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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
7/59

121-150

121『自惚れないで』

「でも母さんはところ構わず抱き着いたりいきなりテンションだだ上がりになったりしない、随分真っ当な母さんよ」

「いや、娘相手にそんなお袋怖いだろ」

「あたしじゃないわよ、父さんによ。確かに父さんに似てるからってよく分からない理由で抱き枕にされた事とかあるけど」

「よく分かる理由だろそれ」




122『大人の定義』

「母さんたら、父さんが大好きなのよね。ちょっと父さんの代わりに抱き枕やってくれないかしらって真顔で娘に頼む程度には」

「本人に頼めば良くねぇか?」

「そりゃそうだけど、仕事中よ? 日のあるうちはずっと畑仕事」

「昼寝かよ」

「結局本物が良いって枕抱えて畑に行ったけど」

「大丈夫かお前んち」




123『君の最期に』

「父さんも母さん大好きなんだけど、何でか分かり難いってよく言われるのよね」

「ほー」

「何しろプロポーズの言葉が、お前の最期に立ち会わせろ、らしいから」

「好意、か?」

「この上なく好意じゃない。兄さん曰く、一生キミの傍にいさせて、らしいから」

「そう言われると好意っぽいな」

「むしろ愛よ」




124『噂の二人』

「いきしっ」

「あらパパ、風邪?」

「どっかで噂でもされてんのかね?」

「あらやだ、アタシの承諾もなくパパの噂するなんて、どこのおバカさんかしらあ」

「ウチのガキ共かもな」

「そういえば、シオンがシャオに会いに行くって言ってたわねえ、手紙で」

「元気で何よりだ」

「そりゃアタシ達の子だものお」




125『ただし、ご注意を。』

「ところで、さっきの雫だけで降ってこないんだけど。結局雨じゃなかったのかしら」

「夜露でも落ちてきたんじゃねぇの」

「なら良いんだけど」

「何だ、何か気になるのか?」

「うーん」

「俺としては、さっきから紫雷が静かなのが気になるんだが」

「知らないわよ、懐かれても」

「お前の兄貴ホント何だよ」




126『Marry me?』

「ウチの兄は、いつかうっかり勢いだけでプロポーズして即振られるんじゃないかと思うの」

「ひでぇな、おい」

「多分、時も場所も場合もわきまえずに自分の感情オンリーで突撃すると思うのよね。兄さんが見初めるレベルのヒトなら、まず間違いなく断るわよ」

「何だかんだ言ってアニキの評価高いんだな」




127『手繰り寄せた糸の先』

「いつか運命の赤い糸の君と廻り合うんだ、とか真顔で言いきるのよ」

「言いそう、すげー言いそう。むしろその運命の君が嬢ちゃんだとか言い出しそうでアレなんだが」

「惜しいわね、一緒になってあたしを愛でてくれる女性が理想なのよ」

「あー、お前ら兄妹を直で見た後ならすげー納得する理想の君だわ」




128『きっとたぶん』

「とりあえず結婚する気があるのは救いよね」

「救い?」

「だってそうでしょ。あたしを愛でたいから結婚しないとか言い出さないだけマシじゃない」

「すっげぇ言いそう」

「でしょ?」

「嬢ちゃんが結婚するとなったらどうなるかだな、問題は」

「例えバカでも兄だもの、きっと祝福してくれるわよ……多分」




129『図書室の猫』

「ところでだな、嬢ちゃん」

「なによ、改まって」

「いい加減、紫雷が視界的にウザいんだが。嬢ちゃんよく平気だな」

「コツはね、あれよ。ギルドの図書室で騒ぐバカを見る心地」

「なんだその死亡フラグ」

「そう。あぁ、あの人これから死ぬほど痛い目みるんだな、と思うと広い心で放置できます」

「鬼か」




130『お気に召すまま』

「こっちもひとつ訊きたいんだけど」

「何だ嬢ちゃん」

「寝ないの? 夜明けまでならあたし番してるけど」

「気持ちだけもらっとくわ」

「そう?」

「今回は単独モードで行動してっからな。気にすんな」

「そう。兄さんは?」

「ああシャオ、やっとボクと話してくれるんだね」

「それはつまり寝ないって事?」




131『ねぇ、ダーリン』

「愛しいシャオが起きているというのに、ボクが眠る道理がどこにある?」

「あるわよここに。真面目に答えて」

「ふむ、真面目に答えたつもりなのだが。まあ、突風のと同じ理由もあるといえばある」

「そう。問題無いなら良いわ」

「夜が明けたら、シャオにも紹介しよう」

「何を?」

「ボクの大事な相方を」




132『こっち見てよ』

「兄さんコンビ組んだの!?」

「いや、代わりのいない存在ではあるが」

「ちょっと、何で目を逸らしてるの」

「愛しいシャオの疑問にはすぐさま答えてやりたいが、もう少し待ってはもらえないだろうか。会えば分かる事も多い」

「つまり、夜が明けたらその人と合流するって事?」

「人ではないが」

「は?」




133『逃げるものは追うしかない』

「おう、ラン。起きたか」

「ガーディ、まだ居たの?」

「ヒデェな、おい。状況説明してやらねぇぞ」

「説明できるの?」

「珍しい状況なんだろ?」

「多分ね。断言はできないけど」

「いつもは嬢ちゃんが追い回されてるっぽいよな」

「シオンは嬉しそうだよね、シャオに構ってもらえて」

「逃げてるクセにな」




134『愛してる、って言ったら満足?』

「で、何がどうなってるの?」

「紫雷のが、相方を紹介するそうだ」

「あいつコンビ組めたの?」

「嬢ちゃんと同じ反応すんなよ」

「僕、依頼の都合で一時的にコンビ組んだ事あるんだよね、シオンと」

「マジか」

「洗脳しにかかってんじゃないかってくらい、妹への愛を語り倒すんだよ」

「それはお疲れさん」




135『寄るな、色男』

「相方は夜が明けたら紹介するらしいが、会えば分かると詳しい事はちぃとも説明されないもんだから」

「マオが痺れを切らした、と」

「おう」

「なんとなく分かった。彼女だね」

「人じゃないっつってたぞ」

「いや、そういう意味じゃなくて。単なる代名詞」

「なんだ、ランは知ってんのか」

「予想だけどね」




136『ねぇ、ダーリン』

「おーい嬢ちゃん、ランが起きたぞー!」

「ランおはよー!」

「ん、おはようマオ」

「ちょっと待っててね、バカ兄絞めたらご飯にしよ!」

「それなんだけど。もう夜が明けてるから、彼女呼べるんじゃないのか、シオン」

「食事の後にしようかと思っていたのだが」

「ちょっとラン! あなた知ってるの!?」




137『幸福な朝』

「昔仕事した時に見たあの子だろ?」

「何か、あたしだけ仲間はずれっぽくて悔しいんだけど」

「何を言うシャオ! ボクが愛しい愛しい妹を蔑ろにするものか!」

「じゃあその彼女さんとやらに会わせてくれる?」

「勿論だとも。夜が明けた以上、ボクが彼女を召喚するのになんの障害もなくなった」

「え?」




138『なんだって知ってた』

「召喚、て言った?」

「そう。彼女っていうのは、シオンの契約精霊だよ」

「単なる精霊召喚ならともかく、契約精霊を喚ぶのに時間帯の制限があるとか、初耳なんだけど」

「呼べない訳じゃないんだよ。シオンが夜明けまで喚ぶのを待ったのは別の理由だね」

「どんな理由?」

「それこそ会えば分かる事だよ」




139『あなたと一緒にいたいんだもん』

『シオン』

「おや、どうしたんだい?」

『貴方に呼ばれた気がしたの』

「勘の良さは健在のようだね。今まさにキミを呼ぼうとした所だよ」

『それは光栄だわ』

「久しぶりだね、レディ・チェズ」

『ええそうね、おおとりの』

「さてそれでは紹介しよう。シャオ、この子が僕の契約精霊、紫鳥のチェズだ」




140『傘の下で』

「彼女と出会ったのは無人の猟師小屋の軒下で雨宿りをしている時だった。何やら鈍い衝突音が頭上から響いたかと思うと、目の前に紫色の塊が落っこちてきた。ボクはすぐに気付いたよ、あぁ日が暮れたのだと」

「ごめん、どういう事?」

「それは深い森の中でね、昼日中でも暗闇なんだ」

「精霊が、鳥目?」




141『見えないサイン』

「精霊である前に鳥だからね」

「鳥である前に精霊なんじゃなくて?」

『鳥であり精霊であるのがワタシなの』

「だから鳥なの精霊なの?」

「そもそも一日中日が差さない森だったら、日が暮れたとは限らないよね」

「そもそも昼間だろうが暗闇の森っつったら死なずの森しかないんだがな」

「言うなガーディ」




142『一心同体』

「その通り、死なずの森だ。ボクは思った。ここで他者と遭遇するなど運命だ。これは契約するしかない、と」

「何でよ。もっと別に色々とあるでしょっていうか、死なずの森に猟師小屋なんてあったの!?」

「ただの森だった頃からあったんじゃない?」

「太古からの小屋が朽ちないとか、さすが死なずの森」




143『いつもの癖』

「まぁそんなこんなでボクとチェズは相方となった訳だ」

「どんな訳よ」

『運命なのよ』

「チェズさん、だったかしら。あなたも良いの、こんなバカ兄と契約しちゃって?」

『ワタシの契約者を侮辱しないで』

「してないわよ」

『したじゃない』

「してない!」

「凄ぇな嬢ちゃん、精霊と喧嘩か」

「マオだから」




144『言うと思った』

「所構わず妹を見れば抱き着いてきてボクの愛しい妹よ会いたかったよと街中だろうとダンジョンだろうと叫ぶ兄がバカじゃなくて何なのよ!」

『それはバカね』

「でしょ!?」

『バ可愛いからワタシは許すわ!』

「兄をよろしくお願いします!」

『まかせて!』

「凄ぇなおい、紫雷のが空気読んで黙ってるぞ」




145『三時の雨宿り』

「なあ、ガーディ」

「何だ、ラン」

「死なずの森で雨に降られたって、どういう事だと思う?」

「そりゃあ、ヤバい扉でも開けたんじゃねぇか?」

「やっぱりそう思う?」

「あの精霊の姐さんつかまえた事で、命拾いしたんだろうな」

「物凄い低確率の生存フラグを見事に掴み取ってるね」

「しかも無意識にな」




146『一番厄介な存在』

「あたしに関わると途端にバカになる兄ですが、よろしければどうか面倒見てやってください」

『まかせておいて。こういうバカな子は大好きよ』

「あなたみたいなお姉さん欲しかったです」

『シオンの妹ならワタシの妹だわ』

「お姉さま!」

『なぁに、ワタシの可愛い子』

「おい向こうも妙な扉開け始めたぞ」




147『善意の裏返し』

「マオ、ご飯できたよー」

「はーい」

「うわあっさり切り替えてきやがった」

「お姉さまご飯食べます?」

「かと思いきやまだ切り替えてなかっただと!?」

『ワタシ達はヒトのような摂食はしないわ。だから気にせず食べてらっしゃい、可愛い子』

「分かりましたお姉さま!」

「本気で仲良くなってんな!?」




148『どこか知らない場所へ』

「ねぇ、ラン」

「何、マオ」

「今日はどうするの?」

「どうするも何も、依頼受けてここまで来てるんだから、達成するべく動くだけでしょ。シオンとのエンカウントも終わったし」

「そうね。ところであたし、この辺りから先って行った事ないんだけど」

「実は僕もそうなんだよね。まぁでも、地図はあるし」




149『手だけつないで』

「じゃあ、俺はそろそろ行くわ」

「そっか。ガーディ、またね」

「では、ボクも行くとしよう。愛しい妹には会えた事だし」

『また会いましょう、可愛い子』

「勿論ですお姉さま! あと兄さん」

「チェズとの扱いの差は何なのだろう」

「さて。僕らも行こうか」

「そうね」

「マオ」

「何?」

「ん、手」

「うん」




150『甘えてよ』

「自分以外の生命体を共に飛行させるなど、まさに鳳凰種の特権だな」

『あら、ワタシだってワタシの契約者であるシオンなら飛ばせるわよ?』

「チェズ、精霊のキミがヒトであるセイランと張り合ってどうする」

『別に鳳のに張り合って言った訳ではないわ。もっとシオンに頼って欲しいだけ』

「ありがとう」

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