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小猫と親鳥  作者: かすみづき
SHORT
3/59

031-060

031『一番厄介な存在』

「ブラックリスト?」

「そう。まあ、妥当な判断だよね」

「そうね。まだ依頼を受けるとも言ってないのに、いきなり現地に放り出されたんだもの」

「それもあるけど。転移魔法陣使ってまでって云うのが、一番の問題点かな」

「そうなの? 行き先が死なずの森って事より?」

「大陸魔法使用条例違反だしね」




032『何を今更、』

「マオの名前ってシャオマオだよね」

「そうよ? どうしたのいきなり」

「ふと思い出したんだけど。知り合いにシスコン気味な奴が居てさ」

「ふぅん?」

「事あるごとに妹の名前を連呼するんだけど、その妹さんがシャオって名前だったな、と」

「その人、何て名前?」

「シオン」

「うちのバカ兄だわ、それ」




033『愛してる、って言ったら満足?』

「愛って何なのかしら」

「マオ?」

「愛してるなんて言葉は口にした途端うすっぺらくなると思うの」

「あの、マオ?」

「顔合わせる度に我が愛しの妹よ、とか言われる気持ちが分かりますか。さらにはどうして愛しい兄さんって呼んでくれないのとか言って来る奴を避けて何が悪いの!?」

「なんか、ごめん」




034『出来るなら苦労はしない』

「僕は一人っ子だから、兄弟姉妹ってよく分からないんだ」

「あら、良かったじゃない」

「ん?」

「前に出来ない事があんまり無いって言ってたでしょ? 分からない事もあんまり無かったんじゃないの?」

「そうでもないよ。出来る事と分かる事って違うから」

「ふぅん?」

「最近やっと気付いたんだけどね」




035『好きなのにね』

「あんたなんかセイラン様にふさわしくなんかないんだからねっ」

「何、どうしたのマオ」

「さっきギルドで言い逃げされたの」

「それを?」

「もっとあるよ。ちょっと可愛くて素早くてギルドランクが高いだけのちびっ子のくせに、だって」

「それ、けなしてるの?」

「さあ? あたしは褒められた気がする」




036『大人の定義』

「マオって今十五歳だよね?」

「そうよ?」

「猫族の成人も十五だよね?」

「ああ、それ? うん、成人前から家出てるわ」

「よく許してくれたね?」

「バカ兄がね。通例通り家に居たら、あたしが家出る時着いてきそうだったから、早めたの」

「ああ……やりそうだね、確かに」

「でしょ? それは流石にね」




037『君と僕の終末論』

「人類滅亡が世界の終わりだと思ってる人って多い気がする」

「人が居なくても世界は回るのにね」

「そう。僕が居なくても社会は動くようにね」

「ランが居なかったら、あたしの世界は結構な危機に陥るわ」

「その心は?」

「ランの作るお菓子無しじゃあ、もう生きていける気がしないのよ」

「それはどうも」




038『結論はとうに出ている』

「鳳凰種って極彩色が好きなのよね?」

「あー、派手好きは多いってよく聞くけど」

「自分の種族の事なのに、まるで他人事ね?」

「前に言ったでしょ、鳳凰種は単体でふらふらしてるのが多いって。同種でもあんまり会わないんだよ」

「へえ。で、ランは?」

「うーん、マオが居る世界は鮮やかで好きだけど」




039『唯一の、嫌い。』

「マオって何でも食べるよね」

「そう?」

「あれが嫌いこれが嫌いって話も聞いた覚えが無いし」

「美味しいものが好きなだけよ。だから、ランの作るものは全部好き」

「それはどうも。じゃあマオは、嫌いなものって無いの?」

「あるわよ。不味いものはキライ」

「それは、大抵の人がそうなんじゃないかな」




040『寄るな、色男』

「あ、ディアンだ」

「ホントだ、おーい」

「マオ待って。連れが居る」

「居るわね。それが?」

「知り合いが女の子連れてる時は、近寄らない様にしてるんだ」

「何でまた」

「向こうが嫌がるんだよ」

「ああ、何となく分かったわ。おっさんなら大丈夫だと思うけど」

「そうも思うけど、もう条件反射と云うか」




041『僕の居場所』

「一室しかない?」

「参ったな」

「別に良いんじゃない? ひとつベッド増やしてもらえば」

「マオあのね、君は女の子、僕は男なの」

「知ってるわ。あ、でも」

「何?」

「もしランに実は女だって言われても、意外性は無いわね」

「マオ?」

「随分背が高くて骨太気味な美人だなって思う程度ね」

「マオ……」




042『本当、だったり。』

「ランってさあ」

「ん?」

「同性に告白とかされてそうよね」

「……はい?」

「あ、今じゃなくてね。成長期前とか、女の子と間違われて求愛されてそうだなって」

「……いや」

「ふーん? あ、でも昔は愛想悪かったのよね。とっつき難くて高嶺の花扱いだった可能性もある訳か」

「……楽しそうだね、マオ」




043『あの日から一番遠い僕ら』

「ねえ、ラン」

「ん?」

「ほら、この依頼」

「ああ、僕とマオが初めて会った時と同種の依頼だね」

「取り合いしたのよね」

「あ、マオの中ではそういう事になってるんだ」

「どういう意味よ」

「別に? 今回受けるのこれにしようか。懐かしいしね」

「え、ああ。そうね」

「手続きしてくる」

「うん、お願い」




044『No thank you』

「ねーねー、いーでしょー? 一緒にどっか行こーよー。ずーっとココいるじゃーん、ヒマなんでしょー? ヒマ人どーし仲良くしよーよー。ねーってばー」

「マオ、お待たせ」

「ラン、遅い」

「ん、ごめん」

「行こ」

「……どちら様?」

「知らない。行こ」

「良いの?」

「知らない。行こ」

「ああうん、了解」




045『慰めてよ』

「どうしたのマオ。しょんぼりしちゃって」

「買い損ねたの……」

「え?」

「数量限定販売で、あたしが知った時には手遅れだったのよ悔しいったらもう!」

「えーと、所でそれ何のお菓子?」

「ティエントのたいやき」

「へえ、あそこがたいやき?」

「そう! と云う訳でラン!」

「ん?」

「たいやき作って」




046『君の気配』

「ラ、ラン」

「ん、何?」

「ラ、ラララ、ラン」

「だから何? て云うか、今のあんまり呼ばれた気がしないんだけど。実は歌ってるのかと」

「そんな事はどうでもいいのよ! 居るのよ!」

「え、何が」

「居るったら居るのよ。居てはならないアレが居るのよ!」

「ああ、」

「言っちゃダメ!!」

「はいはい」




047『寂しいなんて言えない』

「寂しくなかった?」

「え?」

「マオは成人前に家を出たんだよね」

「ああ。でもそれ、ランにも言えるわよね」

「え?」

「鳳凰種って、同種で群れたりしないんでしょ? 仲間が居たらなって思ったりしないの?」

「いや、僕らは……ああ」

「分かった?」

「ん。マオはそれで良いんだね」

「そう、良いのよ」




048『そのセリフ、そっくりそのまま返す』

「あんたなんかセイラン様にふさわしくないわ」

「は?」

「彼はね、私みたいな大人の女に似合うのよ。あんたみたいな小娘には勿体ないの。ちょっと可愛い程度で彼に取り入ってんじゃないわよ」

「はあ」

「何よ。何とか言いなさいよ」

「動機がペライ」

「なっ」

「その程度で彼に取り入ってんじゃないわよ」




049『愛してみろよ』

「ランは物じゃないのよ。侍らせて優越感を持つ為の装飾品じゃないの。あんな見た目でぽやっとしてるし、お酒あんまり得意じゃないし。ものすごく嬉々として甘味作るし、作ったお菓子を人に食べさせてにこにこしながら眺めてるし」

「あのマオ、その辺でやめてもらえると」

「ラン、いたの?」

「いたよ」




050『週7日制』

「ディアン?」

「……よお、ランか」

「なんか、疲れてない?」

「ああ、まあな」

「もしかして、最近のアレ?」

「おー、ソレだソレ。おかげでここ一週間家に帰れてねえんだよ」

「へえ。大変だね、支部長は」

「何ならラン、お前が変わってくれても良いんだぞ? お前なら他の連中も納得するだろ」

「冗談」




051『無自覚バカップル』

「バカップルって何だっけ。バカが二人?」

「バカの前に恋仲なのが前提条件じゃない?」

「じゃあ、ギルドの入口で浮気したのしないのと言ってるあの二人は?」

「ただの傍迷惑な人?」

「入れないじゃない」

「でも割り込むのも巻き込まれそうでイヤだよね」

「せっかくランと一緒に依頼受けに来たのに!」




052『50/50』

「ここにカードが二枚あります」

「あるわね」

「一枚は当たり、もう一枚は外れと書かれています」

「ふーん」

「マオ、どっちが良い?」

「当たりだと何があるの?」

「マオの好きなもの作ってあげる」

「外れだと?」

「僕が好きに作ったものを食べてもらいます」

「それ、どっちも当たりみたいなものよね?」




053『こたえられない』

「マオー」

「何よ!」

「何してるのー?」

「薬草採取よ!」

「いや、それは知ってるけどー」

「じゃあ何よ! はっきり言えばいいじゃない!」

「えっと、何で崖に逆さにはり付いてるのー?」

「なによ! わるい!?」

「いやぁ、悪いって云うかおもしろ」

「なによ!?」

「……今助けるねー」

「よろしく!」




054『反則だらけ』

「山で遭難したらどうするよ?」

「まず山頂まで行って、見晴らしの良い所から全体を見渡して目標ポイントと下山可能なルートを確認して」

「いやいやいや」

「何だよディアン、お前が聞いたんだろ」

「ランお前さあ、もし見晴らしの良い所なんぞ無かったらどうするよ?」

「見渡せる高度まで飛ぶ」

「おい」




055『もう一度、恋をしよう』

「もう一度も何も、あたしとあんたは始まってもいないじゃない。そもそもそんな意味分かんない告白する前に、まず名乗れ。あんたは知っててもあたしは知らないんだから」

「マオ、マオってば」

「ラン、いたの?」

「いたよ」

「で、何よ」

「そろそろやめてあげて。彼、再起不能になってるから」

「軟弱ね」




056『痛い』

「あ」

「いったぁー」

「大丈夫だよ」

「大丈夫じゃないわよ、包帯包帯」

「マオ、落ち着いて」

「何で冷静なのよ、ラン!」

「ちょっと額が切れただけだから」

「ちょっとで済む出血量じゃないわよ!」

「出血は派手でも傷は小さいよ?」

「ケガした当人は慌てなさいよ!」

「マオが代わりに慌ててくれてるし」




057『境界線の引き方』

「胸を話題に出したヤツは敵」

「つまり、ランは言わなかった訳か」

「それどころか見もしなかったわよ」

「嬢ちゃんが気付かなかっただけじゃねえ?」

「違うわよ。ランの第一声『その耳本物?』だったし」

「へえ、そっちのシュミか」

「何か不愉快な誤解してるわね。昔猫族絡みで貧乏くじ引いたらしいわ」




058『砂糖菓子のように甘く』

「甘くないお菓子ってないのかしら」

「うーん、果物の事を水菓子って言ったりするけど」

「果物って甘いじゃない」

「だよねえ」

「甘いと言えば」

「何?」

「さとうきびは果物かしら」

「野菜っぽいね。イネ科だし」

「でも甘いのよね」

「甘い野菜も多いよ?」

「たとえば?」

「メロンとか」

「果物じゃない」




059『自分だけ知ってればいい』

「異常の報告はギルド利用者に義務付けられてる」

「何で?」

「例えば、マーダープラントを発見したら、マオはどうする?」

「ギルドに言うわね」

「それはどうして?」

「放っとくと危ないし、とりあえずギルドに言っとけば、誰かがどうにかするじゃない?」

「そう考えない奴が多いって事だよ」

「変なの」




060『一緒にいた影響』

「お菓子はしばらく良いわ」

「え、何それ。僕の生きがいなのに」

「だって、増えたんだもの。減らさないと」

「……ああ、」

「言っちゃダメ!」

「分かった。それじゃあ、低カロリーなら食べてくれる?」

「……減るまでダメ!」

「どうしても、ダメ? マオ」

「そ、そんな捨て猫みたいな顔してもダメっ!」

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