首謀者?
…………続きです?
※2014/11/13:ルビ振り等若干修正。
――バラちゃん主導の元、僕達は無事森の第二区画奥で札を獲得する事に成功した。
「偉いなぁ? 助かったに~。飴ちゃんあげるけんな?」
「気にしないで良いよ!」
こうして見ると、本当に人攫いとかしそうに無いんだけどな……。何か理由でもあるのかな?
「イタクラ君、君も念の為、記章しておいてくれるか?」
「え、あ……そうだね」
「タケル君、出来るん?」
以前、ニムちゃんも行っていたが、記章とは特定の紋章を『記章メモ』と呼ばれる道具に描き写す事を言うらしい……。人によって、記章に使うのはペンであったり、専用の道具であったり何だけど……。
「――おしいね~?」
僕は、こっちに飛ばされた時に持っていた定規やコンパスで記章しているのと、慣れていないせいで非常に遅いらしい……。
と言うか……フリーハンドで真円描ける人達がぞろぞろいる方がおかしいって、絶対!
「うん、終わった! 待たせてゴメン!」
「うん、待ったんだよ!」
「ホンに待ったわ~。エスケ君に負けるで~?」
「ま、まあ……そんなに、気にしないでくれよ?」
シーヴァ君のフォローを受けつつ、僕はメモ帳を懐にしまい込む――絶対、練習して上手くなってやる!
そんな僕の密かな決意を運びつつ、僕らは来た道を戻る事になった。
――帰り道では、何チームかとすれ違い、互いに応援し合ったり、お菓子を貰ったり、上げたりしつつのんびりと進んでいた。このペースじゃ、多分エスケに負けてるんだろうな。――何肉か聞いておけばよかった……。
「ん?」
僕が若干憂鬱な気持ちになっていると、シーヴァ君が何かに気付いたみたいで、キョロキョロし始めた。
「――どうしたの?」
「いや……何か、悲鳴が……」
「ん~……。タケル君、シーヴァ君、バラちゃん、こっちの方や~! 誰か悲鳴あげちょんわ~」
僕達はニムちゃんの誘導に従って、慌てて声のする方向に走り出した――。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「――あっ!」
最初に反応したのはバラちゃんだった。バラちゃんは、慌てる様に、『武器化』を宣誓発動し、走る速度を上げた。
――僕らが向かった先では、他のチームの人達が大量の野犬――と言うか、犬型のルピテスに囲まれていた……。
「な、カーニェス・ルピテス?」
「――っ! 知っているの、シーヴァ君!」
僕の質問に、シーヴァ君は「うん」と頷いてから答えてくれた。
「群れで行動するのは基本的には、弱いルピテスなんだけど……カーニェスは、一体一体がそこそこ強い上に群れで行動するから、毎月発生していないかどうか、調査隊が組まれるほど危険視されてる奴らなんだ……」
――何て事を走りながら喋っている内に、漸く僕らの射程範囲内に、ルピテスが見えて来た!
「――ひいさま! 『ソルマ・シールド』、『ソルマ・フゥネンム』!」
「えっ?」
僕の驚きをよそに、バラちゃんは土の縄を木の枝に引っかけて、そのままルピテスの一匹の横っ腹に蹴りを入れた――。
「タケル君! ボーっとせんの! 危ないで~?」
「大丈夫? どっか、怪我したとか?」
ニムちゃんとシーヴァ君が心配そうに、僕の顔を覗き込んでくる。――えっと、どうしよう……。
「あ、大丈夫……」
――二人にそう答えた後、僕は……、恐らくスェバさんがいるであろう方向に顔を向ける――。
「――痛ぅ……」
何か、石が飛んできた。取り敢えず、戦闘に集中しろって事かな?
「――『ヴィントス・オーア』~『ヴィントス・アリクアム・オーア』『インストゥルエレ・デチェム』~!」
ニムちゃんが流れる様に詠唱を重ねる。――まずは、一発……続く様に十発の風球がルピテスの群れに向かって飛んでいく……。
「ギャァワン!」
「逃がさない! 『リンニューマ・ヴァート』!」
シーヴァ君が唱えると、ルピテスの下方から木の枝が伸びてきてルピテスを縛り上げる。
「――皆、やるなあ……」
何だか瞬く間にルピテスの群れを片付けていってる……もしかして、このチーム凄い?
「――ぼうっとしないでよ!」
「あ、ごめん! えっと、『アクア・オーア』、『アクア・アリクアム・オーア』、『インストゥルエレ・ビジンティ』!」
気合を入れて、水球を二十個ほど出してみる――これが、僕の今の最大値だ!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「――ギャピィ」
「――今ので最後かな?」
シーヴァ君が安堵の息を漏らしながら、最後の一匹に止めを刺した。
僕達は干からびた『カーニェス・ルピテス』をバラちゃんの縄で一括りにして、袋に詰めていく。――後で報告しないとね……。
「……助かり……ました……」
すると、相手チームのリーダーらしき金髪ショートの女性が、僕達の元に近付いて来て、ペコリと頭を下げた。
「――ああ、気にしないで良いよ。困った時はお互い様です」
シーヴァ君はそう言って、相手の女性の顔を見ると、何かに気付いた様だった。――あ、良く見たら……。
「えっと、確か、同じクラスの……?」
「ええ、マロア=インチンスゥマ……と、申します」
どうやら、この女性――マロアさんは、クラスメートだったらしい……。うん、僕ももう少し、クラスメートと交流しないとね……。
「――感謝する……」
寡黙な感じで、スキンヘッドの男性はヒウ=アヴェさん、マロアさんと同郷――と言うか、護衛らしい……。
「マジデェ、ヤヴァカタネ」
「え、ええ……、まさか……、カーニェスが出るとは……」
片言の金髪ロングの男性はヴィース出身のベルーガさん、オドオドした感じの、僕と気が合いそうな男性は、ダーラさん、ベルーガさん以外は、皆、同郷だとか。
「――ひいさま、無事で良かった!」
僕達が互いに自己紹介を終えると、バラちゃんが地面に跪いてマロアさんを見ていた……。
「え、あ、あら……? 貴女は?」
――マロアさんは、汗をダラッダラに流しながら、バラちゃんを見ている。――うん、目が泳ぎまくってますね……。
「え、忘れたんですか? ひいさまと同じ、スクトの出身だよ? ――そりゃ、庶民だし、貰った任務も失敗しちゃったけど……」
――どうやら、バラちゃん達は『スクト』と言う国の出身で、マロアさんは『スクト』の貴族らしい……。――うん、ベルーガさん以外皆、目が泳いでますね……。
「あっ、あーあー、お、思い出しました、バラさん、また後でお会いしましょうね?」
そう言って、マロアさん達は、僕達に再度頭を下げると、そのまま逃げる様に、顔をひきつらせながら立ち去って行ってしまった……。
「――人選間違いすぎだろぉ……」
ポカンとする僕の耳に、隠れている筈のスェバさんの呟きが何故だか物凄く近くに感じられた……。
うん、存在を忘れ――いえ、都合により長らく投稿していたかったせいで、色々忘れてます。




