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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
5/59

074-090

074『共犯者の笑み』

「マオ」

「なあに、ラン」

「そろそろ話してくれない?」

「そうね。ここまで移動したし、良いかな」

「やっぱり、あそこを離れる事が目的だったんだね。で、いきなり遠征依頼を受けた理由は?」

「実はね、手紙が来たのよ。会いに来るって」

「誰が?」

「バカ兄」

「……あー、うん。理解した」

「ありがと」




075『君の気配』

「たまには会ってあげなよ?」

「うちのバカ兄を甘く見てるわね、ラン。あたしはただ、街中で会ったら面倒だから移動しただけで、会わないとは言ってないわ」

「えーと?」

「来るわよ、ここに」

「連絡したの?」

「してないけど。妹の気配も分からないようじゃ兄失格だよ、とか本気で言うのよあのバカ兄」




076『お気に召すまま』

「ランにお願いがあります」

「何、改まって」

「数日以内にバカ兄とエンカウントすると思うので、いざって時は手伝ってください」

「エンカウントって……まあ良いけど。で、何を手伝うの?」

「あまりに鬱陶しい場合は、バカ兄を沈めて逃げたく思います」

「……あいつ、そこまでなの?」

「そこまでなの」




077『約束事項』

「マオの好きにすれば良いよ。兄妹の事だしね」

「ありがと」

「だけどマオから合図されるまでもなく、シオンが暴走してるなと感じたら手を出すけど。それでも良い?」

「願ったり叶ったりだわ。ぜひお願い」

「気休め程度の保険だけどね」

「それでもよ。ランほど安心できる保険はないわ」

「それはどうも」




078『どこまでも行くよ』

「それにしても」

「何?」

「いや、なんかマオの反応見てると、僕が知ってるシオンはまだマシだったんじゃないかって気がしてさ」

「多分そうなんじゃない? 昔バカ兄から、ボクの愛しい妹よキミが望むならボクは例え世界の果てだろうと会いに行くよ、て言われた事あるもの」

「愛の告白だね」

「妹にね」




079『共犯者の笑み』

「僕には愛しい妹がいてね。僕とはあまり似ていないんだけれど、だからこそとても愛くるしい妹なんだ。強気に見せているけれど、それは脆い心を守る為のあの子なりの防衛手段なんだよ。ああシャオ、僕のシャオ……と、延々語られた事がある」

「何かほんと、バカ兄がご免なさい」

「愛されてるね、マオ」




080『結論はとうに出ている』

「マオは、シオンの事どう思ってるの?」

「バカ兄」

「即答だね」

「だって他に表現のしようがないもの」

「じゃあ、もし構ってこなくなったらどう思う?」

「せいせいするわ」

「淋しいなとか、思わないんだ?」

「だって本当に鬱陶しいもの。さっさと伴侶でも見つけて勝手に幸せになれってのよ」

「ふぅん」




081『この、リア充が』

「マオはさ、シオンの好みのタイプって知ってる?」

「さあ。彼女さんなら何人か会った事あるけど、バカ兄の好みと言っていいかどうか微妙なのよね」

「どういう事?」

「愛しい妹よ、君をボク並みに愛せる人がいたらそれがボクの運命の人なんだよ。って真顔で言われた事あるのよ」

「歪みないな、あいつ」




082『逃がしはしない』

「きゃああ!」

「マオ!」

「見つけたやっと会えたねああボクの愛しい妹シャオマオさあこの兄にその愛くるしい顔を見せておくれその鈴の音のような麗しい声でボクを呼んでおくれ、シャオ、シャオ、ボクのシャオ、会いたかったよ元気だったかい君に会えない日々がボクにはとても」

「ら、ラン、ヘルプ!」




083『神様なんていない』

「何だ君はどうしてボクと愛しい妹との逢瀬を邪魔するんだ、シャオ、シャオボクのシャオ、ああどうしてボクは君に触れられないんだ、こんなに近くに居る君に触れる事ができないなんて、世界に神は居ないのか!?」

「居ないわよ! 神様は世界の外側に居るのが常識よ」

「マオ、落ち着いて。論点ズレてる」




084『見ないふり、見えないふり』

「ラン、食事にしましょう」

「え、うん」

「あたし水汲んでくるから」

「あ、うん。じゃあ僕は今晩用の薪集めておくね」

「ありがと、お願いね」

「あ、マオ」

「何?」

「いやあの、これどうするの?」

「そのままほっといて。そのうち正気に戻るから。何だったら意識刈っといてくれても良いわ」

「……了解」




085『無条件降伏』

『シャオ』

「ごちそうさま」

「はい、おそまつさま。マオ先に寝て良いよ」

『ボクの愛しい妹よ』

「うん。じゃあいつも通り後で交代するわ」

「ん、よろしく」

『あの、シャオ』

「おやすみ、ラン」

「おやすみ、マオ」

『愛しい妹よ、ボクが悪かった。騒がず静かにするのでそろそろ許してもらえないだろうか』




086『どこかで響いた銃声』

「久しぶり」

『君は……セイランか。そうか、なるほど納得だ。こんな見事な空間固着、ボクは君以外に知らないからな』

「それはどうも。僕としては解除しても良いんだけど」

『いや、シャオの許しを得てからにしてくれ。愛しい妹に嫌われたくは……おや?』

「銃声だね」

『やはり解除を頼めるか』

「了解」




087『誰にも渡さない』

「さて、セイランよ。君はボクの愛しい妹をどうするつもりかな」

「いや、別にどうもしないけど」

「ほう、ボクのシャオに魅力が無いと?」

「何でそうなる」

「シャオほど魅力溢れる娘をどうもしないとは……さては君、ふの」

「シオン」

「何かな?」

「マオは傷付けさせないよ。誰にもね」

「ふむ、そうか」




088『嫌味なくらい、できたやつ』

「ボクはね、セイラン。シャオが幸せならそれで良いんだ。ボクが隣にいなくとも、シャオがボクの愛しい妹である事実は揺らがない」

「その真っ当な意見を、本人に言えば良いのに」

「無茶を言うな。愛しい妹を目の前にして愛でずに居られるとでも?」

「その愛でる行為がマオに避けられる理由なんだって」




089『それは寒い夜だった。』

「避けられて、いるのだろうか」

「さっきみたいに、出会い頭に抱き着いてノンブレスで愛を叫ばれるのは嫌みたいだよ」

「避けられて、いるのか」

「いやだから」

「愛しいシャオに避けられるボクの生きる意味などどこにあると言うのか」

「聞けよ、人の話を」

「嗚呼シャオ」

「さっきは良い事言ってたのに」




090『香水』

「ときにセイラン、君は香水をつけているか?」

「何いきなり。つけてないけど」

「ふむ、そうか。そうだよな」

「シオン?」

「何やら甘い香りがするのだが」

「どこから?」

「それが分かれば苦労はしない。ああいや、危険なものではないようだが」

「そう、気をつけるよ。相変わらず犬族並みに鼻が利くね」

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