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校舎裏

続きです、よろしくお願い致します。

※2014/11/13:ルビ振り等若干修正。

 ――どうしてこうなったんだろう……?


「……」


 僕は今、因縁のピグエスケさんと校舎の裏で対峙している。正直なところ、逃げ出したい……どう考えてもこれ、リンチ的な呼び出しだよね?


「あの……ピグエスケ、さん?」


 僕に用事があったはずのピグエスケさんは先ほどから黙ったままだ。


 腕を組んで、時たま空を見上げて「あー、うー」と唸っている。


「その……先日は……」


「謝るな!」


 僕が謝罪しようとしたのを察したのか、突然、ピグエスケさんが血相を変えて大声を上げた。


「君は……アックス家のピグエスケと正々堂々戦い、勝ったのだ……簡単に頭を下げられてはボキュの誇りまで汚れてしまう……」


「あ……」


 あれ、じゃあ……この呼び出しの目的って……?


「あ~、こげん所におった~」


 僕とピグエスケさんが声に驚くと、フィーと、オルディさんと、ニムちゃんが居た。


「タケル様ッ!」


「フィー?」


 フィーは僕の傍まで来ると、怪我はないかと確認してくる。別に問題無い事を伝えると、安堵の表情を浮かべていたが、すぐに顔を真っ赤にして、ピグエスケさんを睨み付けた。


「アックス卿……どう言うつもりですの……?」


「姫様……落ち着いて下さい」


 オルディが「どうどう……」と言ってフィーを押さえつける。すると、ピグエスケさんは気まずそうに頬をポリポリと掻きながら少しずつ用件を話し始めた――。


「実は……君にお願いがあってな……」


「お願い?」


「ああ、こんな事……頼めた義理でないのは分かっているんだが……君に養子をとって貰いたいんだ……」


「養子って、誰を……?」


 すると、ピグエスケさんは顔を真っ赤にしながら、事情を説明してくれた。


 どうやら、ピグエスケさんは相思相愛の相手がいるらしい、しかし、その相手はアックス家に仕えるメイドで身分的にピグエスケさんと釣り合わず周囲から反対され、結ばれる事をお互い諦めかけていたらしい。


 そこに持ち上がったのが、フィーとの婚約話で、アックス家の前頭首や周囲の人間はフィーと無事結婚すれば、愛人でも何でも好きに取れ、と言う雰囲気だったらしい。


 それで相手のメイドの意思を確認せずに暴走したのが、この間の結婚式だったらしい。


「あの時は、視野が狭くなっていてな……君にも失礼なことを言ってしまった……すまない」


「い、いえ……気にしないで下さい、それで……何で養子なんですか?」


 僕の養子にしたって……ねえ?


「それは~、タケル君が強力な『紋章』を持っちょって~、フィーちゃんの婚約者やけん~」


 僕の疑問に答えてくれたのはニムちゃんだった、ニムちゃんは手をヒラヒラと動かしながら続ける。


「タケル君の事情は~、ウチん国の貴族やったら大体知っちょるけんな~? しかも、王女様の婚約者やけん、皆、繋がりを持ちたいんよ~。やけん、そげなタケル君の養子を、お嫁さんに迎えるっちゅうのは、他の貴族に対しち結構なアドバンテージっち感じやろう~?」


 ニムちゃんがピグエスケさんに視線を送ると、ピグエスケさんはコクリと頷く。


「浅はかな考えとは思うんだがな……今のところ、これしか思い浮かばないんだ……」


「協力出来るなら、是非とも協力したいんですけど……僕の扱いってどうなんでしょう?」


 僕はオルディさんに聞いてみる。


「そうですね……今のところ、姫様の婚約者、と言う肩書きだけだが、無事にこの学校を卒業できれば、名実ともにアルティの貴族として迎えられる筈ですよ?」


 えっと、つまり僕が卒業したら、養子を取れるって事かな?


「うん……分かりました……協力します、ピグエスケさん!」


 僕の答えにピグエスケさんは少し、驚いていたが。


「本当に、良いのか?」


「はい、ただ……条件、と言うかお願いが……」


「お願い……?」


 そう、卒業するために……。


「実は、僕……編入する前の一学期分の授業に関して、遅れを取り戻す補習を受けなきゃ駄目なんですよ……それで、一月後のテストで合格しないと……留年の危機がありまして……出来れば、勉強を手伝って頂けないかと……」


 恥ずかしながら、元の世界でも勉強は苦手だったんです……。


 僕の話を聞いたピグエスケさんはポカンと口を開けていたけど、少しニヤリと笑い。


「ボキュは厳しいぞ?」


 そう言って小さく「ありがとう」と呟いていた。


「あ~。ほいたら、ウチも協力するわ~。身分違いの恋っち、燃えるけんな~フィーちゃん?」


 ニムちゃんが手をヒラヒラさせながら、そう言うと、フィーもかなり興奮している様子で、その瞳はらんらんと輝いていた。


「そうですわねっ! 一度、お相手の方も含めて作戦会議でも開いてみたいですわ! ね、オルディ?」


「そうですね……素敵な事です……」


 僕とピグエスケさんはその様子を苦笑いしながら、眺めていたがやがて思い出した様に僕に向かって言った。


「ボキュの事は……エスケで良い。これから、よろしく……タケル」


「……うん、よろしく、エスケッ!」


「男の子の友情っち奴やんな~? ウチ、そんなん初めて見るに~」


 ガッチリと握手を交わしているとその様子を見ていたニムちゃんが手をヒラヒラさせながら茶化して来る。


 すると照れ臭くなったのか、エスケがヒラヒラと動くニムちゃんの手をがっしりと掴む。


「………………」


 その途端、ニムちゃんの発言がピタリと止まる……いや、正確には何か喋ろうとしているんだけど、言葉が出ない感じ?


「エスケ……何かしてるの?」


「いや、照れ臭くて咄嗟に手を掴んだだけだ……今離す」


 エスケが手を離すと、その瞬間、ニムちゃんが頬をぷくっと膨らませる。


「もう、何なん~! そげに、人ん手を握らんちょって~?」


 両手をブンブンと激しく振り回しながら、エスケに抗議するニムちゃんの両手を今度はオルディが押さえる。


「………………」


 ――離す……。


「もう、オルディちゃんまで何なん~?」


「オルディ、次はわたくし、わたくしですわ!」


「もう~! 皆しち何なん~?」


 ――フィーが握る……。


「……………………」


 ――離す……。


「もう、いい加減にせんと、ウチ怒るっち言うとるやん~?」


「ククッ……ごめん、ごめん、つい……」


「もう~、すかんたらしいわぁ~」


 その後、皆で必死に謝り倒し、何とか許してもらえた……。


 ――鞆音ちゃん、僕、友達増えたよ……元の世界だとあんまり増えなかったからちょっと、複雑だよ……。

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