表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/72

反省塔

続きです、よろしくお願いいたします。

「――ありがとうございましたっ!」


 僕が、エスケの親切心――と言う名のS心――から、戦闘訓練を開始して三日……。


 自分で言うのも何だけど――。


「持久力だけは上がったな? ――タケル……」


 ――訂正、自他共に認める持久力……と言うか、『紋章力』が手に入った。


 相変わらず、戦闘内容は決して褒められる様なモノじゃないらしいけど……、体力的な持久力と、術的な持久力(紋章力)に任せて、誰と戦っても泥仕合……になる様になってしまった。


「ま、まあ……、誰かが助太刀に来る前提ならば、宜しいのではないでしょうか?」


 オルディは、この三日、僕と訓練(泥仕合)している内に、ここ数年で暫く無かったような『紋章力』の向上があったらしく、僅かに頬を緩ませて、及第点を出してくれた。


 他にも、フィーはフィーで、途中から何かの条件……と言うか、技術を習得したらしく、今は訓練の合間にスェバさんから『お写紋』を習っているらしい……。――個人的には、それが一番怖いんだけど……。


 ともかく、僕との戦闘訓練は、一部――スェバさんや、ノムスさん達、保護者組――を除いては、得る物が多々あったらしくて、皆、満足そうにしている。


「――クフフ……」


 ――フィー……、だから、それはお姫様がやって言い笑い方じゃないよ?


 そんなこんなで、今日も訓練を終えて、解散……と言うか、お茶にしようか、って雰囲気になっていた時の事だった……。


「タケル君~、フィーちゃ~ん、ティチ先生が、呼んじょんよ~?」


「あれ? ニムちゃん?」


「先生が……ですの? なんでしょうか?」


 どうやら、ティチ先生が僕とフィーを探しているらしく、お茶に参加しようとしていたニムちゃんが、ついでだからと呼びに来たらしい。


「ん? 坊ちゃん……」


「――分かってる……。タケル、ボキュも一緒に行かせてくれ」


「エスケ? うん、良いと思うけど、何で?」


 ――もしかして、僕はまた何か赤い成績を叩き出してしまったんだろうか……? やっぱり、勉強不足……解消しなきゃ駄目だよね……。


 とか考えてたら、フィーが何やら思い出したらしく、僕の手をクイッと引っ張り、耳打ちして来た――。


「――多分、マロア様達についてだと思われます……、アックス卿はなにかしらあった時が心配なのですわ?」


「あ、ああっ!」


 すっかり忘れてた……、バラちゃんとかは相変わらずだったから、ついつい……。


「――はぁ……、しっかりしろよ?」


「う、うん……、ありがとう……」


「念の為に、着替えてから行きましょう?」


 フィーの提案に、僕とエスケが頷き、すかさずノムスさんが――。


「では、ティチには私からその旨、伝えておきましょう――」


 ――と言ってくれて、僕達は三十分後にティチ先生が居ると言う反省塔前に集まる事にした……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「う~ん……、本当にこれでいいのかな?」


 どうやら、僕が一番乗りだったらしい……、反省塔の前には、フィーやエスケ所か、ティチ先生すらいない。


 そして、僕は現在、何と言うか……、ヒラヒラとした……、むず痒い服を着ている。


『わたくしのメイドを伺わせますから、その指示に従ってくださいませ?』


 と言うフィーの命――お願いで、こんな格好をしているんだけど、これじゃ、まるで――。


「――ふんと貴族んごた……る……?」


「うぉっ! に、ニムちゃん?」


 ――僕が思っていた事を先に言われて驚くと、何時の間にか、僕の背後にニムちゃんと、そして――。


「――ウフフ……、お似合いですよ? タケルさ……ま……?」


 ――フィーが居た。フィーとニムちゃんは、最初こそクスクスと笑って、僕の服装を見ていたけど、その視線が僕の顔に向けられると、途端にポカンとなってしまっていた。


「え? あれ? もしかして……、似合わない?」


「あ、いえ……、そうでは無く……」


「――あ、もしかして……、髪上げてるから? 昔っから……、髪上げると更に怖い……って言われててね~?」


 もう慣れっこだけど、まさか、二人にまで怖がられるとは――。


「いえいえ、そうでは無くて……、凛々しくて素敵だと思いますよ?」


「そ、そう? なら良かった……」


 ――おぉ……、そんな事、鞆音ちゃん以外で初めて言われた……。どうやら、ニムちゃんもそんなに怖かった訳じゃないみたいで、コクコクと頷いてくれてる。


「――よぉ、待たせたか?」


 何だか、微妙にムズムズする空気になって来たと思ったら、ティチ先生と、その少し後ろからエスケがやって来た。


「おぉ……、エスケ……、似合うなぁ……」


 ――着慣れていると言うか、ちゃんと、服を着てるって奴だろうか? エスケは、僕と同じヒラヒラの服なのに、何だか威厳に溢れた感じだった……。地味な敗北感だ……。


「ん? ありがとう、君も似合ってるぞ?」


「あ、うん……、ありがとう……」


 あ、またムズムズして来た……。


「――良いか? 入るぞ……?」


 と、思ってたらティチ先生が咳払いをして、反省塔の扉を開いた――。


「――後、コンソラミーニ……、お前はお留守番だ……」


「え~? 先生の意地悪~! 好かんたらしいわ~っ! やったら、ウチ、バラちゃん漁っち来るけんいいも~んっ!」


 ――僕達が塔に入る前に、こんなやり取りがあったものの、ニムちゃんは特に「どうしても」って訳では無いらしく、ブーブー言いながらも、バラちゃん漁りに出かけて行った。――バラちゃん漁りって何だ……?


 反省塔に入ると、まずはロビーみたいな所に通された。――どうやら、ティチ先生がマロアさん達との面会手続きをしてくるらしい……。


「生徒を放り込むにしては、厳重だね……」


「そりゃ、生徒とは言え、強力な『紋章』を使える場合もあるからな?」


「――実質、学生用の牢屋ですもの……」


 どうやら、思った以上にここはちゃんとした収容施設らしい……。――うん、僕、これから勉強頑張るよ……。


 小声で「赤点」云々と呟いていたエスケに、僕が恐れおののいていると、ティチ先生が手続きを終えたらしく、漸く僕達はマロアさん達が収容されている反省室へと向かう事になった。


「それで先生……、インチンスゥマや、アヴェ卿は何か喋ったのですか?」


「――いや、如何にも口が堅くてな……、自白用の『紋章』を生徒に使う訳にもいかなかったんだが……っと、ここだ」


「失礼しま~っすって……眩しっ!」


 ティチ先生が扉を開けると、中から眩しい程の光が目に入って来た……、室内なのに……。


「――インチンスゥマ達は今、『紋章術』の発動を抑える物と、肉体を束縛する物の二つの『結界紋(オビジェ)』で縛っている……、お前らを襲う事はないだろうが、念の為に少し離れてろ」


「は、はい……」


 どうやら、眩しい光の正体は発動中の『結界紋(オビジェ)』の光であったらしく、その光の中心では、マロアさん、ヒウさん、ダーラさんの三人が、椅子ごと光の鎖に縛られていた。


「さて、先程、学校側がいくら聞いても答えない……と言ったよな?」


「? はい」


 僕達がマロアさんの様子を見て息を呑んでいたら、ティチ先生は普段より少しだけ厳しめの表情で話し始めた。


「彼女達は、頑として口を閉じていたが、昨日、漸くポツリと口を開いた……、その内容は「タケル様達とお話させてください」だ……」


 どうやら、あくまでも僕と接触する事を希望しているらしく、それ以外は何の反応も示さなくなったらしい……。


「――と言う訳で、こっから先は、面倒臭そう……じゃなかった……、外交やら何やらが絡んできそうって事で……、フィリア=シンソ殿下、ピグエスケ=アックス卿、タケル=イタクラ殿、後はお任せいたします――」


「――え?」


 そう言うと、ティチ先生はその場にしゃがみ込み、片膝を立て、右手は腰に、左手は胸に当てて、そのまま固まってしまった。


「せ、先生?」


「…………………………」


「――タケル様、今、先生は、この国の王族、貴族としてのわたくし達に後を委ねられました……、事が済み、この部屋から生徒としてのわたくし達が出て来るまでは、不用意に発言する事は出来ません……」


「え? え?」


「――まあ、そう言う事だ、行くぞ?」


 え? ちょっと? 良いの? ティチ先生……、思いっ切りほくそ笑んでんだけど? と、聞いてみたら……。


「まあ……、形式上だしな?」


「――皆が傅く中、小躍りして、皆の笑いを誘おうとする、悪戯好きな国王も居ますし……」


 そして、何処か遠い目をするフィーを先頭に、僕達はマロアさん達が居る反省室へと、足を踏み入れた――。


「うわっ!」


 ――僕達が中に入ると、シャッと言う音と一緒に、僕達とマロアさん達の間に、薄い透明な、膜みたいな何かが出来上がった……。


「落ち着け、防犯用の『硝結界紋ニートリック・オビジェ』だ……、音だけを通すからこうやって面会室や、反省室によく使われる」


「あ、そ、そうなんだ……」


 あー、ビックリした……。


 僕の驚きっぷりに、エスケが呆れ、フィーがクスクスと笑っていると――。


「フフ……、やっと来てくれたのね……?」


 ――僕の記憶より、少しだけやつれた少女、マロア=インチンスゥマが、ゆっくりと顔を上げ、掠れた声でそう、呟いた……。

……外付けが一個やられました。お陰様で、コツコツカスタマイズした執筆用の「xyzzy」がやり直しです……orz

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ