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雪解けの春に

 我が行ったのは簡単だ。

 我が眷族としての能力を手に宿し青鬼の腕に触れるだけ。

 たったそれだけの一撃だ。


 だが、物理的に殴るより、神聖技とやらを打ち込むより、確実に相手を無力化する一撃だ。

 我の指先が触れた青鬼の腕が急激に溶け始める。

 突然の出来事に青鬼も気付かなかった。


 自分の腕が解けているという現象が理解できず、思わず魅入る。

 手に力を入れて増川健治を握りつぶそうとしていた青鬼だが、その力を入れた先の掌が腕と共に崩れ落ちる。

 骨も残さず溶け去った腕には痛みすらもない。

 ただ。手の感覚が消え去っただけだ。


 意味は分からなかったが恐怖は伝わったらしい。

 青鬼が初めての悲鳴を叫ぶ。

 余りの絶叫にファニキエルが思わず飛び起きていた。

 鳩のままだったので慌てて人型へと変化している。


 神殺物未は完全に戦意喪失だ。

 初戦闘で満足に敵にダメージすら与えられず、圧倒的脅威を誇る青鬼が現れれば仕方はあるまい。

 小影もこやつは荷が重かろう。

 このまま我が汝の身体、もうしばらく操らせて貰うぞ。


 纏うはメルト、全てを溶かすイメージ。

 神聖技を操る様に我は我自身をイメージする。

 小影の身体で放つにはこうしたイメージを作りだすのが一番伝えやすいようで、小影の身体全身が淡い緑色の光を放ちだす。


「そうだな。小影風にいうなれば……雪解けの春に(メルティング・スノウ)とでも名付ける必殺技というものになるだろうか」


『こ、小影さん! 気を付けてくださいっ。そいつは青鬼、中級魔族ですっ! 今のあなたでは……』


 今更過ぎる忠告だ。正直意識すら向ける気にならない。ファニキエルは無視だな。

 いいか聖小影、お前が見ているかどうかは知らんが、この程度の敵に負けている場合ではないぞ。主にはルストを探して貰わねばならんのだからな。

 だから、我が力の一端を見せてやる。

 早く使いこなせるようになれ。主の身体の、今や殆どを補佐している我が力の一端を!


 我は額のバンダナを取り去る。

 そこに描かれた紋様、エアメタルが光を発していた。

 黄金色に輝く光に我が力を融合させる。


 エアメタルには無数の特性がある。

 その一つが、我等の力を保存する。そして共鳴させることで周囲に共振、つまり能力を振り撒くことが出来るのである。

 本来ならば接触することでしか感染出来ない我が眷族を、空中拡散の波状攻撃として前方へとうちだすのだ。


「雪解けの春に(メルティング・スノウ)」


 金色の光から緑色の光へ。

 その光は波状に青鬼へと注がれる。

 焦って逃げようとする青鬼だったが、波の到達には間に合わなかった。


 青鬼の身体が溶け始める。

 まさに春になり、雪が溶け去っていくように、徐々に身体が融解を始める。

 痛みはなく足が、手が、胴体が溶ける状況に、青鬼はただただ絶望の悲鳴を轟かす。


『こ、これは……何なのですかこれは……』


 必死に逃れようとする青鬼、しかし両足が崩れて溶け去ってしまっている以上、彼に抗う術などなかった。

 途中で逃走を諦め私を殴り殺そうとしてくるが、振り上げた拳が溶けてしまえば攻撃など出来るはずもなかった。


 やがて顔すらも溶け始める。

 命乞いをするように悲鳴を上げる。

 こんな死に方は嫌だと、正々堂々と戦えと、叫んでいるようにも見えた。

 だが、すまんな。我が行えるのは溶かすことのみだ。

 闘いなど出来はしないのだよ。初めから、そんな術は我に存在していない。


「さぁ、脅威は去った。後は、お前次第だ小影。できるならば、精神異常になってくれるな。別の身体を探すのは骨だ」


 それだけを伝え、我は静かに目を閉じた。

 表層部から退き小影へと主導権を舞い戻す。

 どうやら今のやりとりで正気には戻っていたようだ。




 ふぅ……さすがに今のはヤバかった。

 私としたことが過去のトラウマ発症させてしまうとは。

 思考停止していた時はメルトの奴が身体を操って何かしてたらしい。


 ついさっき我を取り戻してたから何してたかはよく分からないんだけどさ、知らない間に青鬼さんが居なくなってます。

 ただ、青色のペンキでもぶちまけた様な水溜りが目の前に存在してるけど。


 ―――小影よ、その青色の液体なのだが、お前以外は触れないように言っておけ。しばらくは接触感染で融解するからな―――


 ……あんた一体何したんだ?

 にしても、なんか身体がだるい。気のせいかな? いや、たぶん筋肉痛みたいなのになってる。

 メルト曰く急激に動いた副作用だそうだ。

 思考停止中の身体を操り窮地を救ったんだからそのくらいは許容してくれと言われてしまった。


 しかし、さすが神様の一人というべきか、あの青鬼を倒すとか。

 あ、でも、ファニキエルたちからすれば私が倒したようにしか見えないんだよね?

 ラッキー、証人多数で高給ゲット!

 人の身体を勝手に使ったこと? 不問にしますよ。お金増えたし。

登場人物


 ひじり 小影こかげ

  現在16歳、彼氏いない歴イコール年齢の少女。

  基本金かお茶にしか興味がないので、金貸しの回収を行う以外は緑茶をすすってぽけっとしている。

  特技に瞬間記憶を持ち、金貸し業の関係で覚えた指弾とデビルスマイルを得意とする。

  座右の銘はお前の物は俺のモノ。貸したら返せ命を掛けて。

  聖戦士になったようです。ルミナス・スプリングと名付けられた。

  メルトに寄生されている。ルストが見つかるまでは共生するようだ。


 メルト

  原初の柱の一つであり地球外生命体の細菌。

  時空石と呼ばれる黄金に光る石の内部に存在していて地球へと降って来たらしい。ルストと共に地球へ飛来したが、長い年月を経てルストは行方不明となった。

  以来ルストを探しているのだが、空気感染型のルストとは違い飛沫接触感染型のメルトは自身を運べる存在がいなければ移動できない。

  人間をルストと共に造り出した神らしいが、生物に触れると相手を融解させてしまう特性を持つ細菌。生き物を媒介にする場合は特定の容器である必要がある。


 結城ゆいしろ 杏奈あんな

  現在16歳、彼氏無し。

  小影曰く、紫色に染めたけど、髪が伸びたせいで半分より下だけが紫色になっちゃったとっても可哀想な人らしい。

  不良生徒になりかけていたが、小影に打ちのめされて以降小影のツッコミ役にされる。

  姐御肌らしく悪態付きながらも手伝ったりする様が密かにクラスメイトから人気を集めている。


 神殺かみさつ 物未ものみ

  父と兄が死んだため神殺組組長となった少女。

  パックの緑茶が好きらしい。

  闇金融の蔓延を不快としていて彼らの殲滅を始めているが、今のところは弱小金融の成敗だけで大物を相手にする実力には届いていない。

  組員の殆どが警察に捕まったせいで弱体化を余儀なくされたらしい。

  ルミナス・ウインターとして魔物退治に参戦。

  聖戦士として実力を付けて密かに小影抹殺を狙っている。


 増川健治

  渋いサングラスをかけた丸刈りの厳ついおじさん。闇金融をしている人。

  声がでかいので普通に話しかけると子供が泣き叫ぶ。

  金ラメや龍柄のシャツを好んで着ている。

  子供好きで野花を愛する性格だが、厳つい容姿のせいでよく通報される。


 ハニエル・ルーマヤーナ

  神の愛と称される大天使の一人。

  全ての愛される要素を内在し、顔は清楚に、身体は妖艶に。でも思考は限りなく幼児に近いある意味残念な存在。

 ただし内包する知恵と頭の回転は凄まじく、先見の明を持つため落ち零れとされる天使から大天使候補の原石を発見するのが上手い。


 ファニキエル・シュイタット

  ハニエルにより見出された落ち零れの天使。

  前回の天使試験で見習いのまま消失の危機を迎えていたが、ハニエルにより見出され付き人のような役割についている。

  未だハニエルが見出した実力は開花しておらず、実力は限りなく弱い。


 舞羽まいばね 椋鳥むくどり

  学校に魔穴を開いたと思しき黒幕。

  鳥人間らしい。

  昼間は人間に擬態して学生として生活している。


 牛頭鬼

  黒い靄から発生した悪魔。

  黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。

  夜間の校舎内を見回る様に動いている。


 馬頭鬼

  黒い靄から発生した悪魔。

  黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。

  夜間の校舎内を見回る様に動いている


 青鬼

  魔穴から出現した中級魔族。

  人語は話せないがそれなりに意味を知ることはできているらしい。

  ハーフハーピーよりもずっと実力が上のため従属はしないらしい。

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