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90円の緑茶がほしい? じゃあ120円で

 昼休憩、謝らないと杏奈がパシパシ叩いてくるので、私は最っ高のティータイムであるこの昼休憩を潰して、先生捜索に赴いていた。

 さて、校舎は三つ。

 校門から校庭を経て真っ直ぐ行ったところにある校庭と校舎を分け隔てているコンクリートのおっきな階段を登って目の前が第二棟。


 それから渡り廊下を介した左側に第一棟と右側に第三棟が並行に並んでいて、校門から校庭を越えて第三校舎より右側に、これまた校舎と並列に並んで第一体育館、武道館、図書館、ついでに食堂が連立している。第一棟の向かいにはクラブ棟とプール。それから第二体育館。


 校舎を挟んだ校門の反対側には裏門がある。

 私は二年生なので第一棟。

 丁度体育館への渡り廊下の近くに下足場があるので、校門から左に折れて校庭突っ切りコンクリートの段を上がっていかなきゃならない。

 まぁ登校と下校の時だけだし、この際どうでも良いね。


 校舎は全部三階建てで、二年三年はこの第一校舎。

 一年だけがなぜか知らないけど第二校舎に特別教室と一緒に入れられている。

 第三校舎は職員室など教員関係が多い。で、この職員室に先生はいなかった。


 全く、どこに行ったんだかあの先生。

 仕方がないので丁度近くを通りかかった女生徒に声をかける。

 稀に見る鶏冠頭……おっと、これを口にだすとまた杏奈に叩かれてしまう。


「ねぇねぇ、ヅラ先生見なかった~?」


 女生徒はきょとんとした顔をした後、ああと頷いて、指を差す。


「あっちにいたよ、三角座りで泣きながらのの字書いてたけど」


 指差す方向に向かって私は歩きだす、っと、ああ、忘れるとこだった。


「ありがとね~、鳥さん」


「と、鳥?」


 女生徒が意味が分からず聞き返してくるけれど、既に私は第三校舎を出て職員用の駐車場へとでようとしていたため、聞き流しておいた。

 お、いたいた。ホントに三角座りでのの字書いてる。

 背後にずも~んって言葉が浮かんでそうな雰囲気だね。


「お~先生、はっけ~ん」


「ぬはぁっ!?」


 一瞬にして器用に飛び退き警戒態勢をとる先生。


「な、ななな、なんだッ!? 何をしに来たんだッ!? これ以上まだ私を蔑み足りないのかッ!?」


 錯乱してるのかね?


「今思えば、入学当初からだったッ! 教員紹介の時に私の時だけヅラだヅラだと叫ぶ! 授業に顔をだせばチャックだモッコリだと辱めるッ! 体育祭では旗に私が風に飛ばされたヅラを追っている絵を堂々となびかせる! 何気に絵が上手いせいでPTAにまでヅラ先生と呼ばれるようになったじゃないかッ! 挙句は去年の文化祭だ! なんだあの毛生え草汁はッ!? 全然効かなかったじゃないかッ!!」


 最後の、私のクラスはメイドカフェだったような記憶があるんですけど。ただのあてつけなんじゃない?


「え……と……ごめんちゃい」


「だいたい、なんでお前の様な奴が中途半端に成績がいいのだッ! 世の中間違っているッ! そもそ……は?」


「だ、だから、ごめんちゃい、せんせ~。ちょいと言い過ぎたみたいです」


 とりあえず、これくらい謝っとけば……!?

 先生は泣いていた。そりゃもう大洪水になりそうなくらい。


「あ、謝った……あの聖小影君が? 奇跡だ。おお、奇跡だッ! 伝えねば。この感動を全世界に知らしめねばぁぁぁッ!!」


 なんだかよく分からないけど、先生はやる気を出してくれたようだ。

 物凄いスピードで走りだしていった。

 ……あ~、喉渇いた。

 お茶……教室まで持たない。あ、この近くだっけ食堂。

 ノロノロと食堂への道を進み、食堂に入る。


 既に先生のことなんて頭の中からすっぽ抜けていた。

 食堂はお昼のせいかかなりの賑わいを見せていて、食堂のおばちゃんやパン売りのおじちゃんは大変そうにせかせかと動いていた。私は列を作っていた入り口手前の自販機に並び、自分の番になるのを待つ。


 自販機でパックのお茶を買う。一個……も一個いっとくか。

 ポチッと二回ボタンを押した瞬間、売り切れの文字点灯。

 後ろから「あっ……」という呟きが漏れた。


「ほえ?」


 二本のパックを取りだしながら後ろを見ると、悔しそうに私を睨みつけるお下げの女の子。

 うわぁ、楽しいくらい周りの気温をぐんぐん下げてる。


「あの、そのパック……一つ譲っていただけませんか」


 押し殺した冷たい声で、聞いてくる。

 私は考え、自販機の表示を見る。90円。


「百二十円」


「は?」


「買った労力代と私のティータイム削減代込み」


「くぅっ……」


 恨みがましく私を睨みつけ、小さく呟く。

 このクソアマァとか聞こえたんだけど。

 でも、彼女は結局百二十円を私に差しだした。


 他のジュース類ではなくこのパックのお茶がよかったらしい。

 よっぽど欲しかったんだこのお茶。

 一つ彼女に手渡して、自分はパックにストローを突き刺して一口。


「んむ、やっぱ緑茶の方が良いな。あんまし美味くな……」


「殺すッ」


 満面笑顔で感想を洩らした瞬間、背後に決まるハイキック。

 私の意識が暗闇へと消え去った。

登場人物


 ひじり 小影こかげ

  現在16歳、彼氏いない歴イコール年齢の少女。

  基本金かお茶にしか興味がないので、金貸しの回収を行う以外は緑茶をすすってぽけっとしている。

  特技に瞬間記憶を持ち、金貸し業の関係で覚えた指弾とデビルスマイルを得意とする。

  座右の銘はお前の物は俺のモノ。貸したら返せ命を掛けて。


 結城ゆいしろ 杏奈あんな

  現在16歳、彼氏無し。

  小影曰く、紫色に染めたけど、髪が伸びたせいで半分より下だけが紫色になっちゃったとっても可哀想な人らしい。

  不良生徒になりかけていたが、小影に打ちのめされて以降小影のツッコミ役にされる。

  姐御肌らしく悪態付きながらも手伝ったりする様が密かにクラスメイトから人気を集めている。

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