対暴走(1)
続きです、よろしくお願いいたします。
「「「「ンヴェェェ」」」」
「「「「「「ピギィィィ」」」」」」
「「「「ヒャッヒヒャッヒ」」」」
――僕達は、あれから王城の外に飛び出していた。そして、田畑を荒らし回っていると言う『ルピテス』を何とかしようと、意気込んで来たんだけど……。
「「「「ヒャッヒヒャッヒ」」」」
何だ、アレ? 茶色の『羊型』ルピテスの背中に、紫色の猿――多分、『猿型』が乗っかって、木刀? を振り回しちゃってる……。――って言うか、あの猿、鳴き声がイラッとする。
それにしても、百は居ないって聞いてたけど……嘘だよね?
「――馬鹿な……、こんな短期間に倍ほどに増えているっ」
「チッ、どうやら生意気にも先遣隊……のつもりだったんだろうな……」
――僕達を案内してくれた兵団員さんと、エスケが状況確認しながら何やら、猿を――『ルピテス』の族――じゃないや、群れを舌打ちしながら睨み付けている。
「アックス卿、まずは、どういたしましょう?」
フィーは、王城の柵から外を見ながら、エスケに問い掛けている。――そして、その視線は悔しそうに、『敵』に狙いを定めているかの様に、強く、強く、輝いている。
「――姫様、あまり柵にお近づきになりません様に……」
「オルディ……」
そして、そんなフィーを抑える様に、オルディがフィーを柵から離す――。
「――まずは、『スクト兵団』と『火紋隊』で蹴散らすのが良いだろうな……」
「そうだね、敵が『風紋羊』だと言うなら、僕や、アックス卿、ニムちゃん、イタクラ君と言った『定紋』持ちは力を温存した方が良いかもしれない……」
「そうやんな~、ここは、皆を信じてグッち、堪えるしかないかもしれんね~?」
エスケとシーヴァ君、ニムちゃんは、リウさんから借り受けた王城周辺の田畑を記録した図面を見ながら、そう結論付けているみたいだった。
「――んっと、『アルティ』だとそうか……、で、『スクト』の『定紋』持ちって言うと?」
――多分、温存するならするで、両国で揃えた方が良いかなぁ……なんて、考えて、僕は『スクト』の人達をチラリと見てみる。
「――まず、あたくしと、父上は『香紋』の『定紋』持ちです」
すると、まだ痛むのか、ファルメル様に拳骨を落とされた辺りを押さえながら、マロアさんがスッと前に出て来た。
それに続く様に、次はリウさんが前に出て来る。
「――それがしは、『雹紋』の『定紋』持ちだ……」
――って事は、七人? あ、フィーも入れると八人……かな?
「それだけ居れば、何とかなる気もするけどなぁ?」
今も増え続ける『ルピテス』達を見ながら呟くと、ズイッとリウさんが僕の肩を叩いて、柵の外を見る様に促して来た。
「――心強い……が、アレを見ろ……」
「アレ……? アレってっ!」
ちょっと遠く……、目を細めて見てみると、『羊型』に乗っかった『猿型』が、稲っぽい何かの作物をその手の木刀で刈り取りながら、それを止め様とする人を殴りつけてる!
「い、行かなきゃ!」
「――待て……」
思わず柵を乗り越えようとすると、リウさんが凄い力で、僕を押さえ付けたまま、そのまま見続ける様に言ってくるんだけど……、正直、そんな悠長な事は――。
「む、流石……『スクト兵団』兵団長……、既に手配済みでしたか……」
「? エスケ? ――手配済みって……?」
――あ、良く見たら、『猿型』に殴られた誰かを、『スクト兵団』の制服を着た人が……。
「――『火紋隊』にも、ご協力願っている……感謝……」
僕達の視界の先では、助け起こされた誰かが、『スクト兵団』の人にペコペコ頭を下げて、そのまま、『火紋隊』の人に促されてこっちに向かって来ている……。
「もしかして……、僕達がここに出て来る前からああやって?」
だとしたら、僕はその人達の邪魔になるところだった?
――リウさんは、無言でコクリと頷いて、そのまま、もう一度……。
「――見ろ……」
そう言った。
僕は、今度こそ、リウさんの言う様に、目をしっかりと開いて、リウさんが指す方向を見る。――すると、そこでは……。
「――『火紋隊』、『術化宣誓』用意!」
「「「「「――『イグニス・アージェント』!」」」」」
「――『スクト兵団』、『術化宣誓』!」
「「「――『ソルマ・アージェント』」」」
「「――一同……、撃てぇっ!」」
「「「「「『イグニス・オーア』!」」」」」
「「「『ソルマ・オーア』」」」
――『火紋隊』の部隊長さんと、『スクト兵団』の部隊長さんっぽい人達が、声を揃えてそれぞれの部隊に指示を出して、いるみたいなんだけど……。
「「ヒャッヒヒッ」」
「「ンヴェェェ」」
――『兎型』は、さっくりと片付いていってるんだけど、『羊型』と、それに跨った『猿型』達は、迫り来る『火玉』と、『土玉』をヒラリヒラリと、綺麗に躱していく。
何あれ……、ロデオ? いや、違うか……、何て言うか、本当に族の暴走みたい……。
「「ヒャヒヒ!」」
「「ンヴェェェ」」
そうこうしている内に、『猿型』と『羊型』は、『火紋隊』と、『スクト兵団』の人達を小馬鹿にする様に、鳴いている。
「――これが、現状だ……」
「――確かに、難しそうですね……」
どうやら、リウさんは『ルピテス』達のあの動きを何とかしないと、僕が言ったみたいに『何とかなりそう』とはいかないって事を伝えたかったらしい……。
さて、それならどうしようかな……。
「――以前、タケル様がやった様に、足元を凍らせては如何ですの?」
と、思っていたらフィーがドヤ顔を浮かべて、そう提案して来た。――そうか、確かに相手は同じ『羊型』だし……、出来そうだね……。
「ふむぅ……」
――でも、ファルメル様はどうやら、それは避けたいみたいで、渋い顔をしている。何で?
「あ、あ~……、助けて貰ってる身であれなんスけど……、『スクト』の主要な産業っつうと、農産業なんスよ……、今、あの辺、凍らされちまうと……、収穫間近の『インネ』がダメになっちまうんス……『インネ』は、火には強いんスけど……」
「ダーラさん……」
多分、ファルメル様が言い辛かっただろう事を、ダーラさんがそう言って「出来るなら、それは最後の手段で」と頭を下げて来た。
「むぅ……、しかし、そうなると……」
エスケはそれを聞いて、何とも言えない表情になる。――多分、作物……『インネ』だっけ? を、無事で済ます方法を考えているんだろうけど……。
「難しいですわね……」
「――だよねぇ……」
そんな方法ある分けない……か? あれ、今、何か思い付きそうだったんだけど……。
「――無茶ばかりで、済まない……」
「――申し訳……無い……」
アヴェ兄弟は、揃って頭を下げている……。どうでも良いけど、この二人、髪型が一緒だと、性格も似た感じだし、見分け付かないよね……。
「――って、しまった……、何考えてたんだっけ……?」
――また、余計な事を考えてしまった……。
「タケル、ドンマイだよ!」
「――バラちゃん……、最近、優しいねぇ……」
「腕枕のおれ――ムググ――」
「うふふ……、バラちゃん、少しわたくしとお話致しましょう?」
何か、フィーが「しまった」って顔して、バラちゃんを連れ去って行ってしまった……。
「――コホンッ……、姫様が所用で席を外されてしまいましたので、この場の責任者として、アックス卿、何か案は有りませんか?」
「――なっ?」
――えっ、ちょ、ちょっと……、オルディ……、流石にそれはいきなりの無茶ぶりと言うか、いや、エスケなら問題無く指揮をとれるんだろうけど……。「案出せ」は……ちょっと……。
取り敢えず、フィーがバラちゃんを連れて戻って来るまで……時間……を……? ――バラちゃん?
「あああああああああああっ、そっかそっか!」
やっと、さっき考え掛けてたことを思い出した!
「タ、タケル殿?」
「――どうした、頭でも打ったか?」
「何か、回復、掛けちゃろっか?」
僕がいきなり叫び出したからか、オルディやエスケ、ニムちゃんが不安気に僕のおでこを触って、熱を測り始めた……。――失敬なっ、僕は正気ですよ?
「オホン、名案とまではいかないし、古典的な手なんだけど、一つ、試してみない?」
「「「「「「「「「――試す?」」」」」」」」」
――おぉ……、この場に居ない、フィーとバラちゃん以外の声が盛大に揃う……。ちょっと、快感だなぁ……って、違う違う、そうじゃない。
「――じゃあ、二人が戻って来たら説明するよ……」
そうして、僕達は、フィーとバラちゃんの帰還を待つ事にした……。
そして、数分後――。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕は、バラちゃんと共に『インネ』畑の中に潜んでいる。――『インネ』は、長さが僕の身長より少し高いくらいで、そんな中にいると、僕もバラちゃんも結構あっさりと隠れる事が出来る……。
「――タケル……、位置に付いたよ!」
「わわっ、バラちゃん、静かに……、シィーだよ?」
「うん、シィシィ!」
――本当に分かってるんだろうか……と、不安になるけど、現状、この手で試してみるかってなったしね……。
まあ、それはともかくとして、僕の案って言いうのは、ズバリ言ってしまえば、バラちゃんを始めとした、『縄』の『武器化』使いによる、引っ掛け作戦。
――うん、比喩でも何でも無くって、本当に、物理的に、引っ掛ける作戦だ。嫌がらせの、悪戯の類って言っても良いかもしれない。
「――『ソルマ・シールド』」
バラちゃんの手の中に、『土紋』が現れる。――続けてバラちゃんは呟く……。ここ、重要です。呟くんです――と、何度言い聞かせた事か……。
「『ソルマ・フゥネンム』! ――シィッ!」
「バラちゃん……、そこで「シィ」は要らないからね?」
――ドヤ顔のバラちゃんの手には、地面と同色の縄が握られている。
「これ、他の子の縄と繋げるの?」
「うん、出来る?」
「――出来るよ! ――シィッ!」
そして、茶色の縄は、シュルシュルと静かに地面を這っていき、途中で他の縄とくっついて、そのまま地面に乗っかったまま、地面と同化していく。
「――じゃあ、地面に這わせたまま、ギュッて引っ張って?」
「ん、こう? ――ギュウゥゥゥ!」
地面から少し浮いてピンと張った『土縄』は、ちゃんと、他の『土縄』としっかりと結び付いているみたいだね……。
それを確認した僕は、そのまま、バラちゃんに黙っている様に促して、その時をジッと待つ――。
大体、五分程待っただろうか……。
「「「「ヒャッヒヒャッヒ」」」」
――一度は『火紋隊』や、『スクト兵団』によって追い払われた、おバカな『猿型』達が、再びやって来た。
「――今っ!」
「んしょっ!」
そして、僕の掛け声に合わせてバラちゃんや、他の『縄』使い達が立ち上がる!
「「「「ヒャギッ?」」」」
――見事というか、立ち上がった時、丁度掲げた『縄』の位置が、『猿型』の首辺りに来てしまった為に、横一列になって並走していた『猿型』達は、面白い位に、揃って頭部を中心にクルリと回って――。
「――落ちたぞッ!」
――そう、地面に転げ落ちたんだ。
後は……うん、可哀想と言うか何と言うか……。
「「「「――『イグニス・セーブル』!」」」」
「「「『ソルマ・オーア』」」」
――まあ、フルボッコ……だよねぇ……?
「「「「ヒャッヒヒィィィ」」」」
そして、乗っけてた筈の『猿型』が落っこちて、身軽になった『羊型』達と言えば……。
「「「「ンヴェッ?」」」」
――不利と見たのか、一目散に駆け出して、『猿型』達を見捨てて逃げて行ってしまった……。哀れな『猿』……だよね……。
「――見事な撤収……、やはり……『頭』か……」
とは、リウさんの弁。――やっぱり、即『仕返し』って言う反射的な行動を取らせないって事は、『頭』である『風紋羊』の統率力が高いって事なのかな?
何にしても、こうして、第一陣? を、退けた僕達は、この隙にと、負傷者の回収と、一般市民の避難を済ませたんだ……。
「んぁぁ~、ちぃとは休ませちょくれ~……」
――回復担当がニムちゃんしかいないってのは……やっぱり、キツイかな……? 暫く休んで貰わなきゃ……。
そして、数時間後――。
「「「「ヒャッヒヒャッヒ!」」」」
「「「「ンヴェェェ」」」」
「「「「「「ピギィィィ」」」」」」
――第二陣との戦闘が始まったんだ……。
おぉ……、久々に眠くなって来た……。




