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第九話 ハニワの魔王

 魔王と言うのは意外に多くいるらしい。

 そんなポンポン生まれてくるわけではないらしいが、数年に一度のペースで生まれるらしい。そして大半の奴は生まれた直後に殺されるらしい。

 何故そんな簡単に殺されるか。それは魔王が誕生すると人族の神官にお告げが下るらしい。それも嫌に的確に『○○に魔王誕生の気配』などと。

 迷惑千万だ。こっちは迷惑かけるつもりが一切ないと言うのに。

 そしてお告げが下るとそこに腕利きの冒険者を送り、強大になる前に殺すらしい。

 その一種の人族の洗礼を耐え凌いだ者だけが魔王として生きていくのだろう。

 

 ……うん、オルギアを襲った冒険者は多分俺を暗殺しに来た腕利きの冒険者なのだろう。

 聞けばこの森、オワの大森林は大変な広さがあるが生息する魔物、魔族は比較的に弱い者ばかりで初心者の冒険者によく使われる場所だとか。

 そんなところに三階位の大悪鬼(オーガ)がいれば魔王の配下だと思うよね。実際はただの旅魔族だったのだけど。


 もしオルギアが居なければ俺は殺されていただろう。結果的に助けられた礼と巻き込んだ謝罪をするとオルギアは、それこそ恐れ多いと頭を下げた。


 魔王と言うのは大半が強力な力を持ち、傲慢で利己的で浅慮な者が多いらしい。

 前情報無く人族の拠点を襲撃、備蓄の確認もなく配下を爆発的に増やし、飢えそうになるとまた襲撃を繰り返す。旅をしてきたオルギアにとってあまりに愚かな行動を取る魔王に辟易していたらしい。

 勿論そんな魔王ばかりではないらしいが、ほとんどの魔王がこれに当てはまるとか。当てはまらないのは長年魔王をしており、戦闘に飽きた龍族や吸血鬼の魔王など、いわゆる上位魔王くらいらしい。

 むしろ俺のように他人を助けたり、気軽に玉座の間に招くような者は今まで出会ったことが無いと言われた。

 いいじゃないか、こんな魔王がいたって。


「そう言えば聞いていなかったのですが、魔王様のお名前と何の種族の魔王なのでしょうか? その、大抵は見れば分かるのですが……」


 何とも言いにくそうにオルギアは言うが、種族の尋ねるのは失礼なことなのだろうか。それに俺の姿は失敗に失敗を重ねたうえで成功した姿である。分かれと言うのが無理なのだ。


「そんな気にしないでください。この姿は弄った物、そもそも姿があるのかどうかすら怪しいですよ? 二重の者(ドッペルゲンガ―)ですから」


「なんと!? 二重の者(ドッペルゲンガ―)の王ですか。今まで見たこと、聞いたこともないです魔王ですね。しかし姿を弄っているというのは、幻惑系の魔法を習得しているというと?」


「いえいえ、姿を弄っているのは二重の者(ドッペルゲンガ―)固有技能(ユニークスキル)ですよ。魔王にもなると前もって記録していた者に変身したり、自分で描いたものになることも可能なんですよ」


 そう、今の俺は昨日の朝のなのっぺらぼうではない。自分の理想の顔を描こうと数時間努力し、その末に涙ながらに完成した顔なのだ。



「ああ、なるほど。初めてお会いしたときは、その、土器の魔王かと思いましたから」


「はっはっは、愛くるしい顔に見えませんか?」


 奥の見えない真ん丸な目が二つ、そして目のように真ん丸と空いた口、両端に耳もなければ中央に鼻さえない。これ見れば誰だってこう思う。


「ハニワみたいで」


 誰にでも描ける顔だ。べ、別に何時間も書いて結局下手過ぎて顔にすることが出来ず、その末に冗談混じり顔にしたわけじゃないんだぞ!


「ええ、発想が今までの誰よりも面白いですね。今思い出せば魔王は誰もが強面ばかりでした。それを考えれば案外予想もつかないような良い効果を生むことも?」


「はは、まあそこまでは期待していませんよ。それと、申し訳ないのですがオルギアさんに相談があるんです」


「はい? どんなことでしょう? 私の力の及ぶ限りお手伝いさせていただきますよ」


「ええ、実は魔王っぽい名前って知りませんかね?」


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