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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
13/59

301-330

301『お腹いっぱい君をください』

「うちの父さん、母さんに対して過保護なのよね。いえ、母さんには正しい対応なのかも知れないけど」

「マオ、ちょっと話が見えない」

「要するに、うちの母さんって何でも豪快すぎるのよ」

「例えば?」

「畑を耕すって言って、家から見える限りの範囲の土を全部掘り返しちゃったり?」

「うん、豪快だね」




302『多分上手く笑えていない。』

「ステーキの気分だからって山で狩って来たり、父さんの誕生日にお揃いの指輪贈るんだって鉱脈掘り当てて来たり、後は」

「まだあるんだ」

「まだまだあるわよ」

「何が凄いって、それ全部結果出してるっていうのが一番凄いよね」

「そうなのよ。やり遂げちゃうから、父さんも余計に目が離せないみたいで」




303『身勝手な論理』

「つまり、マオのお父さんは世話を焼くのが好きっていうより、何やらかすかとハラハラするから目が離せないって言った方が正しいのかな」

「そうかもね」

「それで?」

「ん?」

「そんな意外と過保護でもないお父さんに対して、マオのお母さんはどう思ってるの?」

「アタシったら愛されてるわぁ、だって」




304『最初から最後まで』

「良いのよラン、素直に呆れても」

「そういえば、マオのお母さんって後輩冒険者から好かれてたんだよね」

「何よ、いきなり」

「いや、豪快で懐が深い美人とか、そりゃ慕われるだろうなって」

「あたし、母さんが美人だなんて言った覚えないけど」

「マオのお母さんだろ? 綺麗じゃない筈ないと思うけど」




305『男のロマン』

「ランって時々、さらりとろくでもない事言うわよね」

「え、そう?」

「そうよ」

「そんな碌でもない事なんて、言った覚えないけどなぁ。ガーディじゃあるまいし。心当たりが全然ないんだけど」

「ああ、確かにあのおじーちゃんはロクデナシよね」

「マオ、まだまだ根に持ってるね」

「猫の恨みは強いのよ」




306『1+1=1』

「猫の恨みっていうより、マオの恨みって感じだけど」

「どういう意味かしら?」

「そのまんまだよ。マオの恨みは強いかも知れないけど、蓄積してはいかないタイプだし」

「どういう事?」

「マオはガーディを怒ってるけど、いつ言われた、何回言われたって数えたりはしてないだろ?」

「一度で充分有罪よ」




307『ただし、ご注意を。』

「まぁ、マオの気が済むようにすれば良いよ」

「いいかげん許してやったら、とか言わないのね」

「ガーディの自業自得だし、僕が困る訳でもないし。それにあんまりマオと仲良くされたら、僕が淋しくなるし」

「さみっ!?」

「そろそろ寝よっか」

「そ、そそそうね!」

「お休み、マオ」

「おやすみなさい!」




308『目を閉じれば』

「……ねぇ、ラン」

「……何、マオ」

「あたし達以外に、泊まってるヒトって」

「居ないね。久しぶりの客だって、店主さん言ってたし」

「そうよね」

「ついでに店主はここに住んでないから、用があったらそっちに来いって家を教えてくれたよね」

「そうなのよね。でもそれじゃ、廊下の気配は誰なのかしら」




309『息の根止めて』

「今回の依頼人絡みか、それとも全く無関係な泥棒か」

「撃退しても、あたし達正当防衛よね?」

「どうかな。強盗だとしたら集落のヒトだろうから、下手したら僕達に非があるって事になりかねないけど」

「なら尚更、相手が生きてる方が面倒じゃない」

「マオ、なんか妙に発想が物騒だね?」

「ねむいのよ」




310『新婚ごっこ』

「とりあえず、トドメを刺すのは最後の手段で」

「まずは様子見ね。どうするの?」

「どうしよう?」

「とどめさしちゃだめって言ったのランなんだから、ランがかんがえてよ。あたしはねむい」

「うん、マオの頭が全然働いてないのはよく分かった」

「で、どうする?」

「うーん、あの設定の続きでもやる?」




311『罠だったとしても』

「相当眠いみたいだし、厳しいかな」

「できるわよ」

「それじゃあ、僕に話を合わせてくれる?」

「うん」

「さて」

「らん?」

「愛しい愛しい僕のシャオマオ」

「待って何それ何その発言」

「あ、起きた」

「そんな事はどうでも良いの! 何今の!?」

「え、めんどくさい恋人達」

「設定ってそれ!?」

「うん」




312『境界線の引き方』

「無理です。ほんとにその設定は無理。これ以上続けたらあたしは死ぬ。死ねますホント」

「そこまで嫌がらなくても。僕だって傷付くんだよ?」

「嫌とかそういう問題じゃないのよ。あたしが死ぬって話よ。ランに恥ずか死にさせられる」

「そんなに恥ずかしい事言ってるかなぁ」

「無自覚なのが尚更悪いの」




313『日常崩壊寸前』

「そろそろ当方の存在に気付いてはくれんだろうか」

「え、わっ、ユンちゃん!?」

「先に言っておくが、ノックはしたぞ」

「小さかったんじゃないの」

「何を言うかセイランよ。ほれこのように(トントントン)」

「普通だね」

「だからそう言っておろうに。娘御を愛でる邪魔をしたのはすまんが、緊急でな」




314『全部全部、君のせい』

「娘御って呼ばないでよ。じゃなくて、宿に入って来たのがユンちゃんなら、何でランが気付けなかったのかしら」

「うむ。当方以外にも入り込んどるからな」

「それを早く言ってよ!」

「だから緊急だと言うたであろうに」

「紛らわしいのよ!」

「まあまあ、文句は後にしよう。とりあえずユンはこっち来い」




315『無自覚ヒーロー』

「お前、そいつ見たのか?」

「顔を合わせた訳ではない故、詳しい事は分からんが。猫族の若いのだろうな」

「猫族?」

「おそらくは白虎種だろうと思うが」

「白虎種?」

「年は?」

「はて。そこもとらに近いように見受けたが」

「……マオ?」

「……何で、なんっで居るのよバカ兄ぃい」

「ふむ、知り合いか」




316『負けず嫌い』

「前に話したろ、マオの兄さんだよ」

「おお、そこな娘御に愛情を注ぐ事に余念がないと評判の」

「評判なの!?」

「マオ、例えだから」

「ふむ。娘御は随分と余裕が無いようだが」

「寝入り端に起こされて眠い上に、予想外にお兄さんとエンカウントしそうで動揺してるんだよ」

「眠くないもん起きてるもん」




317『長く一緒にいた影響』

「年と種族だけで兄御だと決めつけるのは早計ではないかと思うのだが」

「他に情報あるの?」

「ふむ、何やら鳥らしきものを連れておったな」

「トリ!?」

「うむ。見事な紫紺色をした精霊鳥だ」

「確定じゃない分かってたけど更に確実にうちのバカ兄決定じゃないのぉお」

「ほう、あれは兄御の連れ合いか」




318『ゲームを始めようか』

「契約精霊らしいよ」

「ほう、もう生涯を誓い合ったと」

「分かってるの、もうユンちゃんが分からない事は分かってるのよ。だから分かんない言動にももうあたしはつっこまないんだから」

「ふむ。若い娘はしばしばよく分からん事を言うな」

「ユンちゃんに分かんないって言われた!」

「マオ、落ち着いて」




319『愛してるも役不足』

「む?」

『どうしたの?』

「いや、どうもボクの愛しい愛しいあの子が近くに居る気がしてならなくて」

『あの森に居たのだから、近いといえば近いわね』

「そうだね。けれど違うんだ」

『アラ、どう違うのかしら』

「実家に居た時のような身近さで、存在を感じるんだ」

『会いたいと思うからかも知れないわ』




320『反則だらけ』

「そこもとと兄御は随分と年が離れておるのだな」

「五歳差は離れてるうちに入るのかしら」

「何と」

「何よ、うちの兄が二十歳だったら悪いっていうの」

「否悪くは無い。悪くは無いが、精霊を己が色に染め上げるには、圧倒的に時間が足りておらんなと」

「出会った時にはあの色だったらしいけど」

「ほう」




321『なんだって知ってた』

「娘御の兄とは、如何様な人物か?」

「バカよ。バカだけど、ヒトサマに迷惑かけるような事はしないバカだから」

「マオ以外ね」

「ラン、言わないで」

「ふむ、そうか。それはまた、何とも愉快な話だな」

「ユンちゃん?」

「否何、つまりその精霊殿とそこもとの兄御が、運命の相手だったと云うだけの事だ」




322『目を閉じて、三秒』

「そこもとの兄御とは、もしや紫雷か?」

「らしいわね」

「ユン、何でそう思った?」

「何、紫鳥の精霊殿を連れておったからな。ギルドの有名どころで紫色ししょくといえば、やはり紫雷だろう」

「何となく付いた名前じゃないのね」

「その者を表す言葉でないと、む」

「あ」

「え、何?」

『一斉通達だ』




323『おいていかないで』

「ふむ、これはこれで面白いが」

「まさか真面目な通達出した後でもこれやられるとは」

「もはや我らの宿命だな」

「背負いたくない宿命だね」

「セイランよ、諦める事だ」

「もう割り切ってはいるよ」

「あたしを除け者にして二人の世界に入らないでよ」

「入ってないから」

「じゃあ、分かるように説明して」




324『嫌味なくらい、できたやつ』

「僕が一斉通達出す前に、一斉通達が来たの覚えてない?」

「あ! 痴話夫婦!」

「マオせめて痴話喧嘩夫婦って言ってあげて。痴話だけで終わらせないであげて」

「え、ダメなの?」

「何となく響きがどうかなって」

「そう?」

「セイランよ、はっきり教えてはどうだ。痴話とは情」

「ユンは黙ってようか?」




325『そのセリフ、そっくりそのまま返す』

「ランがまたユンちゃんといちゃついてる」

「マオ、いくらマオでも僕だって怒る時は怒るからね」

「むぅ」

「拗ねてもダメ」

「ランのケーチ」

「ケチで結構」

「そこもと等も中々に愉快な番になりそうだな」

「ユン?」

「分かった当方黙っておる」

「ユンちゃん、空気読めたのね」

「マオ?」

「はい黙ります」




326『唯一の』

「あぁもう、何の話してたんだっけ」

「痴話り夫婦が痴話ってるって話じゃないの?」

「マオの中で痴話がどれだけ活用形を保持してるのかは、気になるけど置いておこう」

「うむ、差し迫った問題は、侵入者を消すか否かだな」

「待って一応曲がりなりにもうちのバカ兄消さないで!?」

「その修飾語要る?」




327『来世でもよろしく』

「うちのバカ兄は生まれ変わっても多分バカ兄だけど、さしあたってユンちゃんに迷惑掛けてないなら見逃してやって!」

「マオ、落ち着いて」

「うむ。何を言っとるのか分かりにくいのだが。つまりは生まれ変わっても兄妹という事か?」

「生まれ変わらせないでやって!?」

「だからユンはちょっと黙れ!」




328『君という名の』

「あのねマオ、ユンもいきなり抹殺とかしないから。最悪でも初手は拘束だから」

「ホント?」

「ホントホント。な、ユン」

「うむ」

「あと、そいつはマオが嫌がる事は絶対しないから。それだけ覚えといて」

「ほう、成程。理解した」

「え、何?」

「シオンと拳で会話するなって話だよ」

「今ので?」

「そう」




329『最初から最後まで』

「現状を確認しよう。まず、この部屋に僕とマオとユンが居る」

「で、この宿のどこかにうちのバカ兄も居るのね、お姉さま同伴で」

「おねえさま?」

「ユンが見たっていう精霊の事だよ。何か謎の意気投合しちゃって」

「謎とは何よ」

「まあまあ。で、宿の店主とか他の泊まり客は居ない」

「計四名と一体か」




330『無自覚ヒーロー』

「むっ」

『シオン?』

「愛しいあの子の気配が、隠されている気がする」

『どういう事かしら』

「ここにボクのシャオが居る筈なのに、その気配がない」

『鳳のが隠しているんじゃないかしら』

「ああ、彼なら造作もない事か」

『ワタシからも隠せるなんて、鳳凰種の成体くらいだもの』

「つくづく規格外だな」

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