震動矢
ひっそり更新、二日目。
続きです、よろしくお願いいたします。
※2014/11/13:ルビ振り等若干修正。
「ヒウ、ダーラ、まずはベルーガさんを封じるのです!」
「「――はっ!」」
「ほわぁお? マァロゥ……? イタイ、ナァニウォ?」
「――スマン……『ソルマ・アージェント』、『ソルマ・セーブル』、『ソルマ・アリクアム・セーブル』、『インストゥルエレ・クインクェ』!」
――あっという間の事だった……、どう言う事なのか、マロアさんに問い質そうとしていたベルーガさんに向けて、ヒウさんが土紋で檻を作り上げて閉じ込めてしまった……。
「ヒュ? ダラァ? マァロゥ? ダスヨッ、ダスダヨッ!」
「ご、ゴメンね? ベルーガさん、後で出すから…………」
ダーラさんは、ペコペコとベルーガさんに頭を下げると、そのまま、何かを小さく呟いている……。何か……、この人、謝ってる印象が強いけど…………、良く見たら、目が笑ってないや……。
「マロアさん……、ヒウさん、ダーラさん……、本当に……やるんですか?」
――僕がそう、尋ねた時だった。
僕の前に、僕を庇う様にシーヴァ君が立ち塞がってくれた――。
「――イタクラ君……、まずは大人しくさせないと……、マロアさん、目がイッちゃってるし……」
「そうやんな~……、ちょこっと準備するけん、二人は時間を稼いじょくれ~ん? それと、バラちゃんは、隠れちょって~っ!」
「「分かったっ!」」
僕はさっき宣誓したままの火紋をいつでも発動出来る様に、シーヴァ君はマロアさん達の動きに注目し、それぞれニムちゃんの言葉に応える、バラちゃんはオロオロしつつも、木の影に隠れてくれた……、やっぱり、ここでの襲撃は指示外か……、バラちゃんは、どうしたら良いのか分から無いらしくて、ずっとオロオロしてる……。
「――『ソルマ・インアージェント』、『マウリス・イチェ・アージェント』、『イチェ・オーア』!」
僕が、チラリとバラちゃんを気にした隙を見ていたのか、ヒウさんが土紋を術化解除して、そのまま、氷紋を僕達に向けて放って来た!
「すいません、ほんと、すいません……『ヴィントス・トゥルボー』!」
「――えっ!」
――完全に予想外だった……、ダーラさんが、ヒウさんの背後から渦を巻いた風を送り込んで来た……、さっき呟いてたのは、風紋の術化宣誓かっ!
「クッ、イタクラ君っ! ――って、これは……」
「――霧……?」
ヒウさんとダーラさんの術は、僕達を直接攻撃するモノでは無かったらしい……。
氷が、風で粉々になって、モヤと言うか、霧と言うか……、ともかく、僕達の視界は、これで……、ほぼゼロになってしまった……。
「「「――なるべく無傷で捕えたいのでな……」」」
「――っ!」
――声があちこちから響いてくる……?
「イタクラ君……、これは、多分……『震紋』の応用だと思う……」
「え? ――『震紋』って……」
そんな使い方も出来るのか……って、そうかっ! スェバさんの、気持ち悪い謎の耳元声は、これか……。
――って言うか、あの人、何してるんだろう……?
「声の正体は分かったけど、シーヴァ君……、どうしよう……」
「――ちょっと、待ってて……『コンスタント・アージェント』……、『リンニューマ・セーブル』!」
「え? ちょっと、シーヴァ君? 何してる……の?」
すぐ隣にいるから、影だけは見えるんだけど……、何か、シーヴァ君がいきなり土下座してるっぽい?
――と、思ってたら……。
「――見つけたっ! イタクラ君っ! 君の後ろだッ!」
もしかして、木の枝でっ? と、取り敢えず、えっと――。
「後ろっ? ――えぇいっ! イチかバチかっ、『イグニス・オーア』、『イグニス・アリクアム・オーア』! 『インストゥルエレ・セプテンム』!」
し、舌が……っ!
――噛みそうになるのを、何とか堪えて、僕は振り向きざまに、七つの火球を適当にばら撒くっ!
「――グッ!」
おっ、今のは、ヒウさんの声か? どうやら、当たったか、イイとこ突いたみたい……。
そんな事を考えていると――。
「――ヒウ、ダーラ、こちらヘッ!」
「――姫っ!」
「あぁ、ホッとしました、姫様……!」
マロアさん、ヒウさん、ダーラさんの声が、モヤの中に響く。
そして、続けて――。
「――万が一の時の為に、これを……では、いきます……『コンスタント・アージェント』! そして、『インチンスゥマ・オーア』…………お逝きなさいっ!」
――パチンッと、何かが弾ける音がして……。
「一体、何……をぉ?」
「――これは……、い、イタ……クラ……君っ!」
――マロアさんが、恐らく彼女の『定紋』を発動させたんだ……ろうって……事は、分かる……んだけど……。これは、この……良い匂いは……一体、何だろう……? そして――。
「か、身体……が?」
――痺れる……、力が入らない……。
「ふぅ……、上手くいった様ですね? ――やはり、最初からあたくしが動けば良かったのです……」
「――姫……、これは運が良かった……」
「そうですよぉ……、もう、本当にゴメンですよ……」
「――フンッ、良いでしょう、ヒウ、ダーラ、タケル様達を縛り上げなさい?」
「「――はっ!」」
――あ、これは……マズイな……。
と、僕が思ったその時だった……。
「んふふ~、二人供、お待たせ~、準備出来た~! やあ、行くけんな~! 『コンソラミーニ・カートゥルス』~♪」
――圧巻……、とはこう言うのかなぁ……? 「準備」って、この事だったんだと、納得する僕とシーヴァ君の前を、大きな猫っぽい影が駆けていく……。あれ、もう『子猫』じゃないよね……、ニムちゃん……。
「えっ? ――キャッ! な、何ですかっ? この……つぶらな瞳……って、あっ!」
「――奥義っ? 馬鹿な……」
「え、ちょ、ちょっと、こっち来な……ギャッ!」
――何だか、モヤの中で誰かの影――多分、声からしてダーラさん――が、『子猫』に押し倒されているのが見える……。
「ん~? そろそろやんな~……、『コンソラミーニ・アリクアム・オーア・インストゥルエレ・ドゥオ』~」
ニムちゃんが、詠唱すると、『子猫』の影がパァンっと弾ける様な音を出して消えていく……。
そして、それと同時に、僕の身体が光に包まれて――。
「立てる……、ニムちゃん凄い……」
「――流石、『神童』だね……」
「んふふ~♪」
――ニムちゃんが、額の汗を拭う仕草でドヤ顔を浮かべている様が見える様だよ……。
何はともあれ、僕とシーヴァ君は、身体の自由を奪っていた痺れから無事に、立ち直る事が出来た。
しかし、敵……と言いたくは無いけど……、相手もそれで引き下がる事は無いみたいで……。
「――クッ……、『マウリス・アージェント』、『テンペスタ・トゥルボー』!」
「――うあっ!」
「やぁん~!」
――ヒウさんが放った嵐で、もやごと僕達は空高く打ち上げられてしまった。
「クッ、『リンニューマ・オーア』! イタクラ君っ、今のうちにっ!」
打ち上げられてしまった、僕、ニムちゃん、シーヴァ君だけど、シーヴァ君は、それでも諦めずに、何かを仕込んでいたみたいで、眼下のマロアさん達は、丸い木の球がかんしゃく玉みたいに弾けるのに驚いている。
「――分かった……、『マウリス・シールド』!」
――カシャンっ!
僕の中で、切り替わる音がする……。
さっき、スェバさんや、ヒウさん使ってたのを見て、思いついたんだけど……、出来るかどうか……。
「――ふぅ……、『テレモートス・サギッタ』!」
落下する前に、そのまま、僕は『テレモートス・サギッタ』を四つ取り出す。
そして、それを……、マロアさん達三人を取り囲む様に投げつけ、地面に突き立てるっ!
どうか……、上手くいってくれっ!
「あら……、無駄な事……を……? え?」
「――なんだ……?」
「あ、もう自分、立ってられない……です……」
僕が突き立てた矢は、地面を、空気を震わせて、マロアさん達に襲いかかる。――どうやら、上手くいったみたいだけど……、何か、二人程余計な人が居る……。
「ひ、ひいさまぁ……」
「ぼ、ぼうず……、お前……、ちゃんと……、狙えぇっ!」
――あぁぁぁ……、バラちゃん、スェバさん……、ごめんなさい……って言うか、スェバさん、ちゃんと居たんだ……。
何だか、PVが増えてました……。全くの需要無しって訳じゃない? 書いて大丈夫なんでしょうか……。




