公園の浮浪者。じつは某社長さん
次にやってきたのは井手口さんの家だ。
ここの奥さんは元プロレスラーだそうで、近藤さんの家よりも暴力が酷い。
まぁ、あのおじさん虐げられるの好きみたいだから問題はないんだけど。
奥さん嫉妬深いからなァ。
初めて回収しに向った時なんて泥棒猫がぁッとか10歳にも満たない幼女相手に拳振ってきやがんの。
あの頃は実力も無かったし不意打ちだったしでしばらく意識飛んだのは苦い思い出だ。
当然、実力付けてからリベンジして治療代とリハビリ代合わせて500万ふんだくってやったけど。
その時に血で血を争う激闘が繰り広げられたりしたけれど、まぁいい思い出だ。
最後にはボコボコの面引っ提げて互いに肩組んでたりしたっけな。
諍い果てての契りってヤツだ。
そんなこんなでここの奥さんとは結構仲が良い。
ただ、借金回収に向うとやっぱり嫉妬深いので本当にダンナさんと浮気してないか何度も確認して来るのが玉に傷だ。
チャイムを押してしばらく人の良い笑顔のおばちゃん……ではなく夫の方が顔を出してきた。
私の顔を見るなりああ、そういえば。と思い出して財布を取り出す。
うん。楽に4万返還完了だね。
あ、奥さんも居たみたいだ。
奥の方から疑惑の声がしている。
必死に夫が小影さんが回収に来たんだよと告げているが彼女は信じていないようだ。
終いにはまさか本当に浮気? 浮気なのねッ!!
と決めつけてしまい。夫さんの首根っこひっつかんで家の中へと消えて行った。
私の姿、見る事も無かったのでまず誤解は晴れないだろうな。
さらば夫さん、また会う日まで。
妻の怒声と打撃音。
そして夫の悲鳴と嬌声と愛の囁き入り混じった井手口家にはそれ以上居続ける気にならず、私はここから近い公園へと向かうのだった。
夫婦愛っていろんな形があるんだなぁ。少なくとも、井手口さんみたいな夫は願い下げです。
公園はかなりの広さを持つ自然公園である。
公園入り口から手前側は空き地の様に広い砂地が広がり、東側に噴水のある憩いの広場、南側に砂場などと遊具施設。噴水スペースと遊具スペースの間には花畑があり、女の子たちがよく冠作りをしていたりする。
私は作った記憶はないな。その頃は大抵金策に走ってたし。
あ、でも近くの女の子に花輪作って売ったのは数回あったかな。
自分で作るのが面倒だから欲しいって奴がたまにいるんだよ。なので一つ100円で売ったんだけど、なぜか無駄に評判良く売れたっけ。
数カ月で飽きてきたらしく全く売れなくなった花輪が無数に売れ残ったけどね。
元でゼロだからその場に打ち捨てて来てやったさ。
今では花畑に隠れて肥やしになってることだろう。
んで、花畑を抜けた先に森のように大きな植林地帯があり、日光浴を楽しみながら森林セラピー散歩が出来るらしい。
昔は先生が修行とか言って森の木々を避けながら走る練習とか色々やらされた思い出の場所である。
うん、今思い出すとここにある木を全部切り倒したくなってくる。
さて、ここに来たのはちゃんと目的があるからだ。
回収対象者である田辺さんが噴水前のベンチによく腰掛けているのである。
この人は現役のある会社の社長さんだったりする。
影武者立ててよくここで浮浪者のフリをしてるのが日課だったりする。
浮浪者の方がいろいろ情報を集められるからだそうだ。
なんだけど、精神的に浮浪者としてここにいるからか、借りた金を現物で返そうとしてくるコスいおっさんだ。
当然、最初にやられた時は思わず人を疑いそうになったものである。
今、私が人を見た目で信用しなくなったのも、この人によるところが大きい。
凄く善良そうな顔で、柔和に会話をしてくる彼は、相手に警戒心を抱かせないのである。
その話術の巧みさには感嘆のため息しかでない。
さすがに私も見返そうとは思わず、逆に弟子入り志願したほどである。
今では気心しれたおじさんだ。
「またこんなとこに来てんすか」
「おや小影さん。やはり初心忘れるべからずですよ。私は昔ホームレスでしたしね。心機一転始めたことがいつの間にやら大成功を収めただけの男です。偶然と運に味方されたから今の地位になれましたが、運や偶然っていうのはいつの間にか消えるものですしね。何時舞い戻っても良い様に暮らしを忘れないようにしているんです。今でも座右の銘は贅沢は敵だ。ですからねぇ」
あのなんとか王国とか言われている猛獣好きのお爺さんを思わせる笑みを浮かべる田辺さんは噴水を見上げる。
「借金だったね。これでいいですか?」
「はい。500円確かに。それでこれが今回の生活費の500円です」
「……この形式、必要なんですかね?」
「貸した金を返して貰ってその後また借りた。問題はないと思いますよ」
いつものことなので手に入れたお金を即座に田辺さんにおしつける。
形式美的なモノはあるが、これで期限延長が出来るのだから。
登場人物
聖 小影
現在16歳、彼氏いない歴イコール年齢の少女。
基本金かお茶にしか興味がないので、金貸しの回収を行う以外は緑茶をすすってぽけっとしている。
特技に瞬間記憶を持ち、金貸し業の関係で覚えた指弾とデビルスマイルを得意とする。
座右の銘はお前の物は俺のモノ。貸したら返せ命を掛けて。
聖戦士になったようです。
メルトに寄生されている。ルストが見つかるまでは共生するようだ。
メルト
原初の柱の一つであり地球外生命体の細菌。
時空石と呼ばれる黄金に光る石の内部に存在していて地球へと降って来たらしい。ルストと共に地球へ飛来したが、長い年月を経てルストは行方不明となった。
以来ルストを探しているのだが、空気感染型のルストとは違い飛沫接触感染型のメルトは自身を運べる存在がいなければ移動できない。
人間をルストと共に造り出した神らしいが、生物に触れると相手を融解させてしまう特性を持つ細菌。生き物を媒介にする場合は特定の容器である必要がある。
結城 杏奈
現在16歳、彼氏無し。
小影曰く、紫色に染めたけど、髪が伸びたせいで半分より下だけが紫色になっちゃったとっても可哀想な人らしい。
不良生徒になりかけていたが、小影に打ちのめされて以降小影のツッコミ役にされる。
姐御肌らしく悪態付きながらも手伝ったりする様が密かにクラスメイトから人気を集めている。
神殺 物未
父と兄が死んだため神殺組組長となった少女。
パックの緑茶が好きらしい。
闇金融の蔓延を不快としていて彼らの殲滅を始めているが、今のところは弱小金融の成敗だけで大物を相手にする実力には届いていない。
組員の殆どが警察に捕まったせいで弱体化を余儀なくされたらしい。
増川健治
渋いサングラスをかけた丸刈りの厳ついおじさん。闇金融をしている人。
声がでかいので普通に話しかけると子供が泣き叫ぶ。
金ラメや龍柄のシャツを好んで着ている。
子供好きで野花を愛する性格だが、厳つい容姿のせいでよく通報される。
ハニエル・ルーマヤーナ
神の愛と称される大天使の一人。
全ての愛される要素を内在し、顔は清楚に、身体は妖艶に。でも思考は限りなく幼児に近いある意味残念な存在。
ただし内包する知恵と頭の回転は凄まじく、先見の明を持つため落ち零れとされる天使から大天使候補の原石を発見するのが上手い。
ファニキエル・シュイタット
ハニエルにより見出された落ち零れの天使。
前回の天使試験で見習いのまま消失の危機を迎えていたが、ハニエルにより見出され付き人のような役割についている。
未だハニエルが見出した実力は開花しておらず、実力は限りなく弱い。
牛頭鬼
黒い靄から発生した悪魔。
黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。
夜間の校舎内を見回る様に動いている。
馬頭鬼
黒い靄から発生した悪魔。
黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。
夜間の校舎内を見回る様に動いている。




