以後、短い人生お見知りおきを
「やられた。私をダシに使うなんて……」
しかめっ面の似合う顔ですこと。
物未は交渉に自分が強制参加させられていたことに苦虫を噛み潰した顔をしているが、おかげで私はお金を返して貰えたので問題無し。
悔しそうにお金を返す曽我屋さんが印象的だった。
こいつはブラックリスト乗せて先生に報告しとこう。
顔見知りだからと甘い顔してると思うなよ。
金に関して金貸しはシビアなんですよ。
次は、多分どこからも借りれなくなるか矢の催促が来る高利貸しからしか借りれないだろうな。
「でも、あなた金利は随分普通なのね」
「ん? そりゃあ良心親切真心お届けが信条ですよウチは。にこにこにっこり金融、よかったらあんたも金借りる?」
「死んでも御免被るわ。でも、金を貸すのは裏稼業でしょう? なのに適正金利なんて儲けはでないんじゃないの?」
「私の場合は確実に金を返して貰うって条件が付いているからさ、適正な金利で十分元取れるの。ついでに言えば趣味の段階だしね。まだ」
お母さんが働いているので私は小遣い稼ぎみたいなもんだ。
それでも野中さんみたいに慰謝料などをふんだくったりすることで十分過ぎるお金は貰ってるんだけどね。
父さんの貰ってしまった借金もなんとか返し終わったしそこまで高金利にする必要はないのだよ。
「まだ。というところが少し気にはなるけれど……過剰な取り立て以外はまともだということは理解したわ。潰すけど」
「それはどうも。理解してくれて嬉しいよ。埋めるけど」
向い合ってデビルスマイル同士で笑い合う。
周囲に人が居なかったのでツッコミ役は皆無である。
そうやって睨み合っていたものの、このままでは日が暮れてしまうのでどちらからともなく視線を逸らして歩きだす。
曽我屋さんの後は風見さん、虻川さん、坂田さん、三神さんと回り、ようやく学校へ戻る帰路についた。
そんな時である。
珍しいことにお友達に鉢合わせた。
増川健治である。
その厳つい龍柄のシャツを着た男を見付けた瞬間、物未が銃に手を掛ける。
丁度怒声張り上げある家のドアを叩いていたところだ。取り立て中らしい。間の悪い。
さすがにまだ引き抜いてはいないが、いつでも抹殺出来る体勢である。
冗談でも狙わせる気はないので片手を上げて声を張る。
「健さ~ん」
「おおぅ!? なんや小影ちゃんやないか。どないしたんや」
健さんは怒鳴るのをやめると、声音を一気に変えて気さくに手を振ってきた。
これを見て物未が舌打ちする。
一応、学校の魔穴なんとかするまでウチとは休戦、だったよね。
「あ、物未さんよ、紹介すんね。にこにこにっこり金融子飼いの健さん」
「誰が子飼いやねんっ。まったくかなんな小影ちゃんには。あぁと、そっちの嬢ちゃんは初めましてやな。よろしゅうなぁ」
「声はデカいし、顔は酷いけど根はやさしいらしいよ。自称だけど」
「優しい奴は闇金融なんてしやしないでしょうが。ブラックリストには乗せておくわ。初めまして増川健治さん。神殺組組長。神殺物未です。以後、短い人生お見知りおきを」
「……は? 神殺……組ぃ!? ちょ、小影ちゃん、なんつー相手と一緒におるんや!? ワイが神殺組のリストに入ってもうたやんか!?」
「いやいや、既に合う前から名前知ってたみたいだからリストには既に入ってたみたいだよ」
馬鹿だなぁ健さんは。というような口調で片手をひらひら振る私。
「今は私と休戦中なんでしばらくは安全と思っていいよ」
「リストの上位には組み込まれてますけどね。休戦終了後は夜道と一人歩きにお気を付けて」
「あっかーん。このお嬢ちゃんマジもんやん!? スカートからチャカ見えとるしっ!?」
しばらく世間話をしたのだけど、とりあえず先生に曽我屋さんの件を伝えて貰うことにした。
私達はこれから学校に戻らなきゃなんないしね。
だから話しを切りあげると私たちは健さんと別れることにした。
彼は私達が歩きだした後、またドアを叩きながら大声張り上げ始めた。
あの取り立てられてる人、どうなるんだろうね。
ちなみに、実は先生や健さんは私の立ち上げてるにこにこにっこり金融ではなく戸坂金融という先生の名前入りの金融会社だったりするのだけど、まぁ物未が勝手に感違いしてるみたいだし、放置だ。
気付かれたところで私に問題は無いし。
健さんの身がちょっと早めに危なくなる程度しかデメリットが無いので言わぬが花である。
校門までやってくると、鳩が一羽飛んできた。
無遠慮に私の頭に止まってくれる。
肩に止まるのかやだなぁ。とか思っていただけに、これはさすがにイラッと来た。
よかろう、ならば戦争だ。
『小影さん。丁度いい時に来てくれました。凄い魔穴を見付けたんです。付いて来てください!』
「凄い魔穴って……まぁいいけどさ。それより頭に止まるのどうにかしない?」
「似合ってるわよ。ぶふっ」
「ファニキエル、物未と同様に臓器売られたくなかったら降りろ」
『は、はいっ』
私の底冷えする声に、思わず素直に飛び下りるファニキエルだった。
登場人物
聖 小影
現在16歳、彼氏いない歴イコール年齢の少女。
基本金かお茶にしか興味がないので、金貸しの回収を行う以外は緑茶をすすってぽけっとしている。
特技に瞬間記憶を持ち、金貸し業の関係で覚えた指弾とデビルスマイルを得意とする。
座右の銘はお前の物は俺のモノ。貸したら返せ命を掛けて。
聖戦士になったようです。ルミナス・スプリングと名付けられた。
メルトに寄生されている。ルストが見つかるまでは共生するようだ。
メルト
原初の柱の一つであり地球外生命体の細菌。
時空石と呼ばれる黄金に光る石の内部に存在していて地球へと降って来たらしい。ルストと共に地球へ飛来したが、長い年月を経てルストは行方不明となった。
以来ルストを探しているのだが、空気感染型のルストとは違い飛沫接触感染型のメルトは自身を運べる存在がいなければ移動できない。
人間をルストと共に造り出した神らしいが、生物に触れると相手を融解させてしまう特性を持つ細菌。生き物を媒介にする場合は特定の容器である必要がある。
結城 杏奈
現在16歳、彼氏無し。
小影曰く、紫色に染めたけど、髪が伸びたせいで半分より下だけが紫色になっちゃったとっても可哀想な人らしい。
不良生徒になりかけていたが、小影に打ちのめされて以降小影のツッコミ役にされる。
姐御肌らしく悪態付きながらも手伝ったりする様が密かにクラスメイトから人気を集めている。
神殺 物未
父と兄が死んだため神殺組組長となった少女。
パックの緑茶が好きらしい。
闇金融の蔓延を不快としていて彼らの殲滅を始めているが、今のところは弱小金融の成敗だけで大物を相手にする実力には届いていない。
組員の殆どが警察に捕まったせいで弱体化を余儀なくされたらしい。
ルミナス・ウインターとして魔物退治に参戦。
聖戦士として実力を付けて密かに小影抹殺を狙っている。
増川健治
渋いサングラスをかけた丸刈りの厳ついおじさん。闇金融をしている人。
声がでかいので普通に話しかけると子供が泣き叫ぶ。
金ラメや龍柄のシャツを好んで着ている。
子供好きで野花を愛する性格だが、厳つい容姿のせいでよく通報される。
ハニエル・ルーマヤーナ
神の愛と称される大天使の一人。
全ての愛される要素を内在し、顔は清楚に、身体は妖艶に。でも思考は限りなく幼児に近いある意味残念な存在。
ただし内包する知恵と頭の回転は凄まじく、先見の明を持つため落ち零れとされる天使から大天使候補の原石を発見するのが上手い。
ファニキエル・シュイタット
ハニエルにより見出された落ち零れの天使。
前回の天使試験で見習いのまま消失の危機を迎えていたが、ハニエルにより見出され付き人のような役割についている。
未だハニエルが見出した実力は開花しておらず、実力は限りなく弱い。
舞羽 椋鳥
学校に魔穴を開いたと思しき黒幕。
鳥人間らしい。
昼間は人間に擬態して学生として生活している。
牛頭鬼
黒い靄から発生した悪魔。
黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。
夜間の校舎内を見回る様に動いている。
馬頭鬼
黒い靄から発生した悪魔。
黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。
夜間の校舎内を見回る様に動いている




