表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/72

賭けと発見

続きです、よろしくお願い致します。

※2014/11/13:ルビ振り等若干修正。

「――結局、あんまり眠れなかったな……」


 教室に戻ると、丁度お昼休みになった所だった。僕は居眠りしているニムちゃんの席に集まり、話しているフィー、オルディ、そしてエスケに手を振る。


「皆、来てたんだ?」


「あら……? タケル様、お疲れの様ですけれども大丈夫ですの?」


 フィーは心配そうな表情で、僕の頬に手を添える。


「大丈夫だよ、ちょっと寝不足でさ……」


「ん? 例の監視されてるという奴か?」


 エスケが眉をピクリと上げて聞いてくるので、僕は「そう、それ」と頷いて答える。


 ――まあ、多分あれで、暫くは大丈夫だと思うんだけどね……。


 スェバさんがノムスさんに伝えて、コッソリ動いてくれるみたいだから、任せておこう。


「そう言えば、ジェネロ様からは何か返事来たの?」


「いえ、まだですわ……。今頃は会議が開かれているはずですわ?」


 そうか……もう暫く、待ちの姿勢かな。


「ん~。しゃーしいなぁ……なんなん?」


 どうやら、ニムちゃんが目を覚ましたみたいだ……この娘、授業は大丈夫なのかな?


「あ、皆来ちょったん? 起こしちくれて良かったんに~?」


「――ニムちゃん、わたくし、何度も起こしたんですのよ?」


「ボキュが起こした時は「フシャァ」と猫みたいに吠えられたな……」


「私が起こした時は「後二時間」と……」


 ――正直、そんだけ眠れるのが羨ましいよ……。


 何にしても、これで皆揃った事だし、食事にしよう――と言う事に。


「それで、タケル様はどこかの班に入れたんですか?」


 空になった僕のカップにお茶を注ぎながら、オルディが聞いて来た。――痛い所を突いて来るなぁ……。


「ん~? それなら心配せんで良いけんな~! ウチがちゃんと、ウチの班に入れちょったけんな~?」


 ――どうやら昔からの「どこか、タケル君を入れてあげて」と言う悪夢は避けられそうで良かった。


「――良かった、ありがとうニムちゃん」


「ん~? 気にせんでええよ。午後から頑張ろうね~?」


「そうだ……タケル、午後からの簡易遠征、どちらが早くゴールするか何か……そうだな、今晩のおかずでも賭けないか?」


 むむっ! 何やら自信満々のエスケだ……。どうしよっかな……?


「――因みに、今晩のメニューは肉だそうだ……」


「良いよっ! やろうか!」


 ――呆れる女の子達の視線に居心地の悪さを感じながら、僕とエスケは壮絶な賭けをスタートさせた!


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――食事を終え、教室に戻るとニムちゃんが僕を引っ張って来る。


「どうしたの?」


「ん~? だっち、班んし(班の人)にタケル君を紹介せんと、いけんやろぉ?」


 あ、そっか……まだメンバーを聞いてなかったっけ。って事は……一応、ニムちゃんには口裏合わせて貰わないとな……。


「ニムちゃん、ニムちゃん、えっと……」


「なんなん~?」


「えっとですね、この間の僕の『武器化(エスカッシャン)』の件なんだけど」


「あ~、皆には内緒なんちな~? フィーちゃん達から聞いちょんけん、心配せんでも良いよ~」


 ――流石、フィー……抜かりないな。


 一安心した僕は、そのままニムちゃんに連れられて教室の隅へと移動する。


 そこで、ニムちゃんが「ちぃと待っちょって?」と言うので、それから十分程大人しく待っていた……。すると――。


「お待たせ~。タケル君、班んし、連れて来たよ~!」


 ニムちゃんに促され、僕は立ち上がり班のメンバーを見つめる……。


「あ、ど、どうも……俺、シーヴァ=リンニューマです。一応、アルティの貴族『リンニューマ』の『定紋(コンスタント)』継承者です」


 そう言うと、茶髪にたれ目の柔らかい雰囲気の男の子、シーヴァは右手を胸に、左手を腰に当て頭を下げる……。


「え、えっと、僕はタケル=イタクラです。よろしくお願い致します」


 シーヴァ君に倣って、僕も同じ様に挨拶する。後ろでニムちゃんがニヤニヤしているけど、我慢だ……我慢!


「――バラ……」


 もう一人、不機嫌そうに僕を見ている――バラと名乗った小柄な人物は、それだけで後はむすっとしている。


「えっと……バ、バラ君?」


「――っ! お、お前は……」


 バラ君は顔を真っ赤にして、僕を睨み付けている……。


「――ふふっ……タケル君、簡易遠征は男女二人ずつの四人一組なんよ~?」


「えっ!」


 ――どうやら、僕はまた間違えたみたいだ……今度スェバさんに、教えて貰おうかな?


「アレ……? アレなの……?」


 バラちゃんは、ニムちゃんの一部を自分の一部と見比べながら、死んだ魚の様な目でブツブツ呟いている。


「えっと、じょ、冗談だよ! バラちゃん!」


 ――自分でもどうだろう? って言う位の棒読みなんだけど、やっぱり不味いかな?


 ニムちゃんとシーヴァ君は、顔を真っ赤にして笑いをこらえている。


 そして、肝心のバラちゃんは――。


「え? 冗談……?」


 ――え、食い付いた?


「う、うんうん! そうだよ、あ、あんまりにも可愛らしいから、つい、からかいたくなって!」


 もうなる様になれ!


「そ、そうか? 可愛らしいか? そうか、そうか、あの時は仮面してたしな!」


 バラちゃんはすっかり機嫌を直して、鼻歌まじりにピョンピョンと跳ねているんだけど……今、この娘……自爆したよね?


「え、えっと……」


 バラちゃんに問い合わせようとすると、何かチリチリする……。


 慌てて周囲の様子を伺うと、教室から少し離れた場所にスェバさんがいた……。


「え、えぇ……」


 何やってんの、あの人? とか思ってたら、バラちゃんの方を指差して「シィ」って……もしかして、黙ってろって事ですか?


 そう言えば、「泳がせておく」って言ってたっけ? それにしても、いくら何でもこの子、情報取れやすいどころか……ガッポガッポ漏れ出そうなんですけど……?


「じゃ、じゃあ、これからよろしく! バラちゃん!」


「ん? バ、バラで良いよ? 私、平民だから『通紋(ペル)』しか使えないけど……よろしくね?」


 僕はバラちゃんと握手を交わして、ニムちゃんに向き直り、コッソリと聞いてみる。


「えっと、二人供どう言う知り合いなの?」


「ん~? あんなぁ? シーヴァ君はウチの真ん前ん席で、バラちゃんは、こう、チョコチョコしちょって、しんけんええらしい(とても可愛い)に~!」


 そう言うと、ニムちゃんはバラちゃんを呼び寄せ、その口に飴玉を放り込む……確かに、小動物っぽい。


 どうやら、女子の間でファンクラブが出来ているらしく、今回はニムちゃんが班に誘う権利をジャンケンで引き当てたらしい。


「まあ、スェバさんもいるし、何とかなるかな……」


 視界に映るスェバさんに「黙っておく」事を了解したと合図して、僕達は教室にティチ先生が入って来るのを待つ事にした。


「それで、皆のどんな感じに術を使うの?」


 一応、班のメンバーの長所と短所は把握しておかないとね……とは言っても――。


「私、縄の『武器化(エスカッシャン)』だよ?」


 バラちゃんは、犬が褒めて貰うのを待つかの様に、僕達の事を見ている。


「へ、へえ……そうなんだ?」


「珍しいね?」


「偉いなぁ? 飴ちゃん、もう一個上げるけんなぁ~?」


 そう言って、ニムちゃんがバラちゃんの口に再び飴を放り込むと、嬉しそうにそれをコロコロと舐め始める……。


「………………」


 ――スェバさーん! この子、隠す気ゼロっぽいんですけど、これでも知らない振りしなきゃいけないんですか?


 遠くで様子を伺っていたらしいスェバさんは、頭を抱えていたが、やがて何かを諦めた様に「シイッ」と言う合図を出した――。


「じゃあ、次は俺かな? 俺の紋章は『木』を扱うんだ。枝を伸ばしたりって感じにね?」


 へえ……そんなのもあるんだな、この一か月試験で頭いっぱいだったからなぁ……他の人の詠唱とか、碌に見てなかった。


「ウチは、戦闘では主に『通紋(ペル)』で、誰か怪我したら『回復紋(コンソラミーニ)』で回復しちゃるけんな~?」


「えっと、僕は『武術化(デレミリタリ)』……『武器化(エスカッシャン)』と『術化(ティンクチャー)』の両方を状況によって、使い分ける感じです」


 自己紹介が終わると、丁度ティチ先生が教室に入って来た。


「はい、お前ら席に着け? 今から簡易遠征の説明するぞ?」


 ティチ先生によると、簡易遠征はこの間、僕とニムちゃんが試験で入った森の、更にもう一区画奥で行うらしい。


「区画の最奥に、紋章の一部を描いた札があるから、それぞれの班に割り当てられた札を取って、帰って来い! 帰って来たら、オレが持ってる認証用の札と合わせて、不正が無ければゴールだ。道中には当然、ルピテスもいる……『召喚紋(コジェ)』を破壊出来たら、報酬金が出るから頑張れよ?」


 ティチ先生は最後に「無理すんな」と言うと、俺達を森の入口まで先導し、他のクラスが来るまで待機する様に指示してどこかに行ってしまった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ