鳳凰編 第1話 復活の超獣神
2008/04/01〜連載中
最終話をアップしてからも、カウンターがえらい勢いで上がり続けています。本当にありがとうございます。あまり面白くならないかもしれませんが、続編を書いてみることにしました(更新は遅いと思います)。
それでは、『超獣神グランゾル 鳳凰編』 をお楽しみください♪
同一作者小説紹介
★Crystal Legend シリーズ★ 「Crystal Legend 7_2 〜トルマリンの胎動〜」、「Crystal Legend 7_3 〜はじまりの時代〜」、「Crystal Legend 7_4 〜もしかして怪談?〜」
★超獣神グランゾル シリーズ★ 「超獣神グランゾル」、「鳳凰編」
★なんちゃらプラネット シリーズ★ 「なんちゃらプラネット」
★美咲ちゃん シリーズ★ 「〜もしかして怪談?〜」
★4コマ劇場 シリーズ★ 「桜のひみつ」、「ラズベリル☆ショート劇場」
この世界とは異なる時空の彼方に、“四聖界”という聖界があった。その名の通り時空を隔てて四つの聖界を持ち、それぞれを守護する“超獣神”と呼ばれる神が存在した。
“聖界乱れるとき超獣神現れ、強大な力持て、災いを収めるであろう” 四聖界に古くからの言い伝えである。しかし、超獣神とは、単なる伝説だけの存在ではなかった。
突如、大きな衝撃が起こり、ドロンジョ…いや、“パイロープ”が座席から転げ落ちる。どうやら、何者かの攻撃が直撃したようである。
「なんだい、なんだい! いったい何が起こったんだい!」
パイロープは、背もたれにしがみ付きながら、針金のようにとんがった髭を生やしている痩せ男こと“グロッシュラー”に問いかける。
「た、大変ですドロ…パイロープさま! どうやら、何者かの攻撃を受けたようです!」
そんなことは言われなくてもわかっている。それに誰が“ドロンジョ”だい。グロッシュラーは、いろんな意味でパイロープに殴られた。
涙目になりながら恐竜型メカ“アレックス”の操作をするグロッシュラー…。そして、モニターに現れた映像を見て、愕然としてしまった。
「な、なんだい、あの禍々しい姿の“巨大竜”は!」
パイロープが叫ぶのも無理はない。現れた巨大竜は、これまでに見たことのないような形状をしていたからだ。
超鳳神の守護する聖界…(特に呼び名が決まっているわけではないため、仮に“鳳凰界”と呼ぶことにする)。鳳凰界では、二十年近く前から巨大竜が現れはじめた。
竜といっても、普通の生物が巨大化して凶暴となった存在である。だが、見上げるほど大きくなった野生生物や昆虫の類に勝てる者など、この鳳凰界にはいなかった。
もちろん、パイロープたちは違う。パイロープたちは、四聖界とは違う聖界の一つ魔界の住人であり、存在自体が謎の時空族“トラピッチェ・エメラルド”からアレックスを譲り受けている。その辺りに出現する巨大竜など、パイロープたちの敵ではなかった。
しかし、現れた巨大竜は、これまでと毛色が違うようである。まるで、魔界にいる魔物が、巨大竜へ進化してしまったように思えてしまうからだ。
元となった生物が強いほど、より強大な力を持つ巨大竜となる。おそらく、これまで現れたどの巨大竜よりも、強力であると予想された。
「ちっ! ノーマルのアレックスじゃ、とても敵いやしない。おまえたち、こっちも巨大竜で対抗するよ!」
グロッシュラーは、“あらほらさっさ〜”と敬礼をする。ゴリラのように強靭な筋肉に覆われた厳つい男“ツァボライト”は、無駄に“うがぁーーー!”と叫びながら、両腕で胸をドラミングした。
「では、さっそく…。ぽちっとな♪」
無意味に大きなボタンを押すグロッシュラー。アレックスの頭部の一部が開き、中からパラボラアンテナが盛り上がってきた。
「見よ! あのお方から授かった、奇跡の力!」
パイロープの背後に、腕を組みながら高笑いするトラピッチェの影が浮かんだ…ように見えた。
「超進化光線発射〜〜〜!」
パイロープが大きく叫ぶと、恐竜ロボのアンテナから奇妙な光線が発射される。近くにいたトカゲへ直撃し、包み込むように光の球体となった。すると、トカゲの姿が急激な変化を始める。身体の組織が再構築され、人智の及ばない存在…巨大竜となった。
次に、アレックスが変形を始める。ジェットエンジンで空を飛び、巨大化したトカゲの頭上に着地した。恐竜ロボからいくつもの触手が伸び、巨大竜の頭に絡み付く。その瞬間、巨大竜は魂が宿ったかのように大きく吠えた。
「あっはっはっ! 誰が何のために巨大竜を創り出しているのか知らないけど…。あたしたちに喧嘩を売ったこと、後悔するがいい!」
まさに、悪役である…。パイロープは、座席の上に仁王立ちし、高笑いして巨大竜を指さした。
「パ、パイロープさま。お待ちください!」
出鼻をくじかれたパイロープは、ジト目でグロッシュラーを睨み付ける。いままさに盛り上がりの頂点に達しようというときに、いったい何の用だというのだろうか…。
「じつは、新シリーズスタートということで、激励のお手紙をいただいているのですよ〜♪」
そう言って、グロッシュラーは、懐から一枚のハガキを取り出した。
次の瞬間、パイロープが豪快にずっこける。御丁寧にも、色のついた爆煙付きである。
そして、どこからか楽しげなバックミュージックが流れてくる…。
「なんなんだい新シリーズって…。それに、またそのおバカなコーナーが始まるのかい!」
迷惑そうに顔をしかめるパイロープだったが、少しだけ“懐かしいな〜”と感じたのは内緒である。
「いや、これもおやくそくの一つですから…」
苦情をものともせず、グロッシュラーの大人気コーナーが始まった。
「え〜、光風町にお住まいの如月翔くん六歳からのお便り…。いやはや、このショウくんは、前回のシリーズでも一番初めにお便りいただいたちびっ子ですね〜♪」
固定ファンが付いているようで、グロッシュラーはニコニコ顔である。
「え〜っと、『新シリーズのスタート、おめでとうございます』 はい、ありがとうございます〜♪ 『ドロンジョさまたち、しょっぱじめから大ピンチですが、意味がわかりません。詳しく解説をお願いします』 いや〜、大人びた口調のお子さんですね〜。で〜、我々が大ピンチな理由なんですが〜」
どうやら、パイロープがドロンジョさまと呼ばれていることは、完全に無視するようである。
「じつは、この作品、小説三話分がテレビアニメ一話分なんですよ〜♪ それで、この第一話。本当はテレビアニメの後半部分(実際の小説第三話)でして、この戦いの結末は、小説の第四話に続くわけなんです〜♪ ほら、よくあるじゃないですか。最初にバトルシーンを持ってきて、今後の展開、ちょ〜期待っていうアレ♪」
ノリノリで説明しているグロッシュラーの頭を、パイロープは力を込めて鷲掴みにする。キリキリと締め上げ、痛がるグロッシュラーに向けて、殺気のこもった声で呟いた…。
「まったく、意味…わかんないんだよ…」
鋭い視線がグロッシュラーに突き刺さる。パイロープは、かなりご立腹のようだ。
「そんなことより! 目の前の巨大竜をなんとか…」
だが、パイロープの言葉は、最後まで続くことはなかった。これまで以上の衝撃がアレックスに伝わってくる。敵巨大竜の攻撃が再び開始されたようだ。凄まじい振動と共に、アレックスの天地が逆になる。トカゲの巨大竜がひっくり返されたのだろう。
シートベルトをしていなかったパイロープは、アレックスの天井に身体を打ちつけられる。朦朧とした意識の中で、アレックスのモニターに映る巨大竜の姿を見つめた。
(や、殺られる…)
あまりにも、元となった生物の強さが違いすぎる。小さなトカゲが魔物に敵わないのと同じである。こんな怪物、たとえ超獣神でも勝てないかもしれない…。圧倒的な力の差に、パイロープの脳裏には、死のイメージが過ぎった。
「ちょっと待ったーーーーーぁ!」
どこからか、元気の良い子どもの声が聞こえてくる。その声に反応した巨大竜は、アレックスへの攻撃を止め、上空に視線を向けた。だが、晴れ渡った青空に、何もあるはずもない。いや、そうではなかった。
空間が波打つように揺らぎ、大きな塊がゆっくりと姿を現す。それは、青よりも深いコバルト色の、龍の形をした巨大な機獣であった。
驚いたことに、機獣の頭部には、六歳ぐらいの少年が乗っかっている。少年は、背負っていた大剣を抜刀する。立派な装飾が施された大剣…。己の身長ほどもある“牙龍鳳翼剣”を、少年は軽やかに構えた。
そして、何を思ったのか、少年は機獣から飛び降りる。当然のことではあるが、少年はどうすることもできずに、超速で落下をはじめた。
空気の流れを受けて、少年の小さな身体は不安定に暴れる。なんとか体勢を立て直し、牙龍鳳翼剣を天に突き上げ、大きな声で叫んだ。
「来い…。グランゾーーール!」
少年の身体からは電撃が発生し、牙龍鳳翼剣を伝って上空へと放たれる。
晴れ渡っていた空に暗雲が立ち込め、稲光と雷鳴がほぼ同時に起こる。空には大きな魔方陣が浮かび上がり、猛禽類のような形をした巨大な金属物体が、ゆっくりと姿を現した。
金属物体は、凄まじいスピードで降下を始める。重力に従って落下する少年を頭上に受け止め、そのまま空中に浮遊した。
淡い光に包まれた少年の身体は、溶け込むように金属物体へと吸い込まれていく。
真っ暗な特殊空間を通過し、少年は唯一光っている地に降り立つ。
そこには二つの光の球体が浮んでおり、少年が手を添えると、辺りはパッと明るくなった。
少年は、翼を広げた鳥の紋様が描かれているプレートの上に乗っている。それを中心に、外の映像が全方向に映し出された。
意識を集中させると、地面に迫るような映像が流れ出す。驚くべきことに、少年の髪や衣服が風でなびいている。どうやら、外界とは完全に遮断されているわけではなさそうだ。
「バトルモード・チェンジ!」
少年は、右手の球体をおもいっきり突き出す。すると、猛禽類型の機体が変形を始めた。
急上昇するように起き上がると、胸部が開いて腕が出てくる。鉤爪が収納され、折りたたまれていた脚部が長く伸びる。鳥型の頭部が前に倒れ込むと、そこには騎士のようなロボットの顔が現われた。
『超鳳神グランゾル…。ここに、見参!』
かっこよくポーズを決めるグランゾル。その背後には、伝説の瑞獣“鳳凰”の姿が浮かんだ…ように見えた。
かつて四聖界に、いや、実際には数ヶ月前なのだが、とにかく異世界から勇者が現れた。
超獣神に選ばれた勇者は、元の聖界へ戻るため、時空族の遺産を求めて旅を続ける。その過程で、各地に出没していた“竜”を倒すことになった。
被害に困っていた者たちは、竜を倒してくれた勇者に感謝するだろうと思われた。しかし、一つの問題点により、勇者を恨む者も少なくはなかった。
破壊、破壊、破壊…。勇者の戦いには、常に破壊が付いて回った。
慣れ親しんだ故郷の景色を一変させられ、壮大な森林を水浸しにし、大地には巨大なクレーターを作り、神々が住むとされた聖なる山を削ったりもした。
竜を倒すためとはいえ、その被害は甚大である。まさに疫病神であった。
それでも勇者と呼ばれているのには理由があった。人々を不幸のどん底に陥れた後、信じられないほどの幸福をもたらすからだ。希少鉱物、温泉、宝石鉱脈、古代遺跡。故に、人々は、勇者をこう呼んでいた。破壊と再生を司る“へっぽこ勇者”と…。
これは、超獣神の一体“超鳳神グランゾル”と“へっぽこ勇者ダイ”の、愛と友情と意味不明な冒険物語である。