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道中と接近

続きです、よろしくお願いいたします。

「――イタクラ殿っ! 少しそこをお離れ下さいっ!」


「あ、はいっ! すいませんっ!」


「あっ! それには触れないで下さいっ!」


「はいぃっ! すいませんっ!」


「――タケル殿……、ここは私と、他の者でやりますから……、何処かでお休みなさい?」


「――っ! オルディまで……、チックしょぉぉぉ、ごめんなさいぃぃっ!」


 ――再び米つきバッタ? いえ……、タケル(役立たず)です……。


 羊型のルピテス、『オヴェス(羊型)・ルピテス』の群れを倒した僕達は、昼食として、そのまま、倒したての(オヴェス)肉を頂いて、現在、そのバーベキューの撤収作業中です。


 一応、手伝おうとしたんだけど……。


「いえいえいえいえ~い……、イタクラ殿にその様な事をされては、『火紋隊(我々)』が、『アルクス卿』から叱られてしまいますからっ!」


 ――って事で、断られた……。何か、あの人喜んでた気がするけど……、ともかく、騎士さん達に構って貰えなかった僕は、ちょっといじけながらボーっと歩いてて……、お陰様で、忙しなく作業する騎士さん達とぶつかったり、何だか旗みたいなモノを倒したりして……その結果、さっきみたいな米つきバッタ(邪魔者)が誕生した次第です……はい……、本当ごめんなさい……。


 因みに、『アルクス卿』って人が、例の『腕輪』を作ってくれた人らしい……。もし会う様な事があったら、『アックス』と間違えない様にしないと……。


「――『偉いよ?』の人達の中にいたのかな……?」


 ――覚えの無い恩人の事を考えながら、僕は人気の無い場所を見つけ出して、ポンポンと砂山を作っていた。


 そんな時だった……。


「あら? タケル様、どうかなさいましたか?」


「あ、どげんした~ん?」


「フィー、ニムちゃん……」


『独り棒倒し』に励んでいる僕の元に、フィーとニムちゃんが、何か談笑してたのか、キャッキャッとしながらやって来た。


「いや、ちょっとやる事が無くてさ……、片付けの手伝いも断られちゃったし……」


 ――僕は落ち着いて立ち上がり、砂の山を足で崩す。流石にこんな所は……。


 と、僕が『独り棒倒し』の証拠を消していると、フィーは呆れ顔で、ニムちゃんはクスクスと笑いながら――。


「まぁっ! それは仕方がありませんわ? 今回同行する者達は皆、タケル様がわたくしの婚約者だと認識していますもの……」


「そうで~♪ やけん、タケル君にそげなお手伝いなんかさせたら、騎士さん達のクビが飛ぶけんな~? 注意せんといけんよ~?」


 ――そう教えてくれた……。そうか……、道理で必死な訳だ……。あれ? って事は僕、あの人達に謝った方が良いのかな? 遠回しに「手伝うから、怒られろ」って言ったようなもん?


「――タケル様、謝るよりも、お礼を述べた方が、騎士達は喜ぶと思いますわ?」


 僕の顔が真っ青になっていたらしく、フィーがそう言って、僕の手をキュッと握ってくれた。――そっか、まずはお礼か……、うん……。


「そうだよね……、ちょっとお礼してくるっ!」


「行くんやったら、もうちぃと、待ったら~? まだ、片付けしよんよ~?」


 ――っと、どうやら、僕はまた同じ失敗をするところだった……らしい……。


「えぇ……、ならどうしよう……」


 と、僕が一歩踏み出した足を後ろに戻そうとした……その時だった。


「――あっ! 踏んじゃダメだよ!」


 ――僕の足元から声がして、直後に、僕の背中がグイッと前に押される。


 何事かと思ったら……。


「――え? バラちゃん? え? 居たの?」


「さっきからずっとおったよ~? タケル君とお話ししちょったんやないん~?」


 どうやら、バラちゃんは、相変わらず僕の事を見張っているらしくて……、今日までの三日間も、こっそり? 張り付いていたらしい。――出発前にスェバさんに言われなきゃ気付かなかった……。


 まあ、例のチリチリも感じないし、スェバさん曰く「害はねぇよ? うん、害は……」って事らしいので、気にしないで……良いかな? と思ってたんだよね……。


「あらあら? バラちゃん、何してますの?」


「お山~?」


 ――そう、そこが問題だよね……、フィーと、ニムちゃんの注目を浴びているバラちゃんが何をしているかと言えば……。


「ダメだよっ? 踏んじゃダメっ!」


 何だか芸人みたいな事を言いながら、鼻息荒く…………砂の山に棒を突き立てて、何やらやっていた。――ああ、分かる、分かってる……。


「――これは、良い遊びだよ! タケル、遊び上手だよ!」


 ――どうやら僕の行動は、フィー達が来る前から見られていたらしく……『独り棒倒し』が、バラちゃんの琴線に触れてしまったみたいだった……。


 そして同時に、僕が独り、砂山に挑んでいた事がバレ……、フィーは呆れた様な、ニムちゃんは吹き出しそうな表情を浮かべていて――。


「――タケル様……、わたくしは……、フィーは……、何時でも貴方の味方です……」


「バラちゃん、バラちゃん、ウチにもタケル君がどんなんしよったんか、教えてち~?」


「ん? 良いよ!」


「――いやぁぁっ!」


 ――堪らず僕は、その場から逃げ出した。


 そして、傷心の僕はその後、逃げる様にエスケと、シーヴァ君の元へ逃げて行った。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「――で?」


「いや、それなら――」


「しかし――」


 僕が二人を見つけると、二人は数人の騎士さん達と一緒に、何か話し合っているみたいだった……あ、オルディもいる。


「――何してんの……?」


「ん? タケルか? って……、どうして泣いている?」


「いや、ちょっとねぇ……」


 ――誤魔化しながら、僕は皆が見ていた簡易机に目をやる。


 そこには、どうやら『(エクゥス・トラク)(トォスク・ビィクル)』から取り外したらしい『カーナビ』……じゃなくて『(コンドゥクティブ)結界紋(オビジェ)』の刻まれた丸い文字盤が置いてあった。


「もしかして、ルートの話し合いとか?」


「ええ、ちょっと、この先に種類は分からないんですが……、ルピテスの群れがいるらしくて、どうしたものかと……」


 オルディがチラチラッと『導結界紋』に目を落とすと、確かにそこには、何だか敵を現してるっぽい赤い三角の記号がピコピコしていた。


「うわ……、結構多い?」


「うん、だからどうしようかって」


 シーヴァ君は、肩を竦めてそう言うと、続けて――。


「この辺りは基本平野で、しかも、群れっぽいから、多分、『兎型(ラビ)』、『犬型(カーニェス)』、『(オヴェス)型』辺りだと思うんだけど……、後は偶に『(エクゥス)型』もだけど……」


 ――そう言って、「ん~……」と頭を抱えてしまった……。やっぱり、フィーとかもいるし、基本は戦闘無しの方が良いのかな?


「因みに、距離的には?」


「――そう……だな……」


 エスケはそう言うと、『導結界紋』に触れる。


 すると、『導結界紋』の縮尺がちょっと変わって、『アルティ』の王都が端っこに現れる。


「丁度良い、ボンヤリでも良いから、この辺りを覚えておけ――」


 エスケが文字盤をなぞると、僕達の事を示しているらしい青い丸が、すうっと動き始める。


「――まず、王城を街道沿いに南下していき、徐々に南東へ……、そしてここら辺で方向転換、そこからは北上……、後は海岸線沿いの街道を進んで行くだけだが……」


 エスケの指が王都を起点にしてUの字を描いていき、やがて、ある一点で止まる――。


「ここから約一日半……、多分、その辺りまで行くと接敵する」


 ――丁度、Uの曲線が終了した辺りに赤い三角が集まっている……。って言うか、索敵性能凄いな……。


「って言うか……、これ、ルピテスが移動しないんなら……絶対かち合うよね?」


「――そうなんだよ……海は時期が悪いし……」


 シーヴァ君が言うには、海から行こうにも、どうやら時期的に面倒臭いルピテスが居てマズイらしくて、このまま行けばどっちにしても、戦闘は避けられないっぽい……。何気に、この『馬車』が水陸両用ってのが驚きだけど……。


「――はぁ……、仕方ない……ボキュとオルディ……それと、数名の『火紋(イグニス)隊』で逐一確認しよう……」


 ――結局、進みながら様子を見ようって事になって、僕達は再び、『馬車』に乗り込む。


「タケル様……、わたくしが居ますから……、淋しくなんて思わせませんわ……」


「――えっ? あ……うん……」


 乗り込むなり、フィーがウルウルと僕の手を握って来た……。――あ、心が折れそう……。バラちゃん……君は一体……、何を言ったんだ……?


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 さて……、そんなこんなで、『馬車』に揺られて約半日ちょい、『馬車』の窓から見える空も、すっかりと暗くなっていた。


 そんな時だった――。


「――姫様……、タケル……、何か来る……」


 ――突然、エスケが僕や、フィー達が乗る『馬車』に近付いて来て、そう囁いた。その表情は固くて、その「何か」が、決して面白いモノでは無い事を告げていた……。――でも……。


「――まだ……」


 半日しか経って無いよ?


「――ああ……、ルピテスじゃない……」


 僕が聞く前にエスケが告げる。――ルピテスじゃ無い、敵襲……。それは……、つまり――。


「さて……、ボキュは少し、偵察と、場合によっては、露払いをしてくる……」


 エスケはそう言うと、その手に『斧』の『紋章』を浮かび上がらせて、少し先に見える森を見つめ始めた……。

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