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聖戦士とは、完全出来高制の高給職のこと

『小影さん、私たちがあなたを雇うというのはいかがでしょう?』


 雇う?


『聖戦士として雇うのよ。つまり配給制。働いた分だけ賃金を得るのよ』


 賃金……お金!?


『死神通信であなたのプロフィールを調べてみたのですが……ああ、死神通信というのは死神クラスの天使、あるいは神に帰順した堕天使たちが一般天使たちに公開している人間のプロフィールを載せたネット通信のようなものです。で、あなたは異常にお金に執着を持っているとか。ですから、配給制を取ろうかと』


 ふむ。お金が絡むとなれば少し考えないでもない。


「ところで、聖戦士……ルミナスナイトって何するの?」


『そうねぇ、基本的には魔物退治?』


 魔物退治。どうでもいいようにハニエルが言うが、その魔物というのは……

 一瞬、牛頭鬼の顔が浮かんだ。

 あれみたいなのを……戦って倒す? 私が?


『後は~ま、いろいろよねぇ。人助けしたり、魔穴塞いだり、でも、やっぱり魔物が大体絡んでるだろうから、魔物退治になっちゃうか』


「絶対無理。私があんなの適うわけないし」


『あ、それは大丈夫。そのためのルミナスストーンなんだから。身体能力は人のときより格段に強くなるし』


『ちなみに、魔物は低級のもので一体倒すごとに一千万だしましょう。いえ、偽札ではありませんし、本物の日本紙幣です』


 一千万!? と驚いたものの、さすがに天使がそんな大金を持っているだろうかという疑問が沸き起こる。

 それを目だけ見て判断したんだろう、ファニキエルが先手を打って銀行振り込みだと現実味のあることを伝えてきた。


『中級は五千万、上級なら一億だしましょう。魔王クラスを退治できれば一兆でも構いません。魔統王ならばいくら給金を差し上げても構いません』


「や、やりましょうッ! やります! やれます! やらせてくださいッ!」


 見事に落ちた。自分でもアホだな……なんて思ってしまうものの、やっぱりそこまでつまれちゃ動かないわけには行かなかった。

 きっと今の私の目は$マークになっているだろう。

 そこまでされるとあっちゃ命かけてでもやる価値はある。

 魔統王、そいつさえ倒せば世界すら買えるではないか。ふふ。ふふふ。


「ところで、魔統王ってどんなクラス? いや、そもそもその低級とかの判別は?」


『ヒエラルキーはご存知ですか? 天使では……例えば低級。エンジェル、アークエンジェル、プリンシパリティという階級の天使たちがこれに相当します。魔界でも同じように種族によって下級、中級、上級などと天界で決められた級位に分けられています』


 へぇ。あ、でも聞いた事はあるかもしれない。

 プリプリなんとかいうのは知らないけど。


『低級ならピクシーやオキュペテー、ケットシーなどがコレに相当しますね。基本的には人間に友好的な種族が多いです。中級はエルフや、ネルピクシー、ドワーフもですね。人との交流はあまりなく、敵意すら抱いているものが多いです。上級といえば、やはり邪龍たちでしょうね。九頭龍やワイバーン、他にもいろいろです。この辺りのクラスは大天使と同等の力を持っていますので、私などでは他の天使数人と協力してようやく一体倒せるといったところでしょうか』


 つまり、魔物の方が実力的には天使より強いと。

 正義の軍団大丈夫か!?


『魔王は天使長が束になっても勝てないような実力の持ち主がごろごろいます。めったに人間界にちょっかいは出してこないので放っておいてもいいのですが、一体倒すにも天使は軍団で当たらなければならないとか。勝手に魔界王とか魔夜王とか、魔と王の間に自分を示すような一文字を入れて個性付けしていますね。魔統王というのは魔界の統一者です。現在の魔統王は、我等が神ファスト様より後にこの地球へとやってきた原初の柱、ロストと名乗る全ての魔族を統べる者です』


 ほえ~、と納得しかけて、一つ気にかかる単語がでてきたことに気付いた。

 ファニキエルはさっき、原初の柱、そう言った。

 もう一人、誰かが何とかの柱を名乗ってた気がする。


「ねえねえ、原初の柱って?」


 興味を抱いたので聞いてみる。


『原初の柱というのは、言うなれば神ですね。人間は多分知らないでしょうが、この世界が出来上がるまでの過程に地球に降り立った六つの神がいたそうです。初めに地球上に降り立ったのが我等が唯一神、ファスト様。と……確かラストでしたか。それから海王神となったミスト。ロストと降ってきて、最後に現れた二柱が……』


『ルストとメルト。消失の柱と溶解の柱にして人を作りし神。楽園を追われたアダムとイブ。ファスト様を天界へと追いやり、ロストを魔界へと追いやり、地上を自分たちの眷属で掌握した奴らなのよ』


 メルト……そうだ。

 あの声の主は確かにメルトと名乗っていた。

 なぜあの場所で聞こえたのかは分からないけど、あの声は……メルトという名の神様?


『奴らは他の神々が眷属使って潰しあいで疲弊してるとこに金色に光る隕石に乗ってやってきたのよ。で、瞬く間に蔓延。ロストの眷属だった恐竜たちがほぼ死滅したのは良かったものの、私たちの祖先の翼竜たちまで死滅しかけたのよ』


 ハニエルの言葉には棘があった。当に怨み辛みを吐いているといった感じさえする。

 でも……金色の石。それは……もしかして……

登場人物


 ひじり 小影こかげ

  現在16歳、彼氏いない歴イコール年齢の少女。

  基本金かお茶にしか興味がないので、金貸しの回収を行う以外は緑茶をすすってぽけっとしている。

  特技に瞬間記憶を持ち、金貸し業の関係で覚えた指弾とデビルスマイルを得意とする。

  座右の銘はお前の物は俺のモノ。貸したら返せ命を掛けて。


 結城ゆいしろ 杏奈あんな

  現在16歳、彼氏無し。

  小影曰く、紫色に染めたけど、髪が伸びたせいで半分より下だけが紫色になっちゃったとっても可哀想な人らしい。

  不良生徒になりかけていたが、小影に打ちのめされて以降小影のツッコミ役にされる。

  姐御肌らしく悪態付きながらも手伝ったりする様が密かにクラスメイトから人気を集めている。


 ハニエル・ルーマヤーナ

  神の愛と称される大天使の一人。

  全ての愛される要素を内在し、顔は清楚に、身体は妖艶に。でも思考は限りなく幼児に近いある意味残念な存在。

 ただし内包する知恵と頭の回転は凄まじく、先見の明を持つため落ち零れとされる天使から大天使候補の原石を発見するのが上手い。


 ファニキエル・シュイタット

  ハニエルにより見出された落ち零れの天使。

  前回の天使試験で見習いのまま消失の危機を迎えていたが、ハニエルにより見出され付き人のような役割についている。

  未だハニエルが見出した実力は開花しておらず、実力は限りなく弱い。


 牛頭鬼

  黒い靄から発生した悪魔。

  黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。

  夜間の校舎内を見回る様に動いている。

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