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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
11/59

241-270

074から、うすらぼんやりと話が続いています。

241『だいたいそんなかんじ』

「つまり何が言いたいのかというと、僕はそこまでマオに甘くないよって事かな」

「もう甘い甘くないの問題じゃないわよ、それ」

「そうかな?」

「そもそもどうして鳳凰種に不老不死を願って叶うと思ったのかしら」

「神様の代わり?」

「え、それ昔バカが居たって話なの?」

「マオならそう言うと思ったよ」




242『ふたりぼっち』

「その叶えようとした鳳凰種もね、別に滅私奉公しようとした訳じゃないんだよ」

「ふぅん。つまり、その鳳凰種にも何かメリットがあったのね?」

「そいつにとっては、ね」

「何だったの?」

「相手と自分だけが不老不死になれば、自分が相手の特別になれる」

「……随分と間違った独占欲ね」

「そうかもね」




243『正直に申し上げます』

「でも、全く理解できないとは言わないよ」

「不老不死が? 独占欲が?」

「不老不死には憧れないなあ」

「……それはランの感覚かしら、それとも鳳凰種の感覚かしら」

「うーん、微妙なところかな。鳳凰種って、わりと何に対しても極端だからね。とことん興味無いか、興味持ち過ぎて極めるかの二択かな」




244『こりないやつ』

「過去に不老不死を実現した鳳凰種とか、居るのかしら」

「うーん、実行できたのは居ない筈だけど」

「あら、分かるの?」

「話したよね、鳳凰種は必要だと認められれば集まるって」

「八割方ね」

「そう。集まる場合って、大抵はその手の同種の阻止らしい」

「つまり、偶に出る変人枠なのね」

「そうなるね」




245『受け止めてくれるのはあなただけ』

「猫族でいえば、うちのバカ兄みたいなものかしら」

「確かにシオンは、マオが望めば何でもやりそうだけど」

「違うわよ。猫族にとっての白虎種って事よ」

「ああ、偶に生まれるって意味では、そうだね」

「そう。それに、バカ兄のバカはそこまでじゃないわ」

「ん、ごめん」

「別に怒ってるんじゃないわよ」




246『同属嫌悪』

「ちょっと気になるんだけど」

「何?」

「興味ない事にはとことん興味ない筈なのに、そういうのの阻止には大半が乗り気になるって、変っていうか矛盾してない?」

「あー、何て言ったら良いのかな。明日は我が身的に感じるというか何というか……要するに、同族嫌悪?」

「……鳳凰種って」

「言わないで」




247『新着メール1件』

「別に全員にそういう極端さがあるって訳でもないんだよ。まともに周囲への迷惑とか考えて止めに向かう奴も居るし」

「でも、なんか腹立つって理由で邪魔するヒトも居るのよね?」

「それは、まあ」

「やっぱり鳳凰種って」

「そろそろ森を抜けるんじゃないかなー」

「逸らしたわね……そうね、今は仕事ね」




248『僕の居場所』

「でもさ、マオ」

「何よ、ラン」

「僕やシオンが、君が望むなら何でも叶えてあげるって言い出したら、どうする?」

「どうもしないけど」

「……そうなの?」

「そうよ。ランもバカ兄も、討たれるような事させるわけないじゃない。むしろ止める側に回ったげるから、安心しなさい」

「さすがマオ」

「何がよ」




249『逃がしはしない』

「そもそもね、ラン」

「ん?」

「バカ兄がバカなのを忘れているわ」

「というと?」

「ボクの愛しい妹よ、キミが望むなら兄は世界さえキミに捧げてみせよう」

「それは、つまり」

「昔バカ兄が言ったバカなセリフよ」

「ちなみに、マオは何て返したの?」

「じゃあその呼び方やめて、って言ったら泣かれたわ」




250『ハッピーエンドの来ない悲恋こそ美しい』

「泣いたんだ……」

「愛しい妹を愛しいと言うなとは、ボクの愛しい妹はなんと残酷な事を望むんだ、って叫びだしてね。ごめんね兄さんもう言わないからって謝った当時の自分を叱りつけてやりたい」

「そ、そうなんだ」

「だっておかげで未だにその呼び方よ? いい加減にしろってのよ」

「マオ、落ち着いて」




251『普通の尺度』

「ちなみにこれ、あたしが十歳の時の事よ」

「て事は、シオンは」

「ちょうど十五で成人した年ね」

「つまり」

「そう。家を出るにあたって、あたしと別れるのが嫌だってゴネにゴネてた時の話よ」

「結局は出たんだよね?」

「そうね。年に数回帰って来てたけど」

「多い……よね?」

「年に一度でも多いわよ」




252『甘やかせる権利』

「あたしが家出る時には必ず見送りに来るって言ってたから、両親と相談してバカ兄がいない隙に家を出たのよ」

「ああ、その勢いだと一緒に旅するとか言いそうだもんね」

「でもね、あたしが本来家を出る筈だった日に、訊ねて来たのよ。居場所なんか知らせてなかったのに」

「ああ、昨日みたいな」

「そう」




253『香水』

「昨日のアレを街中でやられたわ」

「それは、お疲れ様」

「来るなら連絡くらいしてって言ったら、きっちり前日に連絡よこすのよ。どうやってあたしの居場所知ってるのか未だに謎だけど」

「……あ」

「何、どうしたのラン」

「いや、ひとつ思い当って」

「え?」

「それ、鳳凰種の技術かも知れない」

「は?」




254『無自覚ヒーロー』

「鳳凰種間の緊急連絡網みたいな技術があるんだ。シオンはそれ使ってるんじゃないかな」

「ラン、バカ兄にそんなの教えたの?」

「まさか。むしろ自力で編み出したんじゃないかと」

「は?」

「鳳凰種じゃなくても、発想さえできれば割と誰でも使える技術だったりするからね」

「……なんなのうちのバカ兄」




255『たとえばの話』

「あくまでも可能性の話だけどね」

「意外すぎる可能性ね」

「でもそうすると、おかしな事がひとつあって」

「何?」

「香水の件なんだけど」

「ああ、バカ兄が言ってたっていう」

「そう。その香りについて、シオンが知らなかったのはおかしい事になる」

「その、鳳凰種の技術だとって事?」

「うん」

「へえ」




256『お気に召すまま』

「香りで相手を探してるって事?」

「うーん。そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるかな」

「つまり、どういう事なの」

「匂いを辿るって意味じゃあってるんだけど、別に術者本人が辿る訳じゃないんだよ」

「誰かに頼んで探してもらうような感じかしら」

「あ、近いね。犬族に依頼したようなもんかな」




257『目を閉じて、三秒』

「誰かに探してもらうなら、ギルドに依頼するのと同じ事じゃないの?」

「そんな感じってだけで、実際に誰かの手を借りる訳じゃないからね」

「そうなの?」

「鳳凰種が連絡を取るのって、非常時とか緊急時が多いんだよ。一人でも即実行できる手段じゃないと」

「具体的には?」

「深呼吸するくらいの時間」




258『人生で一番』

「あとは対象を探すのに結構な集中力が要るんだけど。シオンはもうちょっと気を散らしても良いと思う」

「つまり、バカ兄のあたしへの関心って事ね」

「そう」

「確かに、もうちょっと他にも興味持ってもらいたいわ」

「まあ、他に無関心って訳じゃないから。マオが一番ってだけだし」

「それが問題なのよ」




259『そのセリフ、そっくりそのまま返す』

「でもあたし、それらしい連絡受け取った覚えないわよ?」

「多分、前半部だけだからじゃないかな」

「前半?」

「そう。相手の居場所を特定して、連絡を取る。その前半」

「詰めが甘いわ」

「でも単身その手段に辿り着くって、凄い事なんだよ?」

「鳳凰種の技術ってだけで凄そうだけど」

「そうじゃなくて」




260『この、リア充が』

「別に鳳凰種じゃなくちゃ実行できないって方法じゃないんだ。ただ一族郎党ふらふらしてて、連絡取り合う手段がわりと切実に必要だっただけで。だからこそその手段が作られたっていうか」

「要するに、どういう事なの」

「遊びに行ったまま帰ってこない奴ばっかりな氏族なんだよ」

「人生謳歌してるのね」




261『だいたいあいつのせい』

「鳳凰種の放蕩癖はどうでもいいんだよ。今はシオンの話だろ」

「そうだったわね。バカ兄が極めたバカだっていう、どうでもいい再確認をしたところだったわね」

「極めた……って」

「だってそうじゃない。素直にあたしに、会いたいから今どこに居るのって訊けば良いのに」

「教えるの?」

「教えないわよ」




262『結論はとうに出ている』

「マオ、言ってる事が無茶苦茶だよ?」

「まず正攻法を試せって言ってるのよ」

「それは分からなくもないけど」

「ねえラン。あたしが言った事だけど、自分達の技術にケチ付けられたら怒って良いのよ?」

「いや、鳳凰種は正攻法を試してダメだった種族だから」

「普通に連絡取れないの?」

「そうなんだよ」




263『本当、だったり。』

「もしかして、ランってかなり協調性高い方だったりするのかしら」

「そうでもないよ」

「そう? でもあたし、ランがどっか行っちゃうとか他人と揉め事起こすとか、見た事ないけど」

「色々とフリーダムな鳳凰種だけど、別に独りが好きな訳じゃないし、イコール短気って訳でもないからね?」

「そうなの?」




264『夢だけの世界』

「鳳凰種って、要するに我慢しないヒトが多いのかなって思ってたんだけど」

「そうとも言えるけどね。でも、さすがに小さな子供みたいな我儘は言わないよ……たぶん」

「たぶん?」

「うん、多分」

「……そう」

「……うん」

「あのね、ラン」

「何、マオ」

「頑張ってね。その、色々と」

「……ん、ありがと」




265『新着メール1件』

「あ」

「え?」

「うわ、マジで?」

「ラン、どうしたの?」

「いや、タイムリーというか何というか」

「さっぱり分かんないんだけど」

「今さ、鳳凰種の連絡網の話してたじゃない」

「連絡網って言われるとお隣から回覧板とか来そうだけど、うん」

「来た」

「え?」

「全鳳凰種への一斉通達が、来た」

「え?」




266『唯一の』

「えーと、こっちかな」

「ねえ、ラン」

「何、マオ」

「良いの?」

「ん?」

「さっきの! 鳳凰種の! 一斉通達ってヤツよ! 何フツーに進もうとしてるの緊急事態なんじゃないの駆け付けたりとかしなくて良いの!?」

「あー。良いの良いの」

「ラン!」

「だって今の、奥さんへのごめんなさい連絡だし」

「へ?」




267『だいたいそんなかんじ』

「珍しく鳳凰種同士で一緒になった夫婦が居るんだけどさ。よく夫婦喧嘩するんだよ。それで家を追い出されたり奥さんに出て行かれたりした旦那さんの方が、鳳凰種同士なのを良い事に、一斉通達で謝罪を送るんだよね」

「つまり、痴話ってるのね」

「あ、そうそう。まさに痴話喧嘩」

「なんって、傍迷惑な」




268『アンビバレンス』

「その旦那さん、何て言ってたの?」

「帰ってきてくれー、グラタンにトマト入れてももう何も言わんからー、いや待て、何で俺ばっかり譲歩せにゃあならんのだ、パスタとお米を一緒に茹でるのだけは許さんぞこのやろー」

「グラタンにトマトって怒る事?」

「切らずに丸ごとドボン、らしいよ」

「独創的ね」




269『いつもの癖』

「せめて皮剥いてヘタ取って、いやでもいっそヘタはそのままの方が、アクセントになって良いのかも?」

「ちっちゃい緑ならパセリでも乗せれば良いじゃない。なんでわざわざヘタなのよ」

「それもそうか。焼いてから最後に乗せた方が色も鮮やかなままだしね」

「そうよ……って、なんで料理の話になるの」




270『Marry me?』

「ああそっか、夫婦喧嘩の話だったね」

「違うわよ!?」

「思い出した、一斉通達に応えなくて良いのかって話だ」

「それよ!」

「中身を知ったマオに訊きます。応える必要あると思う?」

「全く無いわね」

「でしょ?」

「随分と傍迷惑な夫婦ね」

「プロポーズとその返事も一斉通達で済ませてたしね」

「は?」

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