

 強大な戦闘力を持つため、時空族によって永い時を封印されてきた機獣神…。そんな機獣神の中でも、白虎のコーネルピンは、接近戦を得意とする。両腕から爪のような刃物を出現させ、いまにも飛びかかろうと身構える。もはや、相手がレイチェルかもしれないということは、微塵も頭に無いであろう。

『うぅ〜。それならこっちも本気出しちゃいます〜』

 アルフォーニは、体勢を立て直し、コーネルピンと向かい合う。

『バトルモード・チェンジ! アルフォーニ炎駒!』

 獣人のような機獣神のバトルモードとは違い、超獣神は鎧を纏った騎士のような姿となる。しかも、いつものアルフォーニと違い、鎧は紅蓮の炎を宿したかのような色であった。

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