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卑怯? 褒め言葉です

「な、なぁぁ!?」


 さすがに巨大で目視可能な紗那螺弾は風で何とか出来たようだが、小型過ぎて目視確認がし辛く風を切り裂き到達する銃弾相手では、黒幕さんの風魔法も要を成さなかった。

 驚き目を見開く彼女は、穿たれた羽を必死にはためかすが、両方のつり合いが取れなくなったようで、錐揉みを行いながら落下し始めていた。


 ぴぎゃっ。と短い悲鳴を上げて地面に激突する。

 やったか? と思ったけど、これフラグだ。気を引き締めよう。

 恐る恐る近づいて行くと、案の定、彼女は生きていた。


 恨みがましい視線で私を射抜く。

 ゾクゾクします。その悔しげな瞳、頭を足でぐりぐりとしてあげたくなるね。

 札束で顔を叩いてやるのも良い。実に良い。


「そんなモノを使うなんて卑怯だわ!」


「真剣勝負ですぜお嬢さん。卑怯上等恐悦至極。ここから先は取り立てモードで行きましょうか」


 ブラックスマイル張りつけて、私はゆっくりと彼女へと近づいて行く。

 ハーピーだか鳥人間だか知らないけどさ、牛頭鬼を召喚したってんなら、それはつまり私が死に掛けたのはこいつのせいってことだよね?


「楽に死ねると思うなよ?」


 指の関節をバキリボキリと鳴らしていた私。

 さぁ処刑という名の尋問を始めましょうか?

 といった段階で、背後から声が掛かった。


「聖小影、逃げなさいっ!」


 物未の声に何故に? と思いながらも身体を仰け反らせた。

 反射的に行った動作だった。

 すぐ目の前を、一瞬遅れて通り過ぎていく毛深い腕。


 もしも声に反応しなかったらと思うと冷や汗が流れた。

 とっさにバックステップして距離を取ると紗那螺を構えて防御態勢を取る。

 視界が開けた御蔭でようやく襲撃者を視界に収めた。


「馬頭鬼!?」


 ここで来やがったよお馬さん! 余りにバッドタイミング過ぎて笑えない。

 二対一か、これはヤバいかもしれん。

 気を引き締め対峙しようとして、ふと気付く。


「ちょいと物未さんや」


「な、なに……?」


「私を認識しておいでですかな?」


「はぁ? 認識って、そりゃ目の前で暴れられればわかるでしょ。でもその服似合ってないわよ聖小影」


 ちょっとハニエルさんどういう事!?

 私変身した後は顔誤認システムっつーのが効いてるんじゃないの!?

 普通に認識されちゃってるんですけど!?

 神殺物未。どうやら私と同じく神聖技の素養があるらしい。

 最悪の仲間が出来そうな予感であります。


『もしかすれば……小影さん、ちょっとハニエル様呼んできますので少々お待ち下さい』


 いや、待てってあんた、相手は待っちゃくれない……って行っちゃったよ。


『ブルアアアアアアアアアアアアアアッ!!』


 馬頭鬼が涎垂らして咆哮する。

 ああもう、こうなったら二対一でもやるっきゃねぇ。ファニキエルにはハナっから期待しちゃいないし。

 紗那螺を構え直し腰を落とす。


「カモン馬頭さん。私の金になるがいいっ!」


『ブルルラァァァッ』


 私に向って突撃して来た馬頭鬼。

 接近と同時に私は攻撃、ではなく足を蹴りあげ校庭の砂を巻き上げる。

 目に入ったらしい。絶叫迸らせ目を塞いでいた。


『ちょ、それ卑怯っ!』


 鳥頭が何か言ってるけどどうでもよし。

 私は踏みこむと共に相手の顎目掛けて膝を打ち込み頭蓋を手にして馬頭鬼の真上で倒立。

 そのまま背後に倒れて後頭部を背面蹴り。

 そのままもう片方の足で馬頭鬼の背中を踏んで蹴り倒す。


 馬頭鬼を起点に飛び上がり。身を縮めてくるくる回る。

 地面に着地の瞬間身体を開いて足から着地したモノの、失敗した。

 今の背中踏んだ時に紗那螺弾連打しときゃよかった。


 無様に倒れた馬頭鬼がゆらりと起き上がる。

 憤怒に彩られた顔は私を睨みつけ、涎だらだらで足を振り上げ地面を掘る。

 勢いを付けているつもりらしい。

 来るか。良いだろう、神聖技をしっかりと喰らわせて……あ、その前にアレ試しとこう。

 悪魔相手に効くなら面倒な神聖技覚えるより確実だし。


 迫る馬頭鬼から繰り出される拳の一撃を回避して、右手に力を溜める。

 殺、殺、殺、殺……

 行くぜ必殺!


「大いなる一撃グレイテスト・ストローク!」


 懐に入った私は地面をしっかりと踏みしめ、気合い混じりに拳を突き出す。

 紗那螺と拳が紅い光を纏う。

 馬頭鬼の腹におもいきし打ち付けた。


 馬頭鬼の悲鳴が響く。

 拳が何かを打ち破る感覚を伝えて来た。

 どうなった? と見て見れば、馬頭鬼の腹が一部消失していた。


 ―――これは、ルストの能力か!?―――


 ルスト? ちょ、いきなりなんですかねメルトさんや。頭の中で叫ばれると響くのですが。


『やってくれるじゃないのさ。馬頭鬼、今日は一端引くよ!』


 さすがに馬頭鬼まで失うのはマズいと思ったのか、鳥頭が叫ぶ。

 一足早く既に校舎内に退避していたのは驚きだ。

 馬頭鬼と共同で私に闘いを挑むことなく囮にして逃げるとは。

 そっちのが卑怯じゃん!

登場人物


 ひじり 小影こかげ

  現在16歳、彼氏いない歴イコール年齢の少女。

  基本金かお茶にしか興味がないので、金貸しの回収を行う以外は緑茶をすすってぽけっとしている。

  特技に瞬間記憶を持ち、金貸し業の関係で覚えた指弾とデビルスマイルを得意とする。

  座右の銘はお前の物は俺のモノ。貸したら返せ命を掛けて。

  聖戦士になったようです。

  メルトに寄生されている。ルストが見つかるまでは共生するようだ。


 メルト

  原初の柱の一つであり地球外生命体の細菌。

  時空石と呼ばれる黄金に光る石の内部に存在していて地球へと降って来たらしい。ルストと共に地球へ飛来したが、長い年月を経てルストは行方不明となった。

  以来ルストを探しているのだが、空気感染型のルストとは違い飛沫接触感染型のメルトは自身を運べる存在がいなければ移動できない。

  人間をルストと共に造り出した神らしいが、生物に触れると相手を融解させてしまう特性を持つ細菌。生き物を媒介にする場合は特定の容器である必要がある。


 結城ゆいしろ 杏奈あんな

  現在16歳、彼氏無し。

  小影曰く、紫色に染めたけど、髪が伸びたせいで半分より下だけが紫色になっちゃったとっても可哀想な人らしい。

  不良生徒になりかけていたが、小影に打ちのめされて以降小影のツッコミ役にされる。

  姐御肌らしく悪態付きながらも手伝ったりする様が密かにクラスメイトから人気を集めている。


 神殺かみさつ 物未ものみ

  父と兄が死んだため神殺組組長となった少女。

  パックの緑茶が好きらしい。

  闇金融の蔓延を不快としていて彼らの殲滅を始めているが、今のところは弱小金融の成敗だけで大物を相手にする実力には届いていない。

  組員の殆どが警察に捕まったせいで弱体化を余儀なくされたらしい。


 増川健治

  渋いサングラスをかけた丸刈りの厳ついおじさん。闇金融をしている人。

  声がでかいので普通に話しかけると子供が泣き叫ぶ。

  金ラメや龍柄のシャツを好んで着ている。

  子供好きで野花を愛する性格だが、厳つい容姿のせいでよく通報される。


 ハニエル・ルーマヤーナ

  神の愛と称される大天使の一人。

  全ての愛される要素を内在し、顔は清楚に、身体は妖艶に。でも思考は限りなく幼児に近いある意味残念な存在。

 ただし内包する知恵と頭の回転は凄まじく、先見の明を持つため落ち零れとされる天使から大天使候補の原石を発見するのが上手い。


 ファニキエル・シュイタット

  ハニエルにより見出された落ち零れの天使。

  前回の天使試験で見習いのまま消失の危機を迎えていたが、ハニエルにより見出され付き人のような役割についている。

  未だハニエルが見出した実力は開花しておらず、実力は限りなく弱い。


 ???

  学校に魔穴を開いたと思しき黒幕。

  鳥人間らしい。


 牛頭鬼

  黒い靄から発生した悪魔。

  黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。

  夜間の校舎内を見回る様に動いている。


 馬頭鬼

  黒い靄から発生した悪魔。

  黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。

  夜間の校舎内を見回る様に動いている。

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