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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
15/59

361-390

361『こんなにも愛されている』

「あたし、精霊について何にも知らないのね」

「それが普通だよ」

「ランもユンちゃんも、兄さんだって知ってるじゃない」

「僕とユンは種族柄知ってるだけだし、シオンはレディから教わったんじゃないかな」

「種族柄?」

「鳳凰種は血肉を得た精霊の事だって説があってね」

「ユンちゃんね」

「違うからね」




362『普通の尺度』

「違うの?」

「そもそもこの説は大昔のもので、現代でこんなの信じてるのそう居ないから」

「そう居ないって事は、居るんじゃない。誰?」

「鳳凰種に目の色変えるのは?」

「ああ、ユンちゃんがキレてたあれ」

「そう」

「つまり、鳳凰種に拘ってた理由は、精霊が欲しかったからって事?」

「どうだろうね」




363『大人の定義』

「お姉さまの姿は見られない方が良いかしら」

「そうだね。面倒な事になるのは間違いないだろうし」

「だが、精霊殿を単身還すのも危険だろうて」

「兄さん、お姉さまを守ってね」

「元よりそのつもりだ。ボクの愛しいシャオが言うなら、身命を賭して成し遂げてみせよう」

「自分自身もちゃんと守ってね?」




364『恋、拾いました』

「ユンちゃんが精霊と鳳凰種の子供って事は」

「それがどうかした?」

「お姉さまがホントにあたしのお姉さまになるかも知れない可能性があるって事よね!」

「さっきレディは精霊の自分が気に入ってるって言ってたけど」

「分かってるわよ。可能性の話だから良いの」

「うんまあ、マオが良いなら良いけど」




365『Marry me?』

「それとも、鳳凰種だから可能だったとかなのかしら」

「マオ?」

「でも兄さんだって幻種だし、可能性はあるわよね」

「あの、マオさん?」

「あたしがランと結婚したら、同種のユンちゃんとある意味親戚みたいなものだから、お姉さまとも遠い親戚って事にならないかしら」

「うん、分かった。眠いんだね」




366【 間違い電話 】

「あたしはまだまだ置きてられるわよ」

「そうだね。呂律はしっかりしてるね、呂律は」

「何やら意味が違ったような気が。む?」

「ああもう、こんな時に!」

「ラン? どうしたの?」

「例の痴話夫婦が単なる会話を一斉通達で始めてる」

「うちは関係ありませんって伐っちゃえば?」

「そんな機能は無いよ」




367【 こっちへおいで 】

「今夜はもう解散。ユンとシオンは、どこの部屋でも空いてるから適当に借りて休んで」

「無断宿泊はマズイだろう」

「店主は自分の家に帰ってるんだよ。気になるなら明日事情話して、宿泊費支払えば問題ない」

「何やら投げ遣りだと感じるのは当方の穿ち過ぎだろうか」

「さっさとマオを休ませたいんだよ」




368【 どうでもいい、そんな日々 】

「ねえ、ラン」

「何、マオ」

「一斉通達って、寝てる時もお構いなし?」

「あぁ、それは一応対策が練られてて」

「伐れるの?」

「伐れはしないけどね。通達が届く相手の条件として『現在意識がある鳳凰種』に対して発信されるものだから」

「眠ろうとしてる時に連続で通達が着ちゃったら練れないじゃない」




369【 こころの闇 】

「大丈夫だから、マオはそろそろ寝ようか。ちょっと意味分かんない発言になってきてるから」

「あら、へーきよ」

「僕が平気じゃないからね。ほらほら、寝る子は育つって言うし」

「これ以上育ったら冗談じゃないわ!」

「……マオ」

「なに」

「うん、身長の話だったんだけど」

「練るわ!」

「はい、お休み」




370【 背伸びをして 】

「ランも練る?」

「そうだね。特に何も練りはしないけど、休もうかな」

「じゃあ、いっしょね」

「はいはい。そんな訳だから、ユンとシオンもとりあえず休め。そこらの部屋で」

「娘御とその他の扱いの差が如実に出ておるが」

「悪いか?」

「否、そこもとにそれだけの甲斐性があったのが喜ばしいだけだな」




371【 空にむかって 】

「それでは当方も休むとしよう。セイランよ、また明朝にな」

「はいお休み」

「待て待て」

「何、シオン?」

「セイラン、キミはユィン・チィ殿の契約者なのか?」

「は?」

「当方、誰とも契約しとらんが」

「だが今、名を」

「ふむ、それか。そこな精霊殿とて、他の精霊と呼び合うだろう。似たような道理だ」




372【 だいじなもの 】

「言われてみれば、レディは契約者であるシオン以外の名を言ってないね」

『精霊がヒトの子の名を呼べば、強制的に従えてしまう可能性があるのよ。契約者は別だけれど』

「つまり、ユンもそれができると?」

「当方には無理だ。無理ではあるが、他者の名を不用意に呼ぶ事を避けようとする習い性はあるな」




373【 特別な想い 】

「つまり、ユンにとって鳳凰種は他人じゃないと」

「同朋だと思っておったが。何だ、セイランよ。そこもとは違うのか」

「いや、僕も仲間だと思ってるよ。基本的には」

「うむ、原則的にはな」

「その付け足した言葉に、二人の内心が駄々漏れだね」

『こういうところが、血肉を得た精霊と言われる由縁よね』




374【 24時を過ぎたら 】

「レディそれ笑えない」

『そうかしら』

「もう良いから、適当な部屋で休んできたら?」

『ええ、そうするわ』

「ボクは愛しい妹の傍で休みたいのだが」

「兄御殿、それは無粋というものだ」

「それはどういう意味かな、ユィン・チィ殿!?」

「声が大きい、マオが起きる」

「うっ」

「ではな、セイラン」

「ん」




375【 やっと会えたね 】

「ずっと待ってたんだ。無駄かも知れないと何度も思い、待ち続ける事に疲れもした。それでも、待っている限り可能性は消えない。それがどんなに小さな数値であっても、そこに存在し続ける。待つのをやめれば可能性はゼロで、やめる事はいつだって出来た。あと少しと思い続けて、今やっと」

 あなた、誰?




376【 瞬間、求めたもの 】

「マオ、マーオ」

「んー」

「ほらマオ、起きて」

「らん?」

「そうだよ。もう朝だよ、そろそろ起きようか」

「まだねむいー」

「でも早く起きないと」

「おきないと?」

「シオンが嬉々として添い寝とかしだすよ」

「否定できないわ」

「起きた?」

「何とかね。この年になってまで、兄に添い寝されたくないわ」




377【 特別な想い 】

「この年って、マオまだ十五歳じゃない」

「まだ十五じゃなくて、もう十五よ」

「ふーん」

「どうでも良さそうに相槌しないでよ。十五歳の妹と二十歳の兄が一緒に寝るとか、ランどう思う?」

「えーと、なかよしだね?」

「そう。じゃあ今夜はランが添い寝してくれるのね」

「すみません良くないと思います」




378【 さぁお手をどうぞ 】

「それはあたしと添い寝するのが嫌なのかしら、兄さんと添い寝するのが嫌なのかしら」

「えーと。うん、今日は手紙の受取人を探そうと思ってるんだけど」

「またあからさまに逃げたわね……ラン」

「な、何マオ?」

「ん」

「マオ、まだちょっと寝てる?」

「ばりばり眠いわよ。だから起こして」

「はいはい」




379【 会いたい 】

「夢?」

「そう、夢よ」

「ずっと待ってるって?」

「待ってた、の方が正しいわね。言ってる事全部、過去形だったもの」

「マオはそいつを知らないんだね?」

「うん。顔とか全然覚えてないけど、あなた誰って思ったのだけは間違いないわ」

「ふぅん……マオ」

「何?」

「今日からしばらく、単独行動禁止ね」




380【 おるすばん 】

「単独行動禁止って言っといて、宿で待ってろってどういう事なのかしら」

「意味合いとしては自宅待機だろうな。この集落にそこもとらの家など無いのだから、厳密には不可能ではあるが」

「そういう事を言ってるんじゃないの! ていうか何でユンちゃんが居るの!?」

「護衛という名の単なる留守居役だ」




381【 特別な想い 】

「ボクの愛しい妹の傍に、キミが居てやらなくて良いのかい?」

「シオンこそ」

「ボクとしては是非ともそうしたいところだったんだけれど。愛しいシャオに働けと言われてしまってはね」

「そう」

「それで、キミは何をそんなに警戒しているのかな?」

「……マオの意識に、接続してきた奴がいる」

「まさか」




382【 会いたい 】

「ぼくらは気の長いイキモノだ。だけど、だからこそ、なのかな。この長い生を待つ事のみに費やすと決意した時、その時間はただの苦痛と成り果てる。長く生きるだけのぼくらが、永い苦痛に耐えるだけの存在となってしまう。イキモノからただのモノに成り果てるとしても、それでもぼくは」

 ふむ、成程な。




383【 心配ないから 】

「シオン、落ち着け」

「放せセイラン!」

「マオなら大丈夫だ。僕が何も対策を立てていないと思うのか?」

「……何をした?」

「ユンを置いてきた」

「彼が、何だと」

「僕ら鳳凰種の、設置型術式の第一人者だよ。儀式系なら大抵こなすんだ、勿論カウンターもね」

「キミは案外、過激だな」

「よく言われる」




384【 包んであげる 】

「ユンには接触があれば、マオには触れさせず気付かれず且つ速やかに捕捉してくれるように頼んである」

「捕捉だけかい?」

「基本はね。もしマオが危ないようなら、僕らの分を残してなくても文句言わないとは言ってあるけど」

「僕ら?」

「あれ、シオンは参加しない? マオに手を出す輩の、殲滅包囲網」




385【おやすみ】

「起きたか」

「え、あれ。あたし寝てた?」

「うむ。昨夜の眠りが足らんかったのではないか?」

「いや、そこまで睡眠不足って感じはしてなかったんだけど。えー」

「何ならセイランと兄御が戻るまで、もうひと眠りしていても構わんが」

「でも」

「眠れる時に眠っておくのも、冒険者としての心得だろうて」




386【 今日が終わる前に 】

「そう物騒な言い回しをするものじゃないよ」

「相手が禁術に手を出していても?」

「何?」

「この集落自体が、そいつの実験場になってる可能性がある。これはマオも知ってる」

「標的がシャオかも知れないという事は?」

「それは言ってないし、まだ気付いてない。だからマオが気付く前に、ケリを付ける」




387【 たったひとつ壊せないもの 】

「キミがあの子を大事に思い守ろうとしている事は分かる。だが、あの子の意思を曲げるような事だけは避けてくれ」

「分かってるよ」

「本当だな?」

「というか、僕やシオンにマオの意思を曲げるなんて事、できると思う?」

「……無理だね」

「だろ?」

「要らない心配だったか」

「そうでもないと思うけど」




388【 ずっと前から… 】

「ボクはあの子を心配しすぎているという自覚はあるんだ。あの子はボクが居なくとも、きちんと自分で立つ事のできる子だ。けれど、それでも心配してしまうのが、兄心というものだろう? だからボクは、愛しい妹にバカ兄と言われても決してめげない。めげないとも!」

「涙目で言われても説得力ないよ」




389【 言えない、言わない 】

「まぁ良いじゃない。シオンはマオに嫌われてはいないんだし」

「何を持ってそう思う」

「マオがシオンに怒る時いつも……いや、やめとく。僕から言って良いのか分からないし」

「気になるじゃないか」

「マオも無意識だろうし。どうしても聞きたいなら、本人の許可を取ってきてくれる?」

「無茶を言うな」




390【 はだしになったら 】

「娘御よ」

「なーに、ユンちゃん」

「随分と寛いでおるようだが」

「だって、どうせ出かけられないんだもの。だったら全力で休んでやるわよ」

「休む事に全力を出しては、休めないのではなかろうか」

「休めるわよ。ていうか、ユンちゃんは家で靴脱がない?」

「はて。当方家を出て久しい故、覚えが無いな」

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