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第四話  魔王

『間違えてしまいました』


 一体何を間違えたんだ。

 技能(スキル)を獲得した時と言え、この本は説明能力が低すぎるんじゃないのか。


「何を間違えたんだ」


『魔王が誕生した際に、魔王が今後の行動に困らぬよう『現世の知能』を与えます。『現世の知能』には現在の情勢、いくつかの種族の言語、魔王とは何か。その他にも様々な知識が入っております。しかし貴方は『現世の知能』を持っておりません』


 淡々と映し出される文字に顔を覆いたくなる。

 説明を求めたはずなのにまるで言っていることが分からない。いや、分かりたくない。


「魔王? 魔王だと。その書き方まるで俺が魔王のようじゃないか。それこそ間違っているんじゃないのか。俺は人間だ」


『いいえ、貴方は人族ではありません。それは間違って入った知能です』


「じゃあ何だと言うんだ」


二重の者(ドッペルゲンガ―)の魔王でございます』


 二重の者(ドッペルゲンガ―)? 見たら死ぬとか言われるあれか?


「この書き方だとまるで他にもいるみたいだな」


『当然おります。全ての種族にいるわけではありませんが』


 驚きのあまり何も言えない。そろそろ思考を放棄したくなってきた。


『それでは理解なさったと判断して話を戻します。貴方には『現世の知能』の代わりに別のもの『異界の知能』を所有しております。恐らくですが、貴方が誕生する際に使用された魂。それが異界の物だったのではないかと。そしてその魂が強く反応し、『現世の知能』を『異界の知能』に上書きしてしまったのかと』


「…………それによるメリット、デメリットは。話についていくのも辛くなってきた」


『申し訳ございませんがこちらでは貴方が所有する『異界の知能』がどのようなものか把握できておりません。こちらから確認出来た限りでは情勢や言語は知らず、自分何者なのか把握していなかったことを考えると、『現世の知能』は完全に失われたと思われます』


「メリットは分からない、デメリットは存在すると」


『その通りでございます。更に貴方が使用している言語ですが、この世界に存在するどの種族の物とも異なります。このことから『異界の知能』が使用されていることが分かりますので、深く悲観なされる必要は低いかと思われます』


 誰も知らない言語なら誰にも使えないだろうが! 『異界の知能』が使用されているからと楽観する理由がどこにもない。


「ある程度はサポートを受けられるんだろうな」


『申し訳ありませんが不可能です。確かに『現世の知能』を所有されていないのは大変不利とこちらもとらえております。しかしながら『異界の知能』があまりに未知数でこちらのサポートがもしかしたら優遇になってしまう可能性がござますので』


「ならばどうしろと言うんだ! 何も知らずどう生きろと!」


『今まで通り本をご利用ください。大抵のことは本が答えることが出来ます』


 本が答えられなければこちらに連絡が来ますので、付け加えられる。


『それでは最後に。こちらは助言、と言うよりも本に載っていない内容ですので今の内に答えさせていただきます。


 魔王とはダンジョンの主でございます。

 そしてあなたのいる場所が主の部屋になります。

 配下を多く集めてください、ダンジョンを増築して配下を配置してください。そして強くなってください。

 様々な種族が魔王の命を、ダンジョンを狙っています。

 それらを返り討ちにして逆に征服してください。

 貴方に敵対する者を駆逐してください。

 そうしなければ貴方は数多の襲撃者にいつか殺されてしまいます。

 名だたる魔王になってください。世界にあなたの存在を刻んでください。

 世界を征服してください。

 それが魔王の使命です。

 

 それでは健闘をお祈りしております』


 そう書き連ねて、俺が読み終わると同時に消えて行った。


「魔王の使命か」


 最終目標は世界を征服か。

 ふむ、なるほど。


 絶対にヤダネ!


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