サギッタ
続きです、よろしくお願い致します。
※2014/11/13:ルビ振り等若干修正。
僕は今、再び体育館程の広さの部屋――謁見の間にいる。
目の前には目をキラキラと輝かせる王様――ジェネロ様とフィリア、そして疲れた顔をした王妃様――ドミナ様と神官長様。
先程、僕がフィリアとオルディさんに「『武器化宣誓』を試したけど、紋章しか出なかった」と言ったら、今の状況になっちゃったんだけど……。
フィリアとオルディさんによれば、『紋章術』を使える様になると人は自然と自分の適性――『武器化』か『術化』か――に特化してしまうそうだ。
どちらに適性があるかは、単純に宣誓を行った場合に紋章が浮き上がるかどうか、らしい。
つまり、宣誓しかしてないものの『武器化』宣誓で紋章が浮き上がったと言う事は……僕に『武器化』使いとしての素養があると言う事で、僕には既に『術化』を行った経歴があるから、つまり……。
「ふむ……『武術化』使い、とでも言おうか? てっきり伝説の類と思っておったが……」
どうやら両方使える人は歴史上四人ほどしかいないらしい。(それも事実かどうか不明らしい)
「えっと、僕はどうすれば良い、のでしょうか?」
「うむ、フィーにも相談されたが……まずは、事実かどうかを確認するのが先じゃなかろうか?」
「「……あっ!」」
フィリアとオルディさんが二人して「しまった」って顔してる。よっぽど、興奮してたのかな……?
僕は、ジェネロ様の言葉を聞いて漸く、自分が何をしたかったかを思い出した。
「えっと、それで……僕、宣誓の後どうしたら良いか分からなくて」
「成程のう……」
ジェネロ様がフィリアとオルディさんをじろりと睨む。これは、何だろう「早とちりじゃなかろうな?」と言う視線?
「まあ良い、神官長! タケル殿に手ほどきを……」
「はっ! それでは、タケル殿、儂について来て下され」
「は、はい……」
そのまま僕は神官長――セチェルドスさんと言うらしい――に付いて行く。
やがて、城の中庭みたいな場所に案内されるとセチェルドスさんが僕の方を見て言った。
「姫様やオルディからは『武器化宣誓』のみ、教わったのですな?」
僕は無言で頷く。
「それでは、この爺めがその先の手ほどきを致しましょう。まずは、宣誓をして頂けますかな?」
「あ、はい、よろしくお願い致します!」
僕は慌ててお辞儀をする。それにしても、何だかセチェルドスさんを見てると本当にじいちゃんを思い出すな……。
「じゃあ、やります! 『アクア・シールド』!」
うん、ちゃんと出た……。
僕の前には昨夜と同じ様に、青い紋章が浮かんでいる。
「これは……いやはや、この歳でここまで心を躍らせる日が来るとは……」
何だか、セチェルドスさんも目をキラキラさせだした……。
「えっと、セチェルドスさん……この後って、どうすれば……?」
「ん? おお、申し訳ない年甲斐も無くはしゃいでしまいましてな? それと、儂の事は『爺』か『セチェ爺』とでも呼んで下され?」
セチェルドスさん――セチェ爺はそう言うと顎から延びる長い白髭を撫でてから僕の前で人差し指を立てる。
「基本的に『武器化』で取り出す武器は、人それぞれですじゃ……。例外は『アックス家』などの『コンスタント』じゃの。あ奴らの武器は当主から次期当主へと継承されるからの」
「成程……だから『アックス』で、斧……か」
「そう言う事じゃから、『通紋』で行う『武器化』はその者の心から武器を取り出す感じじゃな。まあ、大雑把な言い方じゃと『通紋』はその者の『魂』や『心』から武器を取り出し、『通紋』より格上の紋章は『体』や『血』から武器を取り出すと言った感じかのう……」
「……心に感じる武器……」
目を閉じて集中してみる――――――――あっ!
「何か黒い影が見える……」
「そうじゃ、ソレで良い。心に詠唱も浮かぶはずじゃ! それを唱えるのじゃ!」
詠唱……、これか……?
「『アクア・サギッタ』!」
僕が心に浮かんだ詠唱を唱えると、中庭に青い光が迸る。
「おぉ! ここに……伝説が……!」
そして、光が収まると僕の手に一つの『矢』が握られていた。
「あれ……? コレって矢……だけ? 弓ってないの?」
「ほほう、矢のみとはまた珍しい……少しお待ち下され」
そう言うとセチェ爺は、近くにいた騎士の人に頼んで『弓』を持って来て貰っていた。
「さて、『武器化』で出した武器は基本的には本人しか使えんからの。弓の引き方は分かるかの?」
当然、分からないので簡単にセチェ爺に教えて貰う。
そして、いよいよ試してみる――と言う時に。
「あの岩には『硬化』の術を施してある、あれに向かって射るが良い」
深呼吸して僕は岩に狙いを付ける。
「ふぅぅぅぅ……ふっ!」
――ヒュッ!
僕が放った『アクア・サギッタ』は見事に刺さり――。
「あ……」
「なんと!」
そのまま岩を切り裂いてしまった。
「よもや、風紋でなく、水紋で岩を切り裂くとは……」
「なんか、すいません」
僕は気まずくなって謝ったけど、セチェ爺は「よいよい」と言って非常に上機嫌だった。
その後も火紋、風紋、土紋で『武器化』出来る事を確認し、ジェネロ様達に報告する事に。
報告を受けたジェネロ様は「次は儂も見たい」と言いだして、ドミナ様に大層怒られていた。
「タケル様! フィーも見たいです!」
――鶴の一声、と言うか、結局フィリアのこの一言で今度は王様一家とオルディさんも含めて僕の『武器化』を披露する事に……。
そしてその後、色んな偉い人が話し合った結果、僕はこの世界の一般教養を一月ほど学んでから、フィリアやオルディさんも通う『紋章学校』と言う所で『紋章術』の勉強をする事を勧められた。
フィリアやオルディさんもいるなら良いかな、と言う事で一月後の『紋章学校』の編入試験に向けて準備をする事になった……。




