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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
6/59

091-120

091『どうにかなってしまいそう』

「犬族とは奇矯な事を。ボクは猫族白虎種だが」

「いや、例えだから。猫族なのは知ってるから」

「む、そうか。ならば良い。愛しいシャオと別氏族と思われるのはどうにも気に食わんからな」

「あ、そこなんだ」

「他に何かあるか?」

「いや、うん。そうだね。とりあえず、周囲に探知用トラップ仕掛とくね」




092『身勝手な論理』

「さて、そろそろマオを起こしてくるよ」

「待て、セイラン」

「何?」

「せっかく寝ている愛しいあの子を起こすのは忍びない。ボクが代わりに番をするから、シャオはそのまま寝かせてやってくれ」

「ダメ、却下」

「何故だ」

「僕がマオに怒られるから。どうしても代わりたいなら、起きた本人と交渉しなよ」




093『重なった偶然』

「お、ランじゃねぇか」

「ガーディ? どうしてここに」

「そりゃ仕事だよ。お前は?」

「同じく」

「あの白いの、紫雷じゃねぇか?」

「えーっと、知り合い、かな?」

「んだよ、煮え切らねぇな」

「色々とあるんだよ、事情とか人間関係的な色々と」

「嬢ちゃんは?」

「寝てる。けど、そろそろ交代するとこ」




094『たった二人の世界』

「マオ」

「んぅ」

「マオ、起きて」

「ラン?」

「そろそろ交代の時間だよ」

「んー」

「それとも寝てる? シオンが見張りを買って出てるよ」

「だめ、おきる」

「ん、おはようマオ」

「おはよー、ラン」

「これ、飲んで。眠気覚まし」

「ん、ありがと。ラン」

「ん?」

「おやすみ」

「ん、後よろしくね」

「うん」




095『ちょっと黙って』

「銃声が聞こえたから、シオンの隔離はその時解いた。一発聞こえたきりだけどね」

「そう」

「シャオ」

「あと甘い香りがするんだって」

「香り?」

「詳しくはシオンに訊いて。危険は感じないらしいから」

「シャオ」

「そう」

「それからさっきガーディと会って」

「さあこの兄の隣においで」

「バカ兄煩い!」




096『捨てられないガラクタ』

「今申し送りやってるでしょ見て分かんないの!? やって良い邪魔とダメな邪魔があるっていつになったら覚えてくれるのこのバカ兄!」

「嗚呼シャオ、ボクの愛しい妹よ、やはりボクと君の心は通じ合っているね」

「人の話を聞きなさいよ!」

「この鈴を、君が持っていてくれた。それだけでボクは満足だよ」




097『隣の人』

「鈴の事は今はどうでも良いのよ。とっとと伝達終わらせないとランが休めないじゃない!」

「マオ、今ので全部だから」

「そう? じゃあラン、おやすみ」

「ん、おやすみ」

「さて、バカ兄。色々言いたい事はあるけど、とりあえず」

「何だい、ボクの愛しい妹よ」

「しれっと居座ってるそこのデカイのは何?」




098『いつもの癖』

「おいおい、デカイのとは随分な言い草じゃねぇか」

「あら、ガー爺の方が良かった?」

「それはもう勘弁してくれ」

「ワガママね」

「愛しい妹よ、そろそろ兄の相手もしてくれまいか」

「反省した?」

「うむ、無理だ!」

「は?」

「愛しい妹を前にして愛でずにいられようかそんなものは否だ!」

「反省しろ」




099『大人の定義』

「イイ年した大人が意味分かんないワガママ言わないの!」

「我儘とは心外な。ボクが愛しい妹を愛でるのはもはや世界の真理であってだな」

「聞きたくないしそんな勝手な理屈あたしは絶対認めません!」

「ボクが愛しい妹を愛でる権利は、たとえ妹のキミでも奪えない至高の権利だ!」

「両方大人気ねぇよ」




100『大人の定義』

「何よガー爺、じゃああなた会う度どころかあたしを見かける度に問答無用で所構わず抱き着いてきてあぁ会いたかったよボクの愛しい妹よとか叫ぶバカ兄を容認しろっての冗談じゃないわ!」

「何を言う愛しい愛しい妹の元気な姿が嬉しくて高揚してしまうのはしようがないだろう?」

「だから両方煩ぇって」




101『永遠を現実にしてしまう人』

「ボクの愛しい妹よ、キミがボクにとって愛しい存在である事は、もはや世界の理にも等しい絶対のものだと、いい加減分かっているのだろう?」

「このバカ兄、その訳分かんない理屈を所構わず垂れ流すのをいい加減やめてって何度言えば」

「だからお前ら煩ぇって」

「だって」

「ランが起きるぞ?」

「うっ」




102『惚れ直した?』

「あー、質問良いか?」

「何?」

「そこの紫雷は嬢ちゃんのアニキって事で良いんだよな?」

「いかにも、ボクこそがシャオの兄でありシャオこそがボクの」

「そうだけど、しらい?」

「何だ、知らねえのか? 嬢ちゃんギルド員だろ?」

「やっぱり、あの紫雷? 二つ名の」

「そうだが」

「バカ兄だったとは」




103『全部全部、君のせい。』

「何でアニキの二つ名を知らねぇんだよ」

「それはボクが伝えていないからだろうな。ああ、誤解しないで欲しい。ボクは愛しい妹が望むなら、例え世界の深淵を覘く行為であろうとも、シャオに危険が及ばぬ限りは隠したりはしない。ただシャオを愛でるのに忙しくどうしても報告を忘れてしまうだけなのだ」




104『大切だったはずなのに』

「欲しがってても得られない奴の方が多いんだがな」

「それはボクとは関係の無い問題だ。そもそも二つ名自体が勝手に付けられるもので、有無も中身も選べるものではない。そうだろう、突風の?」

「何だ、知ってたのか」

「そりゃあね。キミがその二つ名を取り消せと、ギルドに突撃した事は有名だからね」




105『結論はとうに出ている』

「俺は魔法は飛行補助にしか使わねぇっての」

「それは誰もが知っているさ。同時に、二つ名が気に食わないとギルドに突撃するような人物である事もね」

「お前だって有名だろ。二つ名とは当人を端的に表すものであるべきで自分を表すのに妹の一字は譲れねぇと言ったとか何とか」

「何してんのバカ兄!?」




106『距離のつかみ方』

「なあ、嬢ちゃん」

「何よ」

「何でビミョーに離れてんだ?」

「距離を取りたいからに決まってるでしょ」

「いや、取れてねぇだろ」

「言わないで。分かってるの。でもあんまり離れたら後でランに怒られるの」

「そりゃあそうだろうが……」

「良いの、バカ兄が反省するまであたしはバカ兄とは口きかないの」




107『No thank you』

「何でおじーちゃんはここに居るの?」

「だからジジイじゃねぇっつーのに。依頼だよ依頼」

「この辺りに遠征に来る依頼って」

「多分嬢ちゃん達と一緒じゃね?」

「やっぱり?」

「ところで、紫雷は良いのか? 何かずっと喋ってるが」

「シッ、ダメよ相手しちゃ。懐かれるわよ」

「お前のアニキ何なんだよ」




108『大人しく降参して』

「突風のが狡い」

「あ?」

「愛しい妹がボクと会話してくれないというのに、どうしてキミはボクの愛しい妹とぽんぽん会話できているんだ」

「そりゃあ、あんたが嬢ちゃん怒らせたからだろ?」

「どうしたらシャオはボクと会話してくれるだろうか」

「あんたが反省して同じ事を繰り返さなくなればじゃね?」




109『一番厄介な存在』

「反省すればシャオが会話してくれるというのなら反省するのも吝かではないのだが、問題がひとつあってだな」

「何だよ」

「一体何を反省すれば良いのだろうか?」

「あ?」

「何がシャオを怒らせてしまったのか、皆目見当がつかないんだ。ボクがした事なんて、妹が愛しいという主張くらいで」

「それだよ」




110『若いときには無茶をしとけ』

「シャオが愛しい事を否定するなど、ボクがボクである事を否定されると同義なのだが」

「いや別に愛でるなとは言ってねぇだろ。人目を気にしろってだけで」

「他人を気にして何になる?」

「あー、嬢ちゃんファイトー」

「いきなり投げないでよ!」

「だってメンドクセーし。年食ったら落ち着くんじゃね?」




111『自惚れないで』

「それバカ兄が落ち着いた頃にはあたしの青春終わってるじゃない」

「そうやって、何だかんだ言って嬢ちゃんが懐いてるから紫雷が調子に乗るんじゃね?」

「な、懐いてないわよ!?」

「いや懐いてるだろ」

「どこがよ!?」

「まさか無意識か?」

「可愛いだろう、ボクの妹は」

「バカ兄はちょっと黙って!」




112『迷子のお知らせ』

「嬢ちゃん、自分の発言振り返ってみ? 今日俺が遭遇してからだけでもそうなんだ、多分今までもそうだったんだと思うぜ?」

「謎掛けみたいな事言わないでよ」

「そんな頭使う事じゃねぇよ」

「愛しい妹よ、キミが僕を愛してくれている事などボクは勿論知っているよ」

「黙れバカ兄」

「それだよ」

「え?」




113『長く一緒にいた影響』

「ここまで言っても自覚しねぇのか。ランは何か言ってなかったか?」

「どうして突然ランが出てくるのよ」

「言ってねぇのか。じゃあ良いや」

「は?」

「気にすんな」

「何でいきなり投げやりなのよ」

「いや、よく考えたら俺が自覚させてやる必要ねぇなと気付いただけだ。メンドクセ」

「出たわね、不精癖」




114『頬に伝う雫』

「冷たっ」

「あん?」

「それ、ガラ悪いわよ。やだ、雨? ラン起こさないとダメじゃない」

「ちょっと待て嬢ちゃん」

「何よ。ランが風邪ひいたらどうしてくれるの」

「いやそうじゃなくてだな。ここまで雨って落ちてくるもんか?」

「地表に落ちずにどこに落ちるの」

「ランが雨除け張ってないと思うか?」




115『縁のない話』

「ランは雨除け張ってないわよ」

「は?」

「張らないでってあたしが頼んだの」

「何でまた」

「ランが居ないと雨にも対処できなくなったら困るじゃない。ただのお荷物になる気はないの」

「あいつ過保護の癖に承知したのか?」

「どうしても張るなら別々に野営するって言ったら折れてくれたの」

「なるほど」




116『反則だらけ』

「そもそも、ランが万能型すぎるのよ。野営なのにギルドに泊まってるレベルの安心感を得られるってどういう事なの」

「鳳凰種の特権ってヤツだろ」

「あたしは猫族なの。幻種でもない雑種なの。そんな快適生活に慣れて飼い猫になっちゃったらどうしてくれるのって話だわ」

「責任は取ってくれんじゃね?」




117『ちょっと黙って』

「シャオ!」

「わ、びっくりした。何よ、どうしたの兄さん」

「自分を雑種などと言うものではない。キミ自身の言葉であろうとも、愛しい妹を貶める発言をボクは許容する訳にはいかない」

「別にあたしは幻種じゃない事を残念になんて思ってないわよ。むしろ雑種である事を誇れるレベルよ」

「ならば良し」




118『うん、知ってる』

「確かに幻種は希少種だけど、数が少ないだけで上位種じゃないのよ。幻種だからって優遇されて、何でもかんでも押しつけられて。大変よね、幻種って」

「その幻種三種に今囲まれてる嬢ちゃんは何モンだって話だな」

「兄と相棒と通りすがりでしょ」

「俺は知り合い以下かよ」

「親友じゃない事は確かよね」




119『自惚れないで』

「あたしとの関係を言うより先に、おっさん達はランの関係者でしょ。まずそっちをはっきりさせなさいよ」

「ランは同業の後輩だろ」

「あら、親友じゃないの?」

「ダチではあるが、親友ってよりは弟みたいなモンだからなぁ」

「随分頼もしいお兄さんね?」

「シャオの兄はこのボクだ!」

「取らねえよ別に」




120『素直じゃないとこも可愛くてよろしい。』

「兄というよりお爺ちゃんよね」

「嬢ちゃん、ヤメテ」

「じゃあ、お父さん」

「シャオ、そんな事を言っては父さんが悲しみのあまり倒れてしまうよ」

「親父って、まさか紫雷みたいなのじゃないだろうな」

「性格はあたしの方が似てるってよく言われるわ、兄さんは母さん似みたい」

「紫雷みたいなお袋とか」

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